中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

今さら聞けない 中学受験超入門02 中学受験ってどんな世界? part2

 

前回の記事の続きです。

前回は、「父親の経済力」と「母親の狂気」という漫画のセリフから中受にまつわる費用について書きました。今回は「母親の狂気」という、とても失礼なセリフから考え始めましょう。そもそも「2月の勝者」という漫画を知らなければ何のことやらわからないですね。私もこの漫画は読んだことはありませんのでまた聞きなのですが、主要登場人物のカリスマ塾講師のセリフなんだそうです。

 これについてはさすがに思い切り正面から異を唱えたいです。

こういうことを面白おかしく書くから、中学入試が誤解されるのです。

1.中学受験の誤解あるある

まずは、中学受験をよく知らない方々が口にすることの多い誤解から見ていきます。

 (1)中学受験は子供の「子どもらしさ」を奪う

 「子どもらしさ」って何でしょう?

子どもにもいろいろなタイプがいます。100人の子どもは100通りの人格ですし、しかもつねに同じ反応を示すわけもない。それらをひとまとめにして「子どもらしさ」とくくることは危険な考え方です。なぜなら、大人(親)が考えるような「子どもらしさ」などただの妄想にすぎないからです。たぶん、こうしたことを言う方は、知らないのでしょうね、塾の教室で子どもたちがいかに生き生きとしているかを。

 (2)中学受験は子どもの健康を損なう

 これは少しあたっています。とくに塾がいけません。小学校が終わってからの授業時間は、6年生にもなると9時くらいまでの拘束が普通です。それから帰宅して夕食となると、あきらかに食事時間が不規則といえます。しかし、お母様やお父様がみなさん苦労して、少しでも健康になるように工夫されているのを知っています。小学校から帰ったらすぐに食べられてエネルギーとなるおやつを用意し、塾から帰ったら消化の良い軽い食事を用意する。大変な努力です。したがって、「健康を損なう」という決めつけには賛同できかねます。

 (3)中学受験は子どもを精神的に追い詰める

 これも良く聞きますね。「あんな小さい子に無理をさせて」「最近笑顔がなくなったよ」といったやっかみです。さらに「中学受験のストレスがあるから小学校で暴れるようになった」「いじめに走った子もいるんだって」などという噂話をする方までいます。

全部です。

もしその子が、いじめをするようになったり、学校で暴れるようになったとしたら、それは中学受験とは無関係です。受験勉強をしなくてもそうした行動に走ったと思われます。

彼らがやっているのはただの勉強です。人生のある時期には必ずやらなければならない勉強を今やっているだけです。

ただこの誤解は根強いですよね。

追いつめる相手というのは、塾と親のどちらか、あるいは両方でしょう。今の時代に、子どもを精神的に追いつめてまで勉強させる塾はありません。30年ほど前にはまだそうしたスパルタ塾も生き残ってはいましたが、今では完全に淘汰されました。漫画やドラマなどのフィクションの中にしかないのです。第一そんなやりかたでは子どもたちの成績が上がらないことは常識ですので。

また、親が子どもを追い詰めるケースがあるとすれば、それは中学受験が原因ではないのではないでしょうか。もし受験をしなくとも、べつの何かで追い詰める親だと思うのです。

2.母親の役割

 これはジェンダーの話ではないのでそういうツッコミはご容赦ください。

中学受験における母親の役割は大きいです。一般に(あくまでも一般論です)、中学受験をする年代の子供をもつ父親は働き盛り世代です。仕事が忙しく、なかなか子どもの勉強まで見てあげる余裕が無い方が多いと思います。子どもの塾での様子や成績など、母親まかせの父親が多いのではないでしょうか。もちろん母親が働いている方もとても多くなりましたが。

 塾での出来事を報告したり、塾からの電話を最初にとったり、面談で相談したり、こうした場面での母親の役割はとても大きいと思うのです。だからこそ母親の役割は重要です。

 しかし、だからといって母親が完璧である必要はどこにもありません。教科の内容についてだけでなく、学校情報や子どもの励まし方など、みな試行錯誤しながら子どもと一緒になって頑張っていくものです。

誰だって、わが子のことには夢中になります。他人のことなら客観視もできますが、自分の子どものことですので、落ち着いてなどいられません。成績に一喜一憂し、模試の合格判定を見てはため息をつき、やる気の見られぬわが子を叱咤激励し。それが普通です。それを「狂気」と呼ぶのは、失礼を通り越してあまりにも無知としかいえませんね。

3.中学受験の勉強はとても大切な勉強です

 中学受験で学ぶ内容は、その後の人生にも必要なものばかりです。

 (1)算数

 つるかめ算ニュートン算・旅人算・仕事算・流水算・植木算・・・・、算数ではこういう名前がついた「特殊算」がたくさん出てきます。中学受験を知らない方が見ると、「なんだこれは? こんなの知らないぞ。べつにこんな解き方を知らなくても中学に入ってから方程式を学べばいい!」と反応しがちな教科です。

しかし、中高一貫校が大学入試で有利である理由の一つに、この受験算数があるのです。

そのあたりはこの記事に詳しくかきました。

 

 peter-lws.hateblo.jp

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 (2)国語

一度中学入試問題の国語を解いてみてください。

わすか12歳でこの問題が解けるようになるのか。驚かれると思います。

そして素材の文章も参考になります。小学生から中学生にかけて読んで欲しい本が次々と題材として扱われているのです。

 (3)理科

 小学生の理科は「科学入門」の位置づけです。細かく枝分かれする前の、多様な分野を横断的に学びます。ここで基礎を固めるのが重要なのはもちろん、やがて文系に進む場合でもここで学んだ内容は基礎教養として必要です。

 

 (4)社会

 社会が最も後の役に立つ教科かもしれません。中受の社会のレベルは高校受験レベルをはるかに超えています。大学入試の問題も一部解けるほどのレベルなのです。しかも最近の入試は思考力系の記述問題がずいぶん増えました。麻布中・鴎友学園あたりの入試問題をぜひ見ていただきたいと思います。

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4.もし中学受験をしなかったら

 別に全員が中学受験をするわけではありません。しかし、中学受験をしない=勉強をしない、というのはおかしいと思います。

もし中学受験をしないとして、その時間をどう過ごすのでしょうか? まさか暗くなるまで近所の公園で集まってゲームをしているのでしょうか? そうした子供たちをよく見かけますね。あるいはサッカーに打ち込むとか? サッカーや野球、あるいはバレエや音楽も大事です。でもそれは勉強しなくてもよい言い訳にはならないですね。

 受験をするしないにかかわらず、中学受験のための勉強(あるいはそのレベルの勉強)はするべきだと思っています。

 

5.デマと噂とフェイクニュースがあふれている

 中学受験のネガティブな側面も書いておきます。

 ほんとうに、デマ・噂・フェイクニュースが多いのです。ネットに溢れているこれらの一部でも鵜呑みにしてしまうと、まるで魑魅魍魎が跋扈する百鬼夜行さながらに思えてきます。

はっきり言って、全て嘘だと思ってください。

そもそもネットにそのような情報を流すのはどのような人間か考えればわかることです。

 (A)塾・家庭教師等のいわゆる業界関係者

 inter-edu(インターエデュ)のような教育系のネット掲示板にこうした業界の人間が書き込むことは本来無いはずです。匿名で書き込む意味がありませんので。もしいるとすれば、悪意をもって世論を誘導する目的しか考えられません。

 私もこうした掲示板はインターエデュしか知りませんし、めったに見ることはありません。たまに見てしまうと、そのたびに辟易させられるだけですね。どうして嘘の根拠で人を攻撃できるのか理解できませんし、なぜこんな掲示板に相談を書き込む人がいるのかもわかりません。

 教育業界関係者が書くとすれば、HPかブログになりますね。私のこのブログもその一つです。書き込む目的は2つです。営業目的と、正しい情報を発信したいという使命感のようなものです。もちろんその2つが重なる場合も多いでしょう。

 私も、このブログを何気なく始めたら、書きたいこと・伝えたい事がありすぎて止まらなくなりました。使命感というほど大げさなものではないですが、書く以上は中立な立場からの正確な情報を書くよう心掛けています。これも使命感の一種ですかね?

 (B)利益を目的とした個人

 私はこの方面に疎いのですが、ブログ中に広告を貼ることで利益が得られる、とそういうことですね。貼るだけで利益が得られるものと、それをクリックして商品購入につながることで利益が得られるものとの2つがあることくらいはわかります。あとはステマですか?(それくらいしかわかりません。) 

※この記事の下のほうに教育関係の広告が出てきますが、はてなブログが勝手に自動表示させているものなので私のあずかり知らぬものです。私自身が記事中にリンクを貼るときには、信頼できる非営利の組織(学校・官庁等)のものしか貼らないように気をつけています。

 自分の子供の受験体験を書いているブログがやたらに多いのは広告収入が目当てなのでしょうか。まあ受験にかかった費用を少しでも回収したいという気持ちはわからなくもないですが、わが子の個人情報を晒してまで小銭を稼ぐ感覚は私には理解はできません。

 これらの個人体験記系のブログは、少し覗いてみただけで、「何の参考にもならない」ことがわかります。もちろん大半の方は嘘を書いてはいないでしょう。しかし所詮たった1名か2名程度の体験にすぎません。そこには一般化できる情報などなく、間違った情報も多く含まれています。しかも、多くの方が、わが子の受験を終えた段階でベテランになった感覚にでもなるのでしょう、上から目線の方が多いのが嫌いです。

 もちろん文章力が非常に優れていて、読むだけで面白いブログもあると思います。だからといって、読み物としてはよいですが、参考にはなりません。

 (C)論争好きな個人

ネット掲示板に書き込んでいる方の中にいますね。他人の書き込みに対して異常な闘争心を燃やす方が。また、デマを吐き散らしている方も掲示板では大勢見かけます。本人が信じ込んでしまっているのか、あるいは愉快犯なのかはわかりません。こうした方々のメンタリティは私には理解できませんが、近寄らないのが吉とはこころえています。