わが子の様子を見ていて、不満を抱かない親はいないと思います。
「やる気がなさそう」
「いやいや机に向かっているのがバレバレ」
「ちょっと目を離すとすぐにさぼる」
「受験生の自覚ゼロ」
まだまだありそうですが、これくらいで。
そこで、過去にたくさんの受験生を見てきた私から、子どものやる気を引き出す方法を10個、ご紹介します。
- 1.中学校に連れていく
- 2.競争させる
- 3.学習ゴールを「見える化」する
- 4.学習量を減らす
- 5.時間のほうびを用意する
- 6.物のほうびを用意する
- 7.解ける喜びを味わえるようにする
- 8.ほめちぎる
- 9.中学受験後のビジョンを明確にする
- 10.勉強するのが当たり前の環境を作ってあげる
1.中学校に連れていく
まず、誰もが思いつく方法がこれです。ただし、連れていくといっても色々なケースがありますね。
(1)文化祭(学園祭)
王道です。
文化祭は、その学校の生徒の様子が最も表れやすいイベントです。子どもが直接中学生と触れ合うことのできる唯一のイベントでもあります。
小学生の目には、中高生の世界は大人の世界に映ります。クラブ活動の展示など、わくわくするものがたくさんあるでしょう。そこで、在校生から暖かい声掛けなどあれば、もう「この学校に行きたい!」となることは間違いありません。
※注意
お子さんの性格と真逆の学校の文化祭は要注意です。
典型的な例が麻布の文化祭です。
ゴールデンウィークに3日間開催されるこの学校の文化祭は、一言でいえばカオスです。
「僕、こんな学校絶対嫌だ!」となる生徒も毎年いますね。
はまれば大ファンにもなる学校なのですが。
(2)体育祭(運動会)
女子校は一般公開していませんが、男子校は見学できるところが多数あります。
とくに運動系の部活に興味がある受験生にとっては学校へのあこがれを醸成するチャンスですね。
※注意
文化祭同様、注意が必要な場合もあります。
典型的な例が開成の大運動会です。
学年を超えた縦割りのチームで競うこの運動会は、入学したての中学1年生が、「開成生」に生まれ変わるイベントですね。
棒倒しに象徴される、一言でいえば、男臭い「乱暴」なイベントです。
まさに開成らしさ全開ですが、やはり例年、「僕こんな乱暴な学校怖い!」となる生徒がいます。
(3)オープンキャンパス等
生徒募集に力を入れている学校では、小学生が学校生活を体験できるようなイベントを多数設けています。
・半日体験授業
・クラブ活動体験
・小学生向け説明会・・・在校生が学校について説明してくれる
・理科実験教室
こうしたイベントは、なにせ生徒募集が目的ですので、どれも小学生が入学したくなるような要素満載ですね。
(4)近所の私立中学校のイベント
その学校が志望校であるならともかく、とくに志望するつもりもない学校に、「近所だから」というだけの理由で連れていくことには賛成できかねます。
時間の無駄だからです。
その学校には、その学校を第一志望としている子がたくさんいるはずですので、そうした子に機会は譲ってあげましょう。
ただし、まだ低学年のうちに、とりあえず「私立中高一貫校」のキラキラとした雰囲気を見せたい、ということならOKです。
(5)イベント以外の時期
どの学校も、外部の人が自由に入れるはずもありません。文化祭や説明会等のイベント以外のタイミングに行ったところで、中にも入れず、様子をうかがうこともできません。通学路の確認くらいしかできないですね。
これは無駄です。
以前の生徒で、ラサールを第一志望としている生徒がいました。
小学校1年生のときから、毎年飛行機に乗って鹿児島まで親子で行ったそうです。
それでも学校は親切にも、先生が出てきてお話相手をしてくださったそうです。
いよいよ6年生になり、「来年はうちの学校に来てね。」などと言われ、お子さんもその気になったとおっしゃっていました。
これで合格→進学となればよかったのですが、残念な結果となってしまったのです。
毎年鹿児島まで行ったことは無駄だったとまでは言いませんが、親子とも冷静さを欠いていたことは確かでしょう。
やたらに学校に子どもを連れていけばいいというものではありません。
ただし、親だけが、通学路や登下校時の生徒の様子を観察しに行くのは良いと思います。素の生徒の様子を見ながら、そこにわが子が混ざっている未来を想像してみましょう。そこで違和感しか感じないとしたら、たぶん合わない学校だということだと思います。
(6)入試本番当日
コロナ以前には、教え子の最後の激励のために、受験校の校門前で早朝から生徒を待つのが通例でした。校門前には、様々な塾の教師がずらりと並んで、生徒を握手で送り出したものです。
さて、そうしていると、毎年、少し離れたところに立ってこちらを見ている親子連れを見かけるのです。
受験生かな? なぜ入ってこないのかな?
疑問に思いはしますが、こちらも生徒の顔を見つけるのに忙しいですからね。
試験の集合時刻が過ぎると、受験生の波は終わります。塾の先生方も三々五々解散します。そのあたりのタイミングで、そうした親子は帰っていくのですね。
そうです。受験生ではなく、小学5年生なのです。
「〇〇ちゃん、来年はこうやって受験するのよ。」とか言いながら、見学に来たのでしょう。
はっきり言わせてもらいます。
迷惑です。やめてください。
受験生は、真剣勝負に挑みに来ているのです。
見世物ではありません。
あまつさえ、我々のところにやってくる保護者さえいる始末です。
「先生、来年はこの子が受験しますので、よろしくお願いします。」
もちろん無碍に追い返しはしませんが、内心は異なります。
こちらも真剣勝負なのです。教えた生徒が朝の握手でちょっとでもリラックスしてくれれば、それで1点でも加点できれば、そうした思いで来ているのです。
コロナにより、こうした入試激励の風習は消えました。
かえって良かったと思っています。
2.競争させる
子どもは競争が好きです。 周囲の生徒と、「勝った」「負けた」と勝敗にこだわります。
本来勉強の世界であまりにも勝敗を気にしすぎることはよくありません。結局のところ自分との闘いであることを自覚しないといけないからです。
とはいえ、最初のうちは、勉強のモチベーションUPの手段としては、競争させるのは有効です。
だから、集団指導塾のほうが個別指導塾より合格実績が出ている、というのが私の意見です。ライバルの存在って大きいものなのです。
(1)集団指導塾に入れる
一番単純かつ平易な方法です。四の五の言わずに、まずはご近所の集団指導塾に入れてみましょう。ベテランン教師であれば、上手に生徒の競争心を煽りながら授業をすすめてくれるでしょう。
ただし、あまりにお子さんの学力とかけ離れた塾では効果はあがりません。自分より少し優秀なライバルに囲まれるのが最も効果的なのは当然ですね。たいして勉強しなくても常にトップでいられるような塾では効果は見込めません。
(2)親と競う
母親との競争も有効です。お母さまが、大人気ないほどに子どもとの競争に本気で臨む、そうしたご家庭もありました。もちろんお母さまの作戦です。とくに暗記物の学習には有効ですね。生徒は母親に負けたくない一心で頑張った、そういうやり方もあります。この場合、父親はライバルとして不適だと思います。つい男は競争に本気になりますからね。父親としての威厳をかけて真剣勝負してしまうのです。こういう場合は、母親の演技力のほうが有効だと思います。
3.学習ゴールを「見える化」する
勉強にゴールなどありません。
とはいえ、ゴールが見えない学習ほどやりたくなくなるものはありませんね。
雲に覆われて頂上が見えない登山は嫌なものです。あとちょっとがんばればゴールだ、というほうがやる気がわくというものです。
日々の学習で小さなゴールを設定しましょう。「ここまで頑張れば、今日は終了だ!」
「あと3日でここまでできればOK!」といったように、学習のゴールを常に「見える」ところにおいてください。
4.学習量を減らす
中学受験の学習量は、高校入試の学習量を超えています。その量を、小学生はこなさなくてはならないのです。もう遊ぶ時間も余裕もありません。ひたすら子どものお尻を叩き続けて勉強に向かわせる。どうしてもそうなってしまいますね。
でも待ってください。
その学習量、例えば大人である親がやりたくなる量ですか? 簡単にこなせる量ですか?
自分にも無理なことを子どもに強要するのは間違っています。
ここは思い切って学習量を半分に(あるいはもっと少なく)減らしてみましょう。
「消化できる」量だからこそ、取り組む意欲もわくというものです。
5.時間のほうびを用意する
「7時までやったら、あとは自由時間」
といったように、時間の目標をさだめてあげるのは有効です。やりたくない勉強でも、「7時までがんばればいいのか!」となれば、がんばれるかもしれません。
ただし注意があります。
量の目標を定めてはいけません。
「25ページまで終わったら、あとは自由時間」
としてしまうと、子どもは雑に解くだけです。ひどい場合には、こっそり解答を見る子もいます。
6.物のほうびを用意する
本当はあまり推奨したくありません。しかし、手っ取り早いことは確かです。
ただし、すぐに子どもは慣れてしまいますので、きりがありません。
ここぞ! というときだけにしておくべきでしょう。
※ご褒美としてゲームを買い与えることだけは止めましょう。
百害あって一利なしとはまさにゲームのことです。
一旦買い与えてしまうと、後で大きな後悔を生むことは保証します。
7.解ける喜びを味わえるようにする
お子さんのレベルに合った問題を用意してください。
解けないレベルの問題ばかりやらされるのはつらすぎます。
かといって、易しいレベルの問題ばかりやらされるのもまた、つらい苦行です。
少し頑張れば正解できる、自分で解けた喜びが味わえる。
本来の学習はこうでなくてはいけませんね。
自力では解けない問題でも、適切なヒントを与えることで解けることもあります。それでも、「自分で解けた!」という錯覚が味わえれば、大きなやる気につながります。
8.ほめちぎる
子どもたちは頑張っています。
中学受験をしようと思わなければ、もっとのんびりした小学生時代を送れたはずです。
それが、塾に行き、復習をし、テストを受け、家で勉強し、という日々になっているのです。
もうそれだけで「偉い」と思います。
どうか、お子さんをほめちぎってあげてください。
みなさん、お子さんのことを「叱り」すぎです。
なかには「怒って」ばかりという話も聞きます。
頑張っているお子さんをプラスに評価することが、お子さんのやる気を引き出します。
どの子だって、親に褒められるのが一番うれしいのですから。
9.中学受験後のビジョンを明確にする
受験生たちは、自分たちが中学受験をする理由についてよく理解していません。まして、受験後のビジョンなど何も描けていないのです。
よくわからないけど、親に言われたから。
塾に行くのは楽しいから。
みんな受験するから。
いい学校に進学して、いい大学に合格するため。
これでは、勉強に立ち向かうモチベーションなど生まれようもありません。
中学受験をする未来としない未来
中学に進学後のビジョン
こうしたものを、お子さんを子ども扱いせずに、きちんと話し合ってください。
もちろん、一回話しただけで明確なビジョンなど生まれません。
しかし、話合わなければ永久にビジョンは描けないですね。
10.勉強するのが当たり前の環境を作ってあげる
これが結論です。
子どものやる気が出てくるのを待っている余裕は実はありません。
上述した1~9の作戦を実行するにしても、最終的には「勉強するのが当たり前」の環境を作ることが最も有効なことは間違いありません。
・子どもの面前では母親はスマホを封印した
・リビングルームのテレビを撤去した
・日曜日は父親は子どもの隣で資格試験の勉強をした
・子どもが勉強している横で両親は読書にいそしんだ
こんなご家庭はたくさんありました。
以前教えていた生徒の母親は、子どもが塾で勉強している間に近所のカフェでご自身の勉強(大学教授だったのです)をなさっていました。
「だってね、先生、私のゼミの生徒(大学生)よりもうちの息子のほうがよほど真剣に勉強に取り組んでいるんですよ。だから、息子が頑張っている間は、私も勉強することにしているのです。」
素敵なお母様だと思います。
母親がスマホでSNSの書き込みをしたりメルカリの物色をしながら、顔もあげずに「〇〇ちゃん、勉強終わったの?」と声掛けをしているようではダメですよね。
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