中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

子どもが自主的に受験勉強に取り組むようになるのはいつなのか?

1.自主的に勉強に取り組む子はいない

 「先生、うちの子は、いつになったら自分から勉強に取り組むようになるんでしょうか?」

もしかして、これがご家庭からの相談件数№1の相談かもしれません。

「勉強しなさい!」

お母さまは、この言葉がけに疲れ果ててしまったのですね。

この状態が何年も続くと考えるとうんざりしてしまいます。

「もしかして、私が無理やり受験勉強をさせているのでは?」

「本当はこの子は受験なんかしたくないのでは?」

「子どもの心の成長を私が阻害してしまっているのでは?」

次から次へと不安が頭を埋めていきます。

「いったいいつになったら自分から勉強してくれるようになるのかしら?」

そういう疑問が出てくるのも当然と思います。

 

今まで大勢の受験生とそのご家庭を見て来た私がお答えしましょう。

そんな生徒はいない。

もう少し丁寧にお答えすると、そうした生徒は極めて少ない、です。

優秀な生徒を中心に指導してきましたが、その優秀な生徒達であっても、母親にがみがみ言われながら勉強するのが通例でした。

親が何も言わなくとも積極的かつ自主的に受験勉強に取り組んでいた生徒は、そうですね、100人に3くらいでしょうか。

 

実は、数えたわけではないのですが、さいきん「真面目」な生徒が増えてきつつある実感があります。

ただし、この「真面目」な生徒というのが、本来の意味での「自ら積極的に勉強に取り組む」というよりは、「他の生き方を知らない」「遊び友達がいない」生徒であるような気がします。

・小学校の友人とは遊ぶ時間がない・・・学校が終われば急いで塾や習い事に行く

・ゲームや漫画・テレビは禁じられている

つまり、自由な時間もないが、自由な時間の使い方も知らない生徒が増えていると思われるのです。

まるで、ミヒャエル・エンデの「モモ」の世界みたいですね。

 

ただ、こうした「真面目な生徒」が積極的に勉強に取り組んでいるのかというと、そういうわけでもないのが困りものです。

 

2.幻想を捨てよ

 

まず、「理想の受験生像」というものを捨てましょう。

「親が何も言わなくとも、子供が目標を持って自主的に勉強に取り組み成果を出している。成績は安定していて、受験にも成功する。」

そんなスーパー受験生は空想の産物と思ってください。

私の〇十年におよぶ指導生活でも、そうした生徒は過去に3人しか知りません。

 

A君・・・こつこつと積み上げ型の勉強ができるタイプ。駒東に進学。

B君・・・スポーツを受験直前まで続けながら、授業中に全てを理解し、家庭学習は最小という秀才タイプ。筑駒に進学。

Cさん・・・100点満点の小テストで98点だと悔しくて泣く(ちなみに他の生徒は60点くらい)。負けず嫌いタイプ。桜蔭に進学。

 

今思い出したら、もう一人いました。

D君・・・とんでもない読書量を誇る天才タイプ。麻布に進学。彼の質問はいつもおもしろかったなあ。

 

こうして私が思い出せるくらいの人数しかいないのです。



本やネット掲示板で見かける、「うちの子は一人で勉強して〇〇中に合格した」といった類の書き込みは、だと思ってよろしい。

受験など、過ぎてしまえば(合格してしまえば)、良い思い出しか残りません。

意図的に嘘をついたとまでは言わぬまでも、盛っていたり、脳内変換されてしまったりするのですね。

 

3.勉強は習慣である

自主的にやる勉強だろうが、言われてやる勉強であろうが、勉強には変わりありません。

費やした時間に応じた知識が身に付きます。

「自主的に勉強するようになる方法」を考えるのは時間の無駄ですので、勉強を習慣としてやるように仕向けましょう。

そのために毎回親が声をかけなくてはならないとしても、それは必要な声掛けです。
受験のための学習には、習慣としての学習に適したものがたくさんあります。

◆計算練習

◆漢字練習

◆理社の知識ドリル

◆国語の知識ドリル

これらを朝起きてからの30分、夜寝る前の30分といった隙間時間に、毎日のルーテインとして組み込むことは重要です。


さらに言えば、これを中学進学後も継続することが大切なのです。

 

4.目覚める時期

それでも、生徒が受験生らしい顔になる時期というものがあります。

私の経験上、それは6年生の夏前後ですね。

このころには、志望校がある程度固まってきます。

5年生までは夢を語っている余裕もありましたが、6年生になって受験までのカウントダウンが始まると、より現実的な志望校を選び、受験パターンの組み立てを行います。

そうなると、生徒としても真剣になってきます。

また、夏前後から過去問の演習がはじまります。

これが、全く解けないのですね。

さすがに危機感を覚えざるを得ません。

秋ごろには、半分くらいの生徒が、受験生らしい顔を見せて課題に取り組むようになります。

ただし、残念ながら、受験直前までそうした顔を見せない生徒もいます。

いわゆる、「幼い」タイプですね。

しかし、幼かろうがなんだろうが、点数さえとれれば合格できます。

私の記憶にある、最も直前になって覚醒した生徒には、入試本番2日前という生徒がいました。お母さま曰く、「そこではじめて、受験するんだ!ということに気が付いたみたい」だそう。一心不乱に過去問に取り組んだそうです。2日間だけ。

しかし、覚醒したからまだ良いかもしれません。

受験前日にゲームのやり過ぎで指から血が噴き出してもコントローラーを手放さなかった生徒というのもいましたので。

 

5.結論

子どもが自覚して自主的に受験勉強に取り組むのを期待するより、習慣としての勉強に取り組ませることを考えよう。

これが結論となります。