中学入試の日々から4か月がたとうとしています。
憧れだった学校に通うようになってから2か月。
やっとわが子も中学生らしくなってきたなあ、と感慨深いものがある今日この頃ですね。
しかし、この時期に必ず受けるご相談があります。
「毎日遊んでいます。このままで本当に大丈夫でしょうか?」
3期生の学校ではもう1学期中間試験が実施されていますね。2期生の学校でも、そろそろ前期中間試験の時期が近づいています。
はたしてこんな状況でもいいのか?
今回は、こんな疑問について深堀りしてみたいと思います。
1.子どもの言い分
(1)1年間は遊ばせて
「中学受験頑張ったんだから、1年間は自由にさせて。その代わり、中2になったら勉強やるから。」
これが最も多い子どもの言い分です。
妙に説得力があるのが困りものです。
親としても、中学受験で子どもに無理をさせたのではないか、という負い目があるのですね。確かに頑張って志望校に合格しました。これは子どもの手柄です。それに、「受験が終わったら好きに遊んでいいから」とまで言った記憶もあります。大学入試は6年後です。ここで1年くらい、子どもの自由にさせてあげてもいいのではないか、と思ってしまいます。本人も1年だけ、と言っているし。
ご注意ください。
来年の今ごろは、「中3になったら頑張るから」、そしてその翌年には、「高校生になったら頑張るから」と言い出す可能性が高いのです。
学年が上がるにつれて、勉強の量も増え、内容も難しくなってきます。例えば数学は、中学2年で一般的な中学生の内容は終了し、中3からは数1の内容に入るのが一般的な中高一貫校の進度です。学校によってはさらに倍速で進んでいるのです。
中1のときに勉強を頑張れなかった生徒が、中2になってから同級生たちの2倍のスピードで学習ができると考える根拠がありません。そんなことでは、中3になってから、受験算数から一側とびに数学1の範囲に飛ぶことになります。
不可能です。
(2)塾には行かない
「塾に行くより、まず学校の勉強が第一だよ。だから塾には行かない。」
なるほど。もっともです。
おそらくは、あまりに遊んでばかりいるわが子に向けて、「塾にでも行ったほうがいいんじゃないの?」と親が声かけをしたことへの返答でしょう。
学校の勉強が第一。当然です。
学校の授業のレベルは低くはありません。とても高度な内容を扱っています。それを期待して私立中高を選んだのですよね。
したがって、まずは学校の勉強を第一に考える。この姿勢は間違っていません。
しかし、それを自分が勉強しないことの言い訳に使っていることが間違っているのです。
まずは学校の勉強をきちんとこなし、小テストや定期試験で結果を出しましょう。それが先決ですね。
(3)部活が忙しい
「今は部活を頑張りたいんだ。」
クラブ活動は中高一貫校生活の花形です。高校受験が無い特権を謳歌できるるのも部活の醍醐味です。
朝は早くに学校に行っての「朝練」。昼にも自主練があり、さらに放課後はメインの部活動があります。土日の休みの日にも、朝から夕方まで練習に余念がありません。
青春ですね。
「まあ、別に学校をさぼっているわけではないから。」
「部活に打ち込むのも正しい中高生の姿だし。」
「その根性があれば、部活が少なくなってきたときに頑張れるはず。」
こう考えてしまいがちですね。
スポーツ推薦での大学進学を狙っているのでないかぎり、部活>勉強 となるのは間違っています。
あくまでも部活は中高生活を彩る副菜にすぎません。メインは勉強です。
単に勉強をしたくない言い訳としての部活になっているだけですね。
(4)友達に誘われたから
中高一貫校に進学して、親として一番嬉しいのは、周囲の同級生たちのレベルの高さだと思います。学力の高さもさることながら、スポーツや芸術に秀でた生徒も多数います。また、囲碁・将棋・チェスの国際大会出場レベルの生徒がいたりもしますね。
わが子よりもはるかに大人の思考力を持つ生徒も多いです。そうした同級生たちからの刺激こそ、中高一貫校に進学する最大のメリットだといえます。
わが子がそうした同級生から刺激を受けながら、毎日楽しく遊んでいる。咎めだてはしたくないですよね。大いに友達と交流してほしい、そう考えるのが普通です。
しかし、それを勉強をやらなくていい言い訳に使うのは間違っています。
(5)みんな〇〇だから
よく聞く子どもの言い訳ですね。
「みんな〇〇なんだよ。」
この〇〇の部分には、子どもがやりたいこと・欲しいものが入ります。
ディズニーランド・スマホ・カラオケ・ゲーム・門限等々。
しかし、ここで言っている「みんな」というのは、あくまでも子どもが主張している「みんな」にすぎません。おそらくは多数派ですらなく、子どもにとって都合がよい特定の生徒を示しているにすぎません。
例えば、同級生数名でディズニーランドに行くと子どもが言っています。
「先月も行ったじゃない。行き過ぎじゃないの?」
「みんなもっと行ってるよ。」
「だってお金もかかるでしょ。お小遣いじゃ足りないじゃない。」
「みんな親から〇〇円くらいもらって行くんだって。」
「じゃあ、お父さんに頼みなさい。」
ここで子どもに甘い父親が財布を出す。
「7時には帰ってきなさい。」
「それじゃ最後までいられないよ! みんな最後までいるって言ってるよ。」
「我が家の門限は7時なんだから、それまでに帰るのは当たり前でしょ!一人だけでも帰ってきなさい!」
ここで子どもに甘い父親が口を出す。
「たまになんだからいいじゃないか。お父さんが駅まで迎えに行くから。」
まあ、こんな会話があるかどうか知りませんが、子どものいう「みんな〇〇だから」は信用なりません。
他人は他人、自分は自分、と自らを律することを学ぶのも大切な学びなのです。
2.中高一貫校生の典型4分類
あくまでも一般論ですが、中高一貫校生の勉強への向き合い方について、分類してみましょう。
(1)塾に通っている
おもに鉄緑会でしょうか。他にも、SEGだのPREPだのという名前をよく聞きますね。
塾も商売ですから、難関校に合格した直後の生徒の青田買いを始めるのです。中学入学準備講座的な名称の講座からはじめ、春期講習へ通い、4月以降も通塾している、そんな生徒もいます。
別に私は塾通いを推奨していません。むしろ若干反対よりの立ち位置です。
しかし、勉強に手を抜かない姿勢は高く評価します。
ただし、塾に通っている生徒は以下の3種類がいますので要注意です。
A:学校の勉強<塾の勉強
学校の授業中に塾の宿題の内職をしていて先生に怒られた、そんな話をよく耳にします。本末転倒も甚だしいですね。いったい何のために受験して進学したのかわかりません。
それでも学校の勉強を片手間でこなして良い成績をとれるレベルならまだしも、どちらも中途半端になる危険があると思います。
B:塾の勉強<学校の勉強
もちろんこれが正解です。まず第一は学校の勉強です。その上で、それを補完するための塾に通う。たとえば、英語をもっと勉強したいので週1回英語だけ塾に行く、そんなスタイルです。こうした生徒はかなりの割合になると思います。
C:学校の勉強のフォローとしての塾
学校の勉強に早くもついていけなくなっているのです。たぶんスタートダッシュに失敗したのでしょう。案の定、1学期の中間試験は最悪な結果でした。さすがにこれではまずい! という危機感が生じます。そこで塾に通うのです。
しかし、残念ながら、私立中の学習内容とカリキュラムが適合した塾はありません。気をつけないと、さらに学校の勉強が遅れる危険性もあるのです。
(2)学校の勉強を最重視している
学校にとっては理想的な生徒です。私から見ても、理想的な生徒です。中高一貫校の授業レベルは決して低くはありません。むしろ突出して高度な内容を扱う先生が多数います。その全ての教科を大切にして、きちんと学習する。まさに王道です。
このスタイルをとる生徒は、最終的には相当なレベルまで学力が上がることが見込めます。
(3)遊びに部活に夢中だが、頭はいい
こういう生徒がいるのが私立(国立)の怖いところです。毎日部活命です。あるいは普段遊び狂っているのです。提出物はさぼるし赤点もとります。先生からも目をつけられています。しかし、ちょっとがんばるだけで、たちまち高得点をたたき出す、そうしたポテンシャルを秘めているのですね。
「まいったよ、数学5点だった。」
などと言っていたはずなのに、いきなり満点近くの得点を取ってきます。
「どんな勉強したの?」
「うん、教科書の問題全部を5回やってから、問題集3回まわした。」
ううむ、凄いというか何というか。
教師目線で言えば、地道な日々の努力にまさるものはないと信じています。しかし、そうした常識を超えてくる生徒がいるのも、中高一貫校なのですね。
(4)ポテンシャルは高くないのに遊びに夢中
いうまでもなく、一番危険な生徒たちです。
しかし、一定割合かならずこうした生徒はいます。
「大学受験勉強なんて、高3になってからで間に合う。中1から勉強なんてしなくても大丈夫」
そんな風潮がとくに男子校に見られるようです。あるいは、ファッションや音楽・映像等に夢中になっている女子生徒。
「高2で部活引退してから塾に行けば、だいたい〇〇大学くらいまではいけるっしょ。」
そんなことを言うのです。
しかし、お通いの学校の大学合格実績をよくご覧ください。
「えっ、この学校からこんな大学?」
と思ってしまうような学校名がいくつも並んでいます。
それは、あきらかにこの分類の生徒達の末路です。
もちろん 中高生活>>大学進学
こういう価値観なら私ごときが意見することはできませんが。
3.中1の今なら間に合う
今この記事をお読みということは、お子さんは中1でしょうか?
良かった。それなら間に合います。
この夏休みは、徹底的に勉強に振り向けましょう。
一度、お子さんを「遊びモード」から「勉強モード」へギアを入れ替える必要があるからです。
本当なら、この夏休みは、「中学受験がんばったねご褒美ハワイ旅行?」に行くはずだったのですが、あきらめましょう。
この学校に合格した
これはお子さんの成果です。
学校の勉強をおろそかにした
これもお子さんの現実です。
中1の前期は、正直いってどの教科もアイドリング程度の量・質にすぎません。9月以降、信じられないような加速で進みます。そこで振り落とされると、リカバリーは非常に難しいのです。
この夏休みは、思い切って勉強漬けになりましょう。
去年の夏休みだってそうでしたよね?
ただし、中学受験の勉強より、はるかに高度で面白い勉強です。
4.塾は行くべき?
ううむ。難しいところですね。
本当なら、夏の学習はお子さん一人で計画を立てて実行してほしいのです。
やるべき材料は、学校で使っている教材です。
中高一貫校ですので、教材も普通の教科書だけではないと思います。
【数学】
Focus Gold(フォーカスゴールド)
体系数学
精解中学数学
システム数学
こういったものでしょうか。
全てを詳細に検討したわけではありませんが、個人的には体系数学が好きです。
【英語】
NEW TREASURE ENGLISH SERIES(ニュートレジャー)
PROGRESS IN ENGLISH 21 REVISED(プログレス 改訂版)
Birdland (バードランド)
英語についてはこれくらいしか知りません。
個人的には、どれもあまり好きではないかな。内容が真面目かつ密度が濃すぎてつまらないのです。これで英語が得意になる生徒も多数いるのでしょうけれど、英語嫌いも多数生まれそうな気もします。優秀な生徒なら大丈夫なのかな?
まあ英語につていは、英検対策本をはじめとして、いくらでも書店で選べますので、学校の教材以外に手を出してもよいとは思います。
その他、あなどれないのは理科・社会です。
どうしても英数国の3科目に目が向きがちですね。国語はまあ何とかなるから(本当は何ともなりません!)、とりあえず英数かな。そう考えるのでしょう。
そんな考えで理社を後回しにするのでしょう。
しかし、私立の理社は、教師独自のカリキュラム・プリントで進む場合がとても多く、市販の参考書や塾には頼れないものなのです。
中高一貫校生の理社をきちんと指導してくれる塾というのもほとんどないと思います。少なくとも私は聞いたことがありません。
ということは、自分で何とかしなくてはならないのです。
普段の授業をさぼってばかりいて、すでに何ともならなくなっているのに、はたして自力でリカバリーできるのでしょうか?
こちらも、今ならまだ間に合います。
前期で学校から出た課題やプリントを最初から、きちんと学習しましょう。
こうしが学習を自分で悪戦苦闘しながらがんばる。これが夏休みの正しい学習法だと思います。
そこで、私からのアドバイスは、「まだ塾には頼るな!」というものになります。
業界の内側にる私が言うべきセリフではないですね。
この段階での塾通いは、学校の勉強に追いつくためではなく、学校の勉強だけでは足りない余裕のある生徒にこそ有効だと思っています。