中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】早稲田アカデミーの良い所、気になる所

今回は、早稲田アカデミーについて取り上げてみたいと思います。

※この塾を持ち上げる意図も貶める意図もありません。私の独断と私見にすぎませんのでご容赦ください。

 

この塾は熱血系なのか?

 

早稲田アカデミーというと、熱血系の塾として知られています。

いったいどうしてそのような風評が立つのでしょうか?

 

この塾のHPを見ると、指導理念がこのように掲げられています。

◆まず私たちが「本気」であること
学力を伸ばすために一番大切なのは、主役である生徒たちが「本気」に変わること。そのためには、まず私たち講師が「本気」でなくてはなりません。早稲田アカデミーの講師は「生徒の夢をかなえたい」という情熱を持って、「本気」で生徒たち一人ひとりと向き合い、志望校合格のために全力を尽くします。

◆子どもたちの成長を見守る喜びと責任感
生徒たちが合格を手にして喜ぶ姿は、私たちにとっても大きな喜びです。そしてその結果以上にうれしいのは、生徒たちが中学受験を通して大きく成長を遂げることです。思うような結果が出なくて悔し涙を流しながらも、努力し続けたこと。高い目標に向かって、自分の力で挑戦したこと。これからの未来を創る子どもたちの成長をサポートできることに、私たちは喜びとともに、強い責任感を感じています。

 

「本気」「全力を尽くす」「悔し涙」「成長」「挑戦」「責任感」といった熱血系ワードがちりばめられていますね。

 

参考までに、SAPIXのHPから指導理念を引用するとこのようになっていました。

教育理念
いっぱい考え、う〜んと感じて、たくさん表現する。
SAPIXの5文字には、子どもたちの未来への可能性がいっぱいつまっています。
サピックス」の「SAPI」は、サピエンティア(知恵)、サピエンス(考える人)などの言葉に共通するラテン語で、“正しく考える”ということを意味します。いわゆる「コピペ(コピー&ペースト)文化」や「マニュアル人間」が氾濫している今、時代が本当に求めているのは、「正しく考える人」つまり、正しい思考力と判断力、豊かな創造力と表現力を発揮できる人間です。私たちが「SAPlX」という言葉に込めた教育理念は、まさにそうした「正しく考える人」の育成なのです。

「正しく考える」ことは、新しい時代を切り拓く子どもたちにとっては欠かすことのできない“新石器(資質)”です。私たちサピックスは、この“新石器”を携え未来の扉を大きく開け放ち、次代を開拓する“ホモ・サピエンス”たちを育てていきたい、そして、子どもたちのかけがえのないパートナーであり続けたいと願っています。

 

これもまた随分対照的ですね。

「正しく考える」「思考力」「創造力」「表現力」「判断力」といったワードがちりばめられています。

 

塾が掲げる「教育理念」がどこまで正直なのものなのか、どこまで指導に反映しているのかはわかりませんが、何となく早稲田アカデミーの姿が見えてくると思います。

 

さらに早稲田アカデミーのIRの会社理念のところにもこうありました。

本気でやる子を育てる

早稲田アカデミーが、創業以来ずっと大切にしている教育理念です。

私たちは、「受験」を通して、子どもたちに何事にも本気で取り組む姿勢を身に付けてほしいのです。

なるほど。

とにかく「本気」がキーワードの塾なのです。

 

◆ハチマキ

早稲田アカデミーといえばハチマキです。

「必勝」と大書されたハチマキですが、HPによればこうあります。

夏期合宿でも、夏期集中特訓でも、授業に参加するときには「ハチマキ」を締めて参加をしてもらいます。「普段の自分よりも一段階高い集中力で授業に取り組もう、そのためにハチマキをしっかり締めて!」

ううむ。

 

 

沿革と現在

1975年    杉並にて開業

1985年 商号を「株式会社早稲田アカデミー」に変更
1989年 四谷大塚と準拠塾契約を締結
1997年 四谷大塚と提携塾契約を締結
2002年  難関中学・高校受験のための特化ブランド「ExiV(エクシブ)」を新設
2011年  明光ネットワークジャパンと業務・資本提携し、高学力層向け個別指導塾「早稲田アカデミー個別進学館」の開校
2015年   進学塾「水戸アカデミー」を子会社化
2016年    最難関中学受験専門塾「SPICA」を自由が丘に開校
2019年   日本人子女対象のロンドン校を開校。
7月    ニューヨーク在住の日本人子女対象の進学塾を運営するSHINKENSHA U.S.A.を子会社化
2023年    株式会社ナガセと東進衛星予備校ネットワーク・東進中学NET加盟契約締結

 

ざっとこんなかんじでしょうか。

ニューヨークとロンドンからの帰国生の取り込みにも着手していますし、ナガセとも提携しているのですね。

なかなか他塾との合従連衡に長けている印象です。

売上高が328億を超える大規模教育産業には違いありません。

 

合格実績

HPを見ると、こうなっています。

 

※小6在籍者数、約6900名からの実績です。

御三家中545名合格

開成146名

麻布102名

武蔵76名

桜蔭69名

女子学院94名

雙葉58名

早慶中496名

早実69名

早大学院73名

慶應湘南藤沢46名

早稲田191名

慶應普通部72名

慶應中等部45名 

 

一度HPの合格実績のページをご覧ください。

とにかくもう派手というか何というか。

御三家中と早慶中の実績がこれでもか!といわんばかりにデカデカと表示されています。

日能研・SAPIXの合格実績の表示と比べると、この塾が何を大切にしているのかがよくわかります。

 

【合格者数の集計について】

合格者数は、早稲田アカデミーグループ(早稲田アカデミー・SPICA・LOGOS AKADEMEIA・早稲田アカデミー個別進学館・水戸アカデミー・QUARD、及び早稲田アカデミー海外校)に、塾生として正規の入塾手続きを行い、受験直前期まで継続的に在籍し、授業に参加した生徒のみを対象に集計しています。
テストのみを受験した生徒、夏期集中特訓・正月特訓・その他選択講座のみを受講した生徒は、一切含んでおりません。

お約束の文言も提示されています。

 

正直いって、塾が公表している合格実績については、どこまで信用していいのかなんて誰にもわからないのです。

何をもって「塾生」とみなすのかも塾にゆだねられていますし、数字だって確認するすべはありません。複数の塾を掛け持ちする生徒もいます。

 

ここからわかることは、

◆難関校にもたくさん合格している(ようだ)

◆難関校への指導に力を入れている(のではないか)

くらいでしょう。

 

授業曜日や体制

 

◆通常コースの場合、4科目の生徒の通塾は週3回
●1日の授業は、100分×2コマ
●土曜日には、「土曜YT講座」を実施
●日曜日には、志望校別対策講座「NN志望校別対策コース」や弱点科目を集中的に学習する「日曜特訓」の受講が可能

 

このようになっています。

まあ中学受験塾としてはごく普通の設えです。

 

◆NN志望校別対策コース

早稲田アカデミーの代名詞的な講座です。

開成・麻布・武蔵・駒場東邦・早稲田・早大学院慶應普通部クラス

桜蔭・女子学院・雙葉クラス

渋谷幕張早実クラス

 

以上12クラスが設置されています。

これらの学校を志望する生徒を1校舎に集めての講座となっています。

例えば、開成クラスは西日暮里校舎、桜蔭クラスはお茶の水校舎、渋谷幕張クラスは海浜幕張校舎 といった具合です。

 

塾からすればメリットの大きなやり方です。

塾内のリソースを1点に集中できますので。

 

生徒からすればデメリットの大きなやり方です。

通塾時間が無駄です。

 

ただし、ライバル(戦友)と切磋琢磨する空気に巻き込まれやすいことと、いずれ開成に合格すれば西日暮里に通うのでその予行演習?になるというメリットはあります。

また、そもそも開成を志望するということは、6年間西日暮里に通いやすいエリアに住んでいるので通塾時間はさほど問題ではないということなのかもしれません。

 

ちなみに、この「NN志望校別コース」に入るためにはテストの点数をクリアすることが必要です。

 

このテストに合格できなかった生徒および、NN志望校別コースに掲げられた学校を志望していない生徒のためには、「NN難関プログレスコース」というものがあります。

7校舎での開催となっています。

 

やはり、塾内のリソースを1点に集中する思惑が見て取れます。

生徒のとってのデメリット=通塾時間が無駄 に見合うメリットが見て取れません。

「NN志望校別対策コース」のように、同じ学校を受験するライバルとの切磋琢磨は期待できなさそうです。

池袋・ 錦糸町成城学園前・ 武蔵境・ 武蔵小杉・ 南浦和津田沼

これらが開催校舎です。

家が最寄りで普段からこれらの校舎に通っている場合はいいですね。

それ以外の校舎に通っている場合、日曜だけ離れたこれらの校舎への通塾を余儀なくされます。

 

こうした志望校に特化したクラス設定というのは、塾にとっても難しいのです。

同じ学校を受験する生徒がある程度の人数いなければ、各校舎で志望校別クラスの設定はできませんので。

サピックスはそのスタイルですね。(一部校舎で日曜の開講なし)

サピックスと比べて、生徒数は少し多く、3倍以上の校舎を展開している早稲田アカデミーは、1校舎に志望者を集約するしかないのでしょう。

日能研も「日特」とよばれる特別講座を日曜日に開催していますが、やはり難関校の志願者だけを特定校舎に集約して実施しています。

 

どういう生徒に向くか?

 

◆NN志望校別対策コース の対象校を受験する生徒

開成・麻布・武蔵・駒場東邦・早稲田・早大学院慶應普通部

桜蔭・女子学院・雙葉

渋谷幕張早実

これら12校を受験予定で、成績上位の生徒にとっては、「NN志望校別対策コース

」が効果的かもしれません。

◆精神論が嫌いじゃない家庭

こればかりは、好き・嫌いがありますので。

ハチマキで燃える子、成果につながる子ならよいですね。

◆最寄り駅に早稲田アカデミーしかない

わざわざ電車に乗って他の塾に行くのは時間の無駄ですから。歩いていける早稲田アカデミーでいいと思います。

◆高校受験も視野に入っている場合

四谷大塚日能研は中学受験専業ですし、サピックスも高校受験部門は教室が異なりますが、早稲田アカデミーは同じ校舎で高校受験も指導しています。小学生と中学生の生徒数はほぼ同じくらいです。

 

 

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