今回は、公立中高一貫校を受験する際の塾選びについて書いていきます。
※あくまでも私個人の私見にすぎません。特定の塾を持ち上げる意図も貶める意図もありませんのでご理解ください。
公立中高一貫校とは?
まず、どれくらいあるか見てみましょう。
◆東京都
東京都立白鷗高等学校附属中学校
東京都立桜修館中等教育学校
東京都立富士高等学校附属中学校
東京都立大泉高等学校附属中学校
東京都立立川国際中等教育学校
東京都立武蔵高等学校附属中学校
◆神奈川県
神奈川県立相模原中等教育学校
神奈川県立平塚中等教育学校
横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校附属中学校
横浜市立南高等学校附属中学校
川崎市立川崎高等学校附属中学校
◆埼玉県
埼玉県立伊奈学園中学校
川口市立高等学校附属中学校
◆千葉県
千葉県立東葛飾中学校
一都三県ですとこれだけあります。
最初に登場したのが2005年の都立白鷗高等学校・附属中学校の誕生でした。
一応の区分としては、「中等教育学校」、「併設型」、「連携型」の3つに分けられます。6年一貫教育の「中等教育学校」、高校募集もある「併設型」そして近隣の中高が連携する「連携型」ですが、連携型は「中高一貫」からはいちおう外して考えましょう。
また、当初は併設型だった学校も、続々と高校募集を打ち切っていますので、都内では名称はどうあれ全て「完全6年一貫校」となりました。
入試で求められるもの
公立中高一貫校を志望する場合、私立受験とは異なる力が要求されます。
◆分析力
◆記述力
この2点です。
ためしに、都立白鴎の問題(適性検査)を見てみましょう。(令和5年度)
まず出題方針がこうなっています。これは毎年変わりません。
1 出題の基本方針
(1) 小学校等で学習した内容を基にして、思考・判断・表現する力をみる。
(2) 与えられた課題を解決するために必要な、分析力、考察する力をみる。
(3) 身近な事象の中から課題を発見し、それを解決するための方法を考えることを通して、その考えが適切であるかを判断し、自分の意見を適切に表現する力をみる。
◆適性検査Ⅰ
いってしまえば国語です。
「問題意識」「情報」「考える」こういったテーマについて書かれた論説文が2つ提示されています。
問1と問2は、それぞれの文章に引かれた傍線部について、100字以内でわかりやすく説明するというものです。
難しくはありません。
文章は平易ですし、この程度の記述問題なら、私立中の入試でも普通に出題されています。
問3は、「2つの文章の筆者の主張に基づいて、あなたの考えを400字以上450字以内で具体的に述べな さい」
という出題です。
字数におびえなくても大丈夫です。
字数に余裕があるほうが書きやすいものです。
「何を書けばいいんだ?」とうろたえなくても大丈夫です。
ヒント、というかほとんど解答の道筋が指示されていますので。
第一段落で、「わたし たちは日常生活の中で何を意識していく必要があるのか」についてまとめ、第二段落以降で、「あなたはこれからどのような学校生活を送りたいか」についてまとめなさい。
ここまでフォーマットが示されていれば、記述するのは簡単です。
◆適性検査Ⅱ
いってしまえば、理科と社会です。
大問1は、プログラミングの問題ということのようですが、簡単な算数パズルと、豆電球のブラックボックスの回路という、理科というよりこちらも簡単なパズルです。
大問2は、産業別就業者数のグラフを見ての出題です。
(1)では、グラフの変化を説明するだけの記述です。
(2)は、6次産業化の利点について、紹介されている具体的な取り組みの共通する利点について、農家の人たちの立場と農家以外の人たちの立場から考え、それぞれ説明するという記述でした。
大問3は理科的な内容です。
実験1・2では、葉の表面の水のはじきやすさについての考察、実験3では布の材質による吸水性の違いについての考察、これらを説明する問題でした。
理科的な素養はさほど必要としない問題です。
◆適性検査Ⅲ
理科・算数の融合問題です。
立体の特徴と展開図についての問題、ヨーグルトの発酵についての実験方法を考察する問題でした。
実際の出題については、公式HPをごらんください。
🔗https://www.metro.ed.jp/hakuo-h/
令和6年度の出題も簡単にみてみます。
◆適性検査Ⅰ
短歌・俳句にかんする説明文(というより随筆)を二つよみ、傍線部について説明する問題が2問、自由作文のような記述が1問という構成は変わりません。
「あなたは、これからの学校生活で仲間と過ごしていく上で、言葉をどのように使っていきたいですか。今のあなたの考えを400字以上450字以内で書きなさい。 ただし、2つの文章の筆者の、短歌・俳句に対する考え方のいずれかにふれること」
◆適性検査Ⅱ
算数・理科・社会の顔をしたパズル問題
◆適性検査Ⅲ
算数の集合についての問題、理科の実験結果をグラフに整理する問題
例年、同じようなスタイルで出題されています。
合格に必要な力・不要な力
★必要とされる力
(1)読解力・分析力
問題に何が書かれているのか、どういう意図の問題なのか、何を要求されているのか。これらについて的確に把握する力が必要です。
(2)記述表現力
問題の趣旨にそって、的確にまとめて解答に落とし込む必要があります。
★不要な力
(1)算数の問題を解く力・計算力等
複雑な図形問題や特殊算の問題を解く力は必要ありません。あえていえば、論理・集合の演習は有効です。
(2)理科・社会の知識
星座の知識も地層の知識も生物に関する知識も不要です。産業や地形の知識も歴史についての知識も公民についての知識も不要です。グラフや資料の読み取りができれば問題ありません。
(3)文章の読解力や漢字・語句に関する知識
扱われている文章は平易ですので、難しい文章を読む力までは必要ありません。登場人物の心理を理解する力も不要です。漢字・語句についての知識もいりません。文章を書く力は必要です。
このようにしてみてくると、中学受験のための学習とは別次元の問題であることがわかります。
白鷗の問題だけ見ましたが、他の学校の問題も大同小異です。
基本コンセプトは大きく変わりません。
私立中受験で必要なのは、上の図の雲の部分です。
つまり、きちんとした教科学習の蓄積と問題演習によって身につく力が重要です。
麻布のように、左上の力、つまり知識・解法力のレベルと思考力・記述力のレベルと、どちらも高度な力を要求する学校もあります。
そして、公立中高一貫校は★印のところ、すなわち思考力・記述力だけを必要としていて、知識力や解法力は必要ないという「異色の」出題傾向です。
したがって、公立中高一貫校だけを受験する場合には、いわゆる中学受験勉強とは異なるスタイルの学習をしなくてはなりません。
そこに特化したのがenaという塾なのですね。
enaという塾
まず、この塾のコンセプトについて、HPにはこうありました。
enaの教師陣は自らが巣立った「塾」を天職とし舞い戻った諸君たちです。
それゆえ徹底した指導は当然で、受験学年の9月から始まる「毎日登塾」や自習室で行われる「過去問演習」などの指導(無料)、夏期は最大で20日間の合宿(予定)、
冬期は正月を含む13日間の合宿(希望参加)もその一環です。
またDTS(daily telephone service) と称し、しばしばお電話をし、成績状況報告と進路相談をさせていただきます。
もちろん生徒諸君の登退塾は、保護者様の携帯に即座にお知らせします。また保護者様はいつでも教室風景・授業内容・合宿生活をネットでご参観いただけます。
enaという塾は、1972年に国立につくられた「国立学院」を母体としてます。
まさか教師全員がena卒業生ではないでしょう。この書き方だと、「過去にどこかの塾に通ったことのある」人間が全員該当します。
毎日登塾・合宿、なかなか「熱い」ですね。
保護者との距離も近くしようとする努力がうかがえます。
指導の特徴としては、4点があげられていました。
◆少人数指導・・・最大20名とのことですが、これはどこの塾でも同様ですので珍しくありません。むしろ普通です。
◆ダブル学習システム・・・対面授業+単方向映像授業+ネット授業参観 だそうです。映像授業の配信も今や常識ですが、授業参観、つまりネットで授業風景を公開しているのは珍しいですね。
◆合宿・・・7か所もの合宿所を所有しているとのことで、短期・長期の様々な合宿があるそうです。
◆毎日登塾・過去問演習・・・これは、授業の無い日でも自習室で過去問を解け、というスタイルですね。
最近流行らない「合宿」に力を入れている点をのぞけば、さほど変わったシステムではないと思います。
東京を中心に180ほどの校舎を展開しています。
どういった受験生に向く塾なのか
答は出ています。
公立中高一貫校だけを志望する生徒です。
完全に公立中高一貫校対策に特化した塾だと考えていいでしょう。
合格実績を見れば明らかです。
小石川 78
大泉高附 128
立川国際 107
冨士高附 106
見たか 109
武蔵高附 104
白鴎高附 108
南多摩 103
両国 96
桜修館 85
学芸国際 20
区立九段 82
私立難関校にはほんのわずかしか合格していません。
開成ー0,麻布ー0、桜蔭ー0、女子学院ー2,駒東ー2、武蔵ー1名、早実ー1名、
(2月1日の1回だけ入試の学校を拾ってみました)
かつてはお膝元ということで高い合格実績を誇っていたはずの桐朋中にも、わずか8名という数字には驚きました。
※私立の一部には、「適性検査型入試」を実施する学校があります。公立中高一貫校受験生の受け皿として設定していることは明らかです。
トキワ松・立正大付属・実践女子・玉川聖学院・目黒日大・郁文館・淑徳巣鴨・駒込中・武蔵野中・中村中・共栄学園・成立学園・京華・明星・目白研心等がそうした学校です。
公立中高一貫校に加えてこれらの学校を併願するのなら、この塾はフィットします。
おまけ・・・ena国際部
実はこの塾は早くから海外進出に熱心でした。
欧米に17校も展開しています。
そして帰国生の受け皿として、渋谷・東京(茅場町)・あざみ野・西船・吉祥寺に「ena国際部」としての校舎が設けられています。
もし、海外でenaに通っていて、日本では上記5校舎の近くに住んでいて、さらに帰国生入試だけを受験する場合には、有力な選択肢となりうると思います。