中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】サピックスの牙城を崩す塾は現れるのか?

20241011144424.png (1200×630)現時点で中学受験でのSAPIXの存在感は圧倒的です。

今後SAPIXの牙城を切り崩すような塾は現れるのでしょうか?

今回は、そんな「野次馬根性」的な記事となります。

※完全に、私の主観というよりは妄想です。気軽に読み流していただければ。

 

最右翼 早稲田アカデミー

 おそらく、最も可能性が高い塾があるとすれば、早稲田アカデミーでしょう。

◆生徒数

◆資金力

◆校舎展開

これらにおいて、サピックスを上回っています。

もっともサピックスの背後には代々木ゼミナールが控えていますので、資金力はいい勝負かもしれません。

とくに私が注目しているのは、早稲田アカデミー「なりふり構わず合格実績を稼ごうとする」姿勢にあります。

別に悪い意味ではありません。

塾の存在意義は、預かった生徒を合格に導く、ただこれだけですので、そこをひたすら追求しようとする姿勢は顧客にとっても望ましいところです。

「無料テスト」「特待生制度」等の集客ツールを駆使してでも、合格実績稼ぎに貪欲です。

すでに押しも押されぬ塾となった現在でも、その姿勢はぶれることはありません。

今のサピックスに欠けているもののような気がします。

そもそもサピックスも新興塾として登場した頃には、母体となったTAPを始めとして、開成に抜群の実績を誇った桐杏学園(100名以上合格していた!)や、日能研四谷大塚などがしのぎを削っていたのですね。それらの塾との戦いに打ち勝って今のSAPIXがあるわけですので、当時のSAPIXも合格実績に対する執着が相当あったと思うのです。

(ただし、SAPIXに関しては、無料テストも特待生制度も執拗な勧誘も一切ないのが最初からの持ち味ではあります)

 

実は先例があるのです。

サピックス中学部です。

サピックス中学部といえば、高校受験において抜群の実績を誇る塾でした。

開成・筑駒・慶女という、高校受験のトップ3校への合格者数が他の追随を許さぬレベルだったのですね。

その頃、早稲田アカデミーは、名前通り、早稲田附属系には強いけれど、開成・筑駒・慶女に関してはサピックス中学部の足元にも及ばぬ塾でした。

しかし、この戦いは、完全にサピックス中学部の負けとなりました。

要因は私の見るところ3つあります。

早慶付属校人気

 大学入試の不透明さが増すにつれ高校から早慶附属を目指す層が厚くなってきたのです。ここに早稲田アカデミーは強みを持っていました。

◆高校入試問題の質

 小学部同様、サピックス中学部も思考力を重視した指導スタイルです。しかし、残念なことに、高校入試の問題はそのレベルを必要としていなかったのです。

◆面の展開

 公立中学生にとって、塾は近いほうがよいのです。学校も部活も忙しいですから。

わざわざ電車に乗ってSAPIXまで行くより、歩いて(自転車で)行ける早稲田アカデミーが選ばれる所以です。

 

「別に開成や筑駒を目指しているわけでないから」「早稲田系に行きたいから」「大学入試は回避したい」といった層を集めた早稲田アカデミーですが、当然集まった生徒の中にも原石がたくさんいます。こうした生徒を鍛えることで、開成や筑駒にも合格者を出せるようになっていったのです。

 

ただし、高校受験と中学受験の指導ノウハウは全く異なります。

今のところは、早稲田アカデミーサピックスの持つ中学入試のノウハウには追い付いていないと思います。

しかし、いつまでもそれが続くと考える理由もありません。

とくに、東北大震災・コロナ禍という災厄を経て、遠くの塾より近くの塾を選ぶ方が増えています。

私が、サピックスの牙城を切り崩す最右翼と考える理由です。

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次点 グノーブル

グノーブルにもその可能性が少しだけあります。

まだ規模が10倍以上も違います。したがって、合格実績や資金力で戦えるレベルではありません。

ただし、グノーブルは元サピックスの人間たちが作った塾です。

サピックスから大勢の講師を引き抜いて設立されました。

したがって、サピックスの持つ中学受験のノウハウをそのまま持っています。

サピックスにとっては、戦いづらい相手といえるのではないでしょうか。

しかし、サピックスと同じことをやっているだけでは永久にサピックスの牙城を切り崩すことはできないでしょう。

新たな価値観、新たな教育コンセプトを打ち立てていかないと難しいと思います。

かつての四谷大塚が「予習シリーズ」の作成により日進を追い落としたような、かつてのサピックスが新たなコンセプトで四谷大塚を凌駕したような、そうしたものがなければ2番にはなれたとしても1番にはなれないように思います。

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大穴 日能研

すでにサピックスVS日能研の勝負はついています。

今さら日能研にどんな目があるというのでしょうか。

 

実は、この塾は良くも悪くも「まともな」「普通の」塾です。

オリジナルのテキスト体系やテスト体系も完成していますし、副教材の種類も豊富です。

校舎も広く展開しています。

情報も豊富です。

足りないものは、「システム」と「教師」だと思います。

この塾のシステムは、非常に合理的な「予備校スタイル」をとっています。教室を運営するのは総合職で教師ではありません。教師の指導力に立脚しない校舎運営となっているのですね。教師は、授業の時間にやってきて授業をするだけです。

これでは教師の「やる気」は出ないと思うのです。

教師という人種は、教えることに情熱をもつ人種です。休日でも家でプリントを作っていたり、旅行先でもテストのネタを探してしまうような人種なのです。こうした教師のやる気を最大限に活用しないと難関校の実績など出ないと思います。

まあ、「やりがい搾取」の一種かもしれませんが。

私の知人の教師は、合格発表会場に行ったものの、怖くて中になかなか入れなかったそうです。自分の教えていた生徒達の合否にそこまで思い入れがあるのです。

別の教師は、辞表をポケットに忍ばせて合格発表を見に行ったそうです。「あの生徒が不合格になったら俺が責任をとるしかない」といって。

 

優秀層が多そうなターミナル駅にでも、そうした教師を集めて「新規校舎」を作ってみると面白いことになるのでは、などと妄想します。

サピックスが、社長以下、経営陣が教壇に立っていた(今は違いますが)のに対し、教師ではない人間が経営をしている塾の限界なのかもしれません。

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大穴その2 ena

この塾も、サピックスとの戦いに敗れ、というより、同じ土俵に立つことすらできなかった塾です。

私立難関校の合格実績は寂しい限りです。

今のところ公立中高一貫校狙いの塾として、サピックスとは完全にすみ分けをしています。公立中高一貫校の実績は他塾の追随を許さぬものですね。

サピックスに対抗するつもりかどうか、最近「極(きわみ)」というネーミングの難関校に特化した教室を2つほど開きました。

しかし、私が注目しているのはそこではありません。

海外帰国生の取り込みなのです。

日本企業の海外進出も以前ほど活発ではなくなったとはいえ、まだまだ海外で働いている日本企業の方は大勢います。そうした家庭は、子どもの教育にそうとう頭を悩ませています。

一言でいえば、塾がほとんど無いのです。

そこに早くから目をつけたのはenaでした。

アメリカやイギリス、ドイツなど日本人の多いエリアに教室展開をしているのです。

ただし受け入れ先となる教室が日本に少ないことと、私立中への合格ノウハウがないことがネックです。

それに対し、サピックスは帰国生の受け入れに不熱心としか思えません。いちおうアメリカにサピックスの子会社的な教室はあるようですが。

なぜなら、サピックスが主戦場としている最難関私立の多くは、帰国生入試をおこなっていませんし、帰国生を特別扱いしてくれないのですね。

開成・麻布・桜蔭・女子学院・筑駒、どこも帰国生入試などありません。

かろうじて聖光・海城くらいでしょうか。

難関校では渋谷系くらいですね。

だから、サピックスは帰国生のために、2科目クラスとか英語クラス等の特別な授業体制を組んでいないのですね。(いちおう少しだけはあるようです)

もしenaが「帰国子女アカデミー(KA)」を凌駕するような突出したレベルの英語授業など始めると、新たな展開が見られるのでは?などと夢想します。

開成や桜蔭サピックスにくれてやるが、渋谷系と広尾系は譲らん! といったかんじかな?
帰国生の中には、帰国枠で渋谷幕張の合格をとって開成に合格する子や、帰国枠で広尾を押さえておいて桜蔭に合格する子は何人もいるのです。

 

さらに、今はまだ難関校は英語入試に不熱心ですが、いずれそうした時代がきたときにはどうなるかわかりません。

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大穴その3 中高一貫校生対象英語塾

最難関校に進学するレベルの子達の中には、早くから英語学習に取り組んでいる子がたくさんいます。

小学6年生の時点で英検3級レベルなど大勢いるのです。

もちろん、帰国生ではありません。いわゆる「純ジャパ」の子たちです。

普段は普通に近所の公立小学校に通い、どこかの進学塾(大半はサピックス早稲田アカデミーでしょうね)に通い、中学受験勉強をやりながらも、どこかの英語塾を併用しているのです。よく時間があるものだと感心するばかりです。

これは、親の意識が高いのです。

英語は蓄積のみが物をいう教科です。

中学生になってから英語学習をスタートするのでは遅いのですね。

かといって、家庭で自学自習も困難です。親がネイティブ並みの英語力があれば別ですが。

しかし問題が一つあるのです。

小学生が英語を学ぶ塾は、いわゆる「英会話教室」ばかりなのですね。

楽しく歌を歌ったりゲームをしながら英会話を学ぶ。クリスマスやハロウィンで盛り上がる。

そうした「子ども対象英会話教室」を、意識の高い親は望んでいないのです。

きちんとした「英語力」を鍛えたいと思っているご家庭のニーズにこたえる塾が無いのが悩みなのです。

 

そこで、中高一貫校生に評判の英語塾、例えば「J PREP」や「平岡塾」や「SEG」などが、中学受験にも手を伸ばしたら面白いことになるのでは、などと夢想します。

 

さすがに中学受験のノウハウは皆無でしょうから、どこかの塾と手を組むしかないでしょうけれど。

 

気が付けば、最難関校に余裕で合格できる層がサピックスではなくそうした塾に集まっていた、そんな日がくるかも?