中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

学校名に国際がつく意味とは

前回、三田国際について書いていて、ふと気になったのです。

そういえば、学校名に国際ってつくところが増えたな。

そこで今回は、学校名に「国際」がついている学校について考察します。

※どの学校も持ち上げる意図も貶める意図もありません。単純に校名について私見をのべるだけの記事ですのでご容赦ください。

「国際」の意味

そういえば、「国際」という語句は、あまりにも当たり前すぎて、そもそもの定義や語源など気にしたことはありませんでした。

手元の「新明解国語辞典」にはこうあります。

(造語)自国の中だけにとどまらず、他の国と何らかのかかわりと持つこと

「国際交流を深める」

「国際感覚の欠如」

まあ予想通りですね。

ただし造語とありますので、漢語由来ではないことが確認できました。

 

「国際」の語源を調べると、当然ですが英語の「international」を日本語化したものです。

さらに掘っていくと、幕末におよびます。

1836年にアメリカの判事・外交官だったヘンリー・ホイートンによって『Elements of International Law』が著されます。

これが、中国在住の宣教師ウィリアム・マーティンによって漢訳され、『万国公法』のタイトルで出版、日本にも入ってきたのです。

『万国公法』では、diplomatic intercourseの訳語として「各国交際」という語句があてられました。

これが「国際」の語源です。

つまり「国際」という語句は、語源としては、多くの国・人々の関係と交流を示したのです。

この「国際」が、1900年代になると、internationalの訳語として使われるようになりました。

 

また、internationalという語句も実は造語です。

イギリスの哲学者・経済学者のジェレミーベンサムによって「inter」と「nation」を合わせて作られたといわれています。

 

internationalは形容詞ですね。

そこで、国際-〇〇の、〇〇の部分に何を持ってくるのか、そこが重要だと思うのです。

 

国際中学 /国際高校

こう名乗るのならば、その中学校・高校が、日本国内にとどまらず世界各国の中学・高校と関わりを持ち、交流を深めていることが前提だと思います。

 

◆世界各国の学校と単位の交換制度があり、自由に行き来できる

◆世界各国の学校と積極的な交換留学制度がある

◆門戸が世界中に開かれている

 

こうした学校でしょうか。

 

◆英語教育に力を入れている

◆帰国生入試を実施している

◆修学旅行はオーストラリア

 

こんな程度で「国際」を名乗るのはおこがましいというべきでしょう。

 

「国際」を冠した学校

 

思いつくままに首都圏の学校をいくつか列挙します。

 

1979 暁星国際高校

1986 関東女子高校 → 関東国際高校

1989 都立国際高等学校

2007 東京学芸大学附属国際中等教育学校

2008 県立横浜国際高校(単位制)

2015 戸板女子高校 → 三田国際学園 → 三田国際科学学園(2025)

2018 千代田女学園 → 武蔵野大学附属千代田高等学院 →千代田国際中学(2022) → 千代田中学校・高等学校(2025)

2018 法政大学女子高等学校 → 法政大学国際高等学校

2022 星美学園 → サレジアン国際学園

2023 目黒星美学園 → サレジアン国際学園世田谷

2023 東京女子学園 → 芝国際中学校・高等学校

2024 蒲田女子高等学校 → 羽田国際高等学校(2026中学校開校予定)

 

学校のHPに沿革を公表している学校もそうでない学校もあるので不正確ですが、だいたいこういった学校が思い浮かびました。

千代田国際のように、数年で校名が変更されるところもあります。在校生はさぞ落ち着かないでしょう。

 

 

国際バカロレア認定校

 

国際バカロレア(IB:International Baccalaureate)というのは、ジュネーブに本部のある組織が認定するもので、世界で通用する高校卒業資格と理解してもよいでしょう。

ただし、アメリカでは今ひとつ通用しません。

 

探究する人
知識のある人
考える人
コミュニケーションができる人
信念をもつ人
心を開く人
思いやりのある人
挑戦する人
バランスのとれた人
振り返りができる人

 

これが目標となっていて、なかなか理想的なのですが、日本の教育制度との親和性が高いとはいえないと思います。

 

ただし、本気でIB教育を実践し、かつ日本の1条校(日本の高卒資格が認定される)の学校を選べば、本当の意味で「国際教育」といえるかもしれません。

中高については、

MYP/11-16歳 (Middle Years Programme)
青少年に、これまでの学習と社会のつながりを学ばせるプログラム。どのような言語でも提供可能。

DP/16-19歳 (Diploma Programme)
所定のカリキュラムを2年間履修し、最終試験を経て所定の成績を収めると、国際的に認められる大学入学資格(国際バカロレア資格)が取得可能。原則として、英語、フランス語又はスペイン語で実施。一部科目は日本語で実施(デュアルランゲージディプロマプログラム:DLDP)

この2つを実施している学校ということになりますね。

 

浦和学院高等学校    埼玉県            DP

さいたま市立大宮国際中等教育学校    埼玉県        MYP/DP

晶平中学・高等学校    埼玉県         MYP/DP

筑波大学附属坂戸高等学校    埼玉県            DP

開智日本橋学園中学・高等学校    東京都        MYP/DP

玉川学園中学部・高等部    東京都        MYP/DP

東京学芸大学附属国際中等教育学校    東京都        MYP/DP

東京都立国際高等学校    東京都              DP

武蔵野大学附属千代田高等学院    東京都             DP

神奈川県立横浜国際高等学校    神奈川県            DP

聖ヨゼフ学園中学校    神奈川県            MYP

法政大学国際高等学校   DP

三浦学苑高等学校    神奈川県           DP
    

一都三県では、これらの学校になります。

 

今回のテーマである「国際」を冠した学校ばかりではないですね。

また、いわゆる「高偏差値=高難易度」の学校ばかりとはいえません。

日本の大学実績と海外大学実績を合わせて評価する必要があります。

 

 

今後

 

完全に私見です。

何の根拠も無い私の感想にすぎないので、そのつもりでお読みください。

 

今後は、「国際」を冠した学校は2つに分かれるような気がします。

 

上位校は、「国際」をつける学校が減る

下位校は、「国際」をつける学校が増える

 

「国際」を冠すると、手っ取り早くグローバルなイメージが生まれます。

ただ、本気で「国際化」を実践するのは困難です。

「日本式の教育」との親和性の問題もあります。

 

大切なのは教育の中身であって看板ではありませんから。