麻布中の受験にはこんな風評があります。
麻布中を志望すると潰しが効かなくなる
いったいどういうことなのか考察してみます
麻布中の入試問題は特殊なのか?
はい、そうです。
正確にいうと、特殊というより、思い切り思考力と記述力が必要な問題なのです。
今でこそ思考力系の問題は珍しくなくなりました。
その理由は三つあげられます。
一つ目は、差別化です。
一時期、中学受験の入試問題が、興味本位でマスコミによく取り上げられていました。
「大人でも解けない!」
「こんな細かいことまで!」
といった文脈です。それで中学受験生を否定的に扱っていたのです。
確かにその頃の入試問題は袋小路に入り込んだようなものが見られました。
しかし、こうした出題への対策は、実は簡単なのです。覚えるべき知識レベルを一段階上げるだけですから。そうすると入試問題もギアを一段あげてきます。すると塾もギアを上げるのです。このイタチごっこの行き着く先が、入試問題のいたずらな重箱隅つつき問題だったのです。受験生の得点が下から上までばらけてくれないと入試問題としては役立ちません。いわゆる正規分布してくれることが理想です。しかし単純な知識系の問題では、高得点に受験生が集中してしまいます。そこで思考力&記述力問題の増加だったのですね。
二つ目は、いわゆるPISAショックです。
PISAとは、OECD加盟国で定期的に行われている15歳を対象とした学力調査のことです。
この結果が日本は低かったのですね。教育水準の高いことが自慢の日本としてはまさにショックでした。この調査問題というのが幅広くリテラシーを問うもので、思考力&記述力がとわれるものだつたのです。そのため学校教育の見直しが進められ、中学受験の問題にまで影響が及びました。
3つ目は、公立中高一貫校の登場です。
公立という建前上、小学校の学習範囲を逸脱できないのですね。しかし小学校の学習内容では試験が成立しません。そこで適性検査という、思考力系のテストになったのです。この公立一貫校の併願校として一部の私立が、適性検査型入試を行うようになつたのですね。
しかし世の中がそう動く遥か前から麻布中は思考力&記述力系の問題を出題し続けてきました。
したがって、麻布を受験するのなら、記述問題の対策は必須です。それにはかなりの時間を割く必要があります。そのため、麻布の試験対策にかまけすぎて他の学校の試験対策が疎かになる、つまり潰しがきかなくなる、とそういうことが言われるのですね。
しかし、そもそもこの学校の入試問題を特殊な対策が必要な問題だと考えている段階で、この学校は向いていません。
なぜなら、麻布中の入試問題は特殊ではないからです。
時代の先をいく問題
私は、この学校の入試問題は時代の先を行く問題だと思っています。
最近でこそリテラシーという語句がよく聞かれるようになりましたが、そうした分析的な思考こそ、早くからこの学校が求めていたものです。
例えば、20年以上前の社会の問題にこんなものがありました。
とある川の下流域の町が、上流域で植林事業を行う理由を説明させるという問題です。普通なら、災害防止といった観点から記述しますよね。ほとんどの塾の出した解答例もそうしたものでした。しかしそれは正解ではないのです。私たちは普段の生活で、川によって生かされているなどという感覚はありません。しかし、川はいまだに物質循環、水循環の役割を果たしています。あらゆる文明が川の下流域に発達したのもそれが理由です。この植林事業を通して、今一度川の役割を再認識していく、それこそがこの事業の目的なのです。
そんな観点から見ることができるのか、麻布の要求する水準は相当高いことは間違い無いでしょう。
合格するためには
この学校を受験する生徒には、志望が揺らがない生徒が多いのが特徴です。他校にはない際立った校風が魅力的だからでしょう。(もっとも好まない受験生も多数いることも特徴です。カオスのような文化祭に行って拒絶反応を示した生徒も何人もいました)
したがって成績によらず受験していく生徒が多いのですね。開成に受かる力があるのに、その上に思考力と記述力を磨いて受験していく、そんな生徒が多数います。開成と麻布で偏差値を較べると、あきらかに開成のほうが難易度は高くなっています。それは真実です。しかし、開成に受かる実力がありながら、偏差値だけを基準に直前に麻布に志望を変更して失敗する生徒もいるのです。問題傾向がそこまで異なるということなのです。
麻布対策に時間を取られることを心配するなら、受験は回避するべきだと思います。開成、聖光、駒東といったラインナップの方が対策は立てやすいからです。しかし、どうしても麻布に進学したいのなら、あれこれ考えず、チャレンジするべき学校であると言えるでしょう。
その場合の併願校の王道は、栄光・海城でしょう。麻布対策で鍛える記述力が活かせますので。
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