9月に入りました。
入試本番まであと5か月!です。
いよいよですね。
ここで5か月の心構えや乗り切り方について考えてみましょう。
志望校について
すでに夏前の段階で、志望校については確定しているはずです。
しかし、思うように上がらぬ成績に、弱気の虫が蠢き始めてきます。
どう考えるべきでしょうか?
(1)第一志望校を変更する(下げる)最後のチャンス
もうすでに遅いのです。
変更するのなら、夏前に決断すべきでした。
しかし、なかなかその決心がつかなかったのですね。
もしかして塾の担当の先生から、「夏をがんばってみて様子をみましょう」などと言われていたかもしれません。
少しずるい言葉です。夏前の段階で、その生徒の夏の頑張りレベルの予想くらいつかなければプロとは言えないからです。
しかし、あと5か月となりました。
もし第一志望校を変更するのなら、今すぐ決断してください。
これが本当のラストチャンスとなります。
開成→駒東
聖光→浅野
豊島岡→洗足
渋谷渋谷→広尾学園
偏差値でいうと、5は下げないと、本当に下げたことにはなりません。また、開成→麻布では、問題傾向が違いすぎて下げたことには全くなりません。開成をそのまま受験すれば受かったかもしれない生徒が、麻布に下げて結局不合格になるのはよくある話です。
本人を交えて家族会議を開き、きちんと戦略を練り直しましょう。
(2)第一志望校は変えない
(1)で述べたことと矛盾しますが、本当は第一志望校は変えないほうがよいのです。なぜなら、後で必ず後悔が訪れるからです。
駒東に下げて合格したとき、「開成を受けていたら受かったかも?」と脳裏によぎります。これはもう仕方がないですね。そして、何となく釈然としない気持ちを引きずってしまう。実は子ども本人はすぐに吹っ切れます。吹っ切れないのは親のほうなのです。
こんな生徒を覚えています。
開成・筑駒と受験予定だった生徒です。
本人としては、東大の医学部が最終目標でした。親は筑駒に行ってほしかったのですが、子ども本人は開成に行きたかったのです。
しかし、直前になって怖くなったのですね。
2月1日に開成を受験し、2日には栄光を受験し、3日に筑駒を受験するときに、まだ1つも合格を手にしてません。開成も栄光も合格発表日が3日だからです。その状況で最難関の筑駒を受験するのには勇気が必要です。
結局開成をあきらめて駒東に切り替えました。「本当の目標は筑駒だから、その前に駒東で押さえておこう」という意図ですね。1日の駒東の合格発表は2日です。もし駒東が不合格なら、筑駒を回避して海城を3日に受験しようという作戦です。
結果は、駒東には合格しましたが、筑駒は不合格でした。
正直いって、駒東に逃げた生徒で筑駒に合格した生徒をほとんど知りません。筑駒の試験前日に駒東の合格を知ってしまった生徒(たぶん家でおめでとうムードが広がり、本人も安心している)と、まだ一つも合格を手にしていなくて背水の陣で試験に臨む生徒では、意気込みがまるで違うのです。筑駒の入試は1点勝負のせめぎ合い入試ですので、そうした意気込みで合否が分かれるものなのです。
さてその生徒は駒東に進学しましたが、母親はいつまでも「筑駒を受験するために駒東にしたの」と言い訳を口にしていました。
さて、この入試プランは本人にはあまり良い影響をもたらさなかったのです。
「開成を狙っていた俺が駒東に進学した」という謎のプライドが生じたのです。駒東生になりたくて必死に勉強してきた奴らとは俺は違う、というプライドです。そのため、無我夢中で勉強している姿を周囲に見せることが「みっともない」と思ってしまったのですね。たしかに成績は良い生徒でしたので、楽しい6年間を過ごしました。
さて、念願の東大理3の受験ですが、これも直前に怖くなってしまったのですね。医科歯科の受験に変更したのです。そして不合格でした。
某私大の医学部に進学します。
その私大もかなりの難易度でしたので、大成功です。
しかし、久々に会ったその生徒はまだこんなことを言っているのです。
「先生。俺の進学した大学って、全然有名じゃないんだね。この前田舎の親戚のところに行ったら、誰も知らないんだよ。やっぱり東大じゃないとだめだね」
そんなどうでもよいことにこだわるのです。
よほど理3を受験しなかったことに納得いかなかったのか、結局仮面浪人を2年続けて東大の理3にチャレンジしましたが、合格できませんでした。
勉強に無駄はないとはいうものの、この理3チャレンジはあきらかに無駄な2年間でしたね。同級生はその間に医学部で高度な勉強に邁進していたわけですので。
入試にIFはありません。
ありませんが、ふと考えてしまいます。
この生徒くらいの頭脳と学力があれば、あのまま開成を受験していれば合格できたのではないか、そしてそのまま東大理3も行けたのではないか、と。
第一志望校を変更する場合は、本気で「開成より駒東に行きたい!」と家族そろって思えるまででないと後悔が残ります。
(3)第二・第三志望校にフォーカスする
一般には、第一志望校の合格にフォーカスした学習をすすめるでしょう。もちろん間違ってはいないのですが、第二・第三志望校をなおざりにしてはなりません。
例えば女子学院を受けるなら、洗足学園や鴎友学園の合格が前提だからです。そうした学校に合格できる力があるから(そして実際に合格できるから)こそ、女子学院を受験する資格が生じると思います。
例えば開成を受験するなら、聖光や海城に合格できることが前提です。
たまに(よく)、こうしたことを言ってくる方がいるのです。
「先生。うちの娘は桜蔭中が第1志望校で、鴎友はあくまでもおさえの学校です。万が一桜蔭が不合格だったときだけ、3日の鷗友を受験するつもりなんです。記述の練習なんてしている場合ではないのです」
怖いですね。
桜蔭の合格発表は2日です。そこから数時間だけ記述練習をして何とかなる訳はありません。
これからの学習では、受験予定の学校のうち、すくなくとも第三志望校までは確実に合格できる学習を意識してほしいのです。
(3)午後受験はほどほどに
最近はやりの午後受験。
うまく受験プランに組み込めば、合理的な戦略が立てられます。
しかし、子どもの体力はどうでしょう?
4科目の試験を全力で集中すると、心身ともにぐったりと疲弊します。その状態で午後受験に向かうのです。
そんな日程を毎日続けられるわけはありません。
午後受験は、翌日の入試に響かぬよう、ピンポイントで1回入れるくらいにしておきましょう。そもそも連日午後入試に行かねばならぬような志望校の組み立て方は間違っています。
学習法
あれもこれもと欲張っても仕方がありません。
これからの学習の主軸は「過去問演習」につきます。
受験予定校の過去問はもちろんのこと、今年実施の様々な学校の入試問題を幅広く解くことをお勧めします。
入試問題には「流行」というものがあるのです。
志望校の過去問題を30年分入手してやらせていた家庭もありましたが、実に愚かなことです。
10年分で十分です。
ただし、社会科は5年分で十分です。古い問題はデータが古くて危険だからです。
そして最重要なのは、「間違えた問題はその場で解決する」ことにあります。算数なら解き方を確認する、理科・社会の知識なら覚える。
そのための過去問演習なのです。
何点取れたのかより、何点落としたか、どのように落としたか、そこに注目してください。
過去問演習のやらせ方についてはこちらに書きました。
※あたらしい教材に手を出さない
書店に行くといろいろ並んでいますが、無視しましょう。もうそんな時間はありません。