なぜシャーロックホームズ?
そんな本ばかり読んでるから勉強がすすまない!
そう怒る前にこの記事を読んでください。
受験生にだって実はお勧めなのです。
コナンドイルについて
1859生
1930没
コナンドイルが生きた時代は、まさに大英帝国全盛期、 1837年~1901年まで63年続いたビクトリア女王の時代に重なります。
コナンドイルの生涯については割愛しましょう。
この作家の他の作品はもう一つお勧めではありませんし、晩年は神秘主義に傾倒してしまいましたので。
やはりコナンドイルが創作したシャーロックホームズのほうが重要です。
シャーロックホームズの時代
そしてシャーロックホームズのシリーズは、1887 年 ~ 1927 年が舞台設定ですので、イギリス黄金期が時代背景なのです。
これこそが、このシリーズを読んでほしい理由です。
産業革命以降のイギリスの発展、アメリカの独立、そしてビクトリア時代。
世界史を理解するためには重要な時代ですね。
歴史的事件や戦争等についてはいくらでも本に出てきます。しかし、ビクトリア女王の時代のイギリスの生活や時代背景について、このシリーズほど読者の想像力を喚起してくれるものはないと思っています。
繁栄の時代は、貧困の時代でもあります。
労働者階級と貴族階級、ブルジョワジーとジェントリ、彼らの間をシャーロックホームズは自在に泳ぎまわり、事件を解決に導いていくのです。
中には、親のいない浮浪児たちも出てきます。また、職業婦人としてタイピストや家庭教師の女性も登場しますね。
ふだんの講義ではなかなか説明してあげられないことが、小説を読むことでなんとなくわかってくるものなのです。
例えば「青い紅玉」には、クリスマスのために、お金を少しずつ積み立ててガチョウを手に入れる男が出できます。中産階級の下の方の暮らしぶりが伺えるエピソードです。
その後ロンドンにでも行く機会があれば、さらに時代が感じられると思います。
ベーカー街はつまらぬ大通りなので行ってみなくてよいと思いますが、ロンドンのどうってことのない裏道がいいですね。今にも角を回って石畳に蹄の音を響かせながら馬車が走ってきそうです。
この通りがbaker streetです。「ここじゃない!」感が強いですね。ちなみに道の向こうの人だかりがシャーロックホームズ博物館で、ドア上部には「221B」の表示が。
ホームズの推理も見事で面白いのですが、ここではそれは取り上げません。あくまでも時代背景をリアルに感じ取ることのできる本として、このシリーズをお薦めしたいのです。
さらに、このシリーズにおける新大陸・アメリカの扱いが面白いですね。イギリス人から見たアメリカの立ち位置というのがぼんやりと見えてきます。こうしたことも、歴史を学ぶだけではなかなかわからないところです。
「5つのオレンジの種」には、アメリカの白人至上主義者の秘密結社であるKKKが出てきます。私は子どものころこの話で初めてこの団体の存在を知りました。いわばアメリカの暗部ともいうべき組織ですが、最盛期には数百万人の勢力を誇ったそうです。
また、「緋色の研究」にはアメリカにおける初期のモルモン教が出てきます。というより、主軸の背景として語られています。だいぶ偏見で歪められているのですが、逆に言えば、当時のイギリスがモルモン教をどのように見ていたかを反映していると言ってもよいでしょう。
※注意
シャーロックホームズのシリーズには、子供向けにやさしく書き改めたものが多数存在しますが、そうした本に絶対に手を出してはいけません!
せっかくの味わい深い時代背景の描写が全てカットされているからです。
時間の無駄となりますのでご注意ください。
※ドラマ・映画について
これも多数ありますね。なかには評判の良いものもあるようですが、やめておきましょう。ただの娯楽にしかなりませんので。まして、本を読む前に見るのは最悪です。
実は、2010~2017年にかけてイギリスBBCが制作した「SHERLOCK」はとても面白かったですね。舞台を現代に置き換えて、原作のストーリーを下敷きにした新作となっていました。主役の俳優が実に良かったのです。
おもわず撮影された場所を私は訪問してしまいました。
ドラマをご覧になった方ならわかると思いますが、何てことのない裏通りのここが現代版シャーロックホームズとワトソンが住んでいたアパートです。
もちろん、このドラマを見ても何の勉強にもなりませんのでご注意ください。あえて言えば現代イギリス英語の聞き取り練習くらいでしょうか。ものすごい早口で話すホームズのセリフが聞き取れたら大したものだと思います。