中学受験のプロ peterの日記

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【中学受験】入試に出る、日本の伝統文化 「お雑煮、作りますか?」(2024.9.23加筆修正)

※この記事の初出は2023.10.05です。2024.09.23にUPDATEしました。

日本の伝統行事・年中行事が徐々に失われつつあります。

時代が必要としないものが消えていくのは当然ですが、少々寂しい気がします。

今回は、そんな日本の伝統文化にまつわる話題です。

お雑煮を食べたことのない子どもたち

正月あけの授業でしたでしょうか、生徒たちに何気なく聞いてみたことがあります。

「みんな、お雑煮は食べたかな?」

質問の意図としては、お雑煮の地域性について話を発展させる目論見でした。

おおざっぱにいって、東日本は焼いた角餅にかつおだしの澄まし汁系、西日本は丸餅に味噌仕立て、さらに地域によってさまざまな特色があります。

そんな話から、食文化の地域性と広がりについて授業に入ろうという、いわば落語で言うところの枕のような話題だったのです。

 ところが、衝撃的な事実が判明しました。

生徒の中に、お雑煮を食べたことが無い生徒がいるのですね。それも何人もです。

べつに豪華な特別料理ではないのです。

お雑煮ですよ?

さらにリサーチしてみると、おせち料理は全員が食べていることが判明しました。

どう考えてもお雑煮よりもハードルが高そうなおせち料理を全員が食べていたことも驚きです。

みなさんはその理由がわかりますか?

私も、少し考えて、そのからくりがわかりました。

お雑煮は、作るのが面倒くさいから省略されているのに対し、おせち料理買ってきて蓋を開けるだけなので、簡単に正月の食卓にのぼるのですね。

おせち文化が途絶えていないことを喜ぶべきなのか、お雑煮文化が廃れていることを嘆くべきなのか。

一人の生徒は言っていましたね。

「うちのお雑煮は、麵つゆでつくるんだよ。」

麺つゆは便利で私も多用していますが、お雑煮は麺つゆでいいのか?と思ってしまう私は古い人間なのでしょうか。

私だって粉末だしや白だしを愛用していますが。

もっとも、この話題を保護者会等で披露したところ、保護者の皆さま(全員お母さま)の笑いをとれたのは、だいぶ昔です。いつの頃からか、この話をしても、「麺つゆ、なにがおかしいの?」という空気がただようだけなので、話題にすることはやめました。

こんな話をした後日、一人の女生徒が嬉しそうに寄ってきましたね。

「先生、お雑煮作ってもらったよ! 初めて食べたけど、おいしかった!」

「おお、それは良かったね」

「でね、お母さんが、次からは自分で作りなさい! だってさ」

「・・・。」

 

お雑煮って、そんなに作るのが大変な料理でしたっけ?

 

お雑煮の由来

 

本来、お雑煮は「ハレ」の日の特別な料理という意味合いがあります。

そもそも「餅」は、農耕民族である日本人にとって、特別な意味のあるものでした。それを神にそなえた野菜類や「若水」という年初に井戸から汲んだ水で煮込み元旦に食べる風習は、平安時代から続くものです。

箸も、両端が細い「祝い箸」を使いますよね。一方を人が、他方を神が使うという「神人共食」の考えを示します。

私も、普段はインスタントやレトルト食品を愛食しますが、押さえるべきポイントってあると思うのです。

来春、ぜひお雑煮をお子さんと食べませんか?

 

ところで、お雑煮については農林水産省のこのHPがおもしろいですね。

www.maff.go.jp

〇北海道:「鶏ガラだし雑煮」・・・砂糖入りで甘めのすまし汁

岩手県:「宮古くるみ雑煮」・・・餅をくるみだれにつける

〇愛知県:「名古屋雑煮」・・・角餅と餅菜だけのシンプル雑煮

京都府:「白味噌雑煮」・・・具材はすべて丸く切る

鳥取県:「小豆雑煮」・・・小豆を入れた雑煮

徳島県:「白味噌あん餅雑煮」・・・甘いあん餅が汁と相性抜群

〇福岡県:「博多のブリ雑煮」・・・大きなブリが入っている

〇東京都:「東京江戸雑煮」・・・コクのあるすまし汁

東京生まれの私からすると、味噌仕立てが不思議な気がします。また鳥取県のものは、「お汁粉だろ!」とツッコミたくなりますが、各地域の伝統の味って面白いですね。

 

お雑煮にまつわる入試問題

実はこんな問題が出題されています。

函館ラサール、2018年社会科の問題です。

 

まさき君:なあ、みんなのところのお雑煮ってどんな感じ?

まこと君:ぼくの住んでいるところでは、しょうゆベースのすま汁に角餅を焼いていれてるよ。
餅以外には( X )、ニンジン、ゴボウなどをいれてるなあ。
あ、そうそう。それらがはいったお椀のものをクルミのタレをつけて食べてるんだ。

しんご君:えっ!クルミのタレをつけて食べるの!? そんなの聞いたことないなぁ。
ぼくのところも、すまし汁に角餅を焼いていれてるけど、トリ肉に( X )、小松菜などがはいっているぐらいで、具はそんなにないし、そのまま何もつけないで食べてるよ。

たかし君:ふーん、いろいろなんだね。
ぼくのところは、白みそ仕立てで、煮た丸餅をいれてるよ。
具は( X )、ダイコン、ゴボウかな。

あっし君:ぼくのところもすまし汁だけどダシはアゴダシといわれているトビウオを乾燥させたものを使ってるんだ。
餅は焼いた丸餅で、トリ肉、ダイコン、( X )、ニンジンなどがはいってるなあ。

なおき君:ホントいろいろなんだね。
ぼくのところは、アズキの煮汁に煮た丸餅をいれててあまいんだ。

しんご君:えっ!それってぜんざいとかおしること変わらないじゃん。

まこと君:そうだよ。そんなでもお雑煮っていうんだ。

まさき君:ぼく地元の函館出身だけど、くじらの塩漬けやダイコンなど野菜がはいったくじら汁に焼いた角餅をいれてるなあ。

りょう君:おいおい、なに楽しそうに話してんだよ。

まさき君:えっ?みんなの出身地でのお雑煮について、どんな具が入ってるとか、どんな味付けになってるとかを話してたんだよ。

ひろし君:おもしろそうだなあ。ぼくたちにも話させろよ。

りょう君:ぼくのところの香川県では、白みそ仕立ての汁にあんこのはいった丸餅ががはいっているよ、
「うどん県」と発表するぐらいうどん好きの人が多くて、沿岸には工業地帯がひろがってるよ。

ひろし君:ぼくのところの長野県は海がないので、日本海から運んできた塩ぶりをいれたすまし汁に焼いた角餅がはいっているよ。
むかしは養蚕がさかんで、いまは[ ② ]。

たかし君:ひゃー、ひとくちにお雑煮って言っても、いろいろたくさんあるなあ。

まさき君:ところで、なおき君はぼくと同じ北海道身なのに、なんでお雑煮の中身がちがうんだろ。

なおき君:それはね、ぼくの先祖が( Y )から北海道にやってきて、もともといたところのお雑煮を伝えてきたからじゃないかなあ。

まさき君:( Y )って、どんなところ?

なおき君:ぼくの先祖が住んでいたところには日本有数の砂丘があって、らっきょうや日本なしの生産がさかんなんだ。
また松葉ガニの水あげが多いね。
西部には『ゲゲゲの鬼太郎』の作者として有名な水木しげるさんの生まれたところがあるんだ。

しんご君:そうかぁ。いま住んでいる地域の人達が全郁同じお雑煮を食べているわけでもないっていうことだね,

たかし君:なんかお雑煮の話してたらおなか空いてきちゃった。
今日の寮の献立なんだったっけ?

あつし君:しまったぁ!チェックしてなかったあ。
苦手のだったらヤダなあ・・・。

まあ問題自体はそんなに難しくはありません。

出身地について答えさせたり、各地域に関する地理について出題されたり。

ところで、( X )にあてはまる食べ物はわかりますか?

ヒントその1 野菜

これで答えられたらすばらしい。

ヒントその2 イモ類

これならわかりますよね。サトイモです。

サトイモは、ジャガイモやサツマイモよりはるかに古い歴史があるイモです。なんと縄文時代にさかのぼるのです。

東南アジアで主食とされていた「タロイモ」の親戚ですね。

そんなところから日本人のルーツにまつわる出題なんてあったら素晴らしかったのですが、さすがにそこまでは出題されませんでした。選択肢から選ぶだけでしたね。