中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

もし進学できるなら、開成、麻布、武蔵、筑駒、駒東、栄光、聖光、渋幕、渋渋、海城、どこがいい?

今回は、のシミュレーションです。

開成・麻布・武蔵・筑駒・駒東・渋幕・渋渋・栄光・聖光

もしどこでも入れるとしたら、どこの学校に進学すべきなのか?

「そんなの勝手にしろ!」と怒らないでください。あくまでも夢を語る回ですから。

※特定の学校を持ち上げるつもりも貶めるつもりもありません。あくまでも私の主観(多分に偏見)にもとづく意見にすぎませんので。

 

これらの学校を取り上げた理由

進学校(大学付属ではない)

〇高偏差値・・・第一志望となる学校

この9校を取り上げた理由は、以上の2点だけです。

 

シンプルに、サピックスの偏差値60以上としたかったのですが、そうすると、取り上げた9校以外にこれらの学校が対象となります。

 

海城中学校 2回    2月3日    63
早稲田中学校 2回    2月3日    63
栄東中学校 東大特待Ⅰ(算数1科型)    1月    62
広尾学園中学校 医進・サイエンス    2月2日午後    61
東京都立小石川中等教育学校 一般枠    2月3日    60
巣鴨中学校 算数選抜    2月1日午後    60
筑波大学附属中学校    2月3日    60
郷中学校 3回    2月4日    60

 

いちおう今回は進学校だけと思っていたので、早稲田中学は入れませんでした。早稲田大学へ167名も推薦されますので。

また、公立中高一貫校は同じ土俵で語りにくいので入れていません。

筑波大付属は、男子の定員が40名ですので、こちらもちょっと少ないなあ、ということで入れませんでした。

栄東中の東大特待は、特待生のみ30名募集という、いわば特殊な入試ということで入れませんでした。

午後入試の学校は募集定員が少なすぎるため入れていません。巣鴨中の算数選抜は20名、広尾学園医学サイエンスも35名と少ないですね。

少なくとも1回の入試で100名以上の募集定員でないと、まともな偏差値計算はできないからです。

郷中の3回も定員40名です。

複数回入試の学校は、一律で1回目入試の偏差値で見ています。3日の海城中は入りません。

 

最近は、複数回入試、さらに午後入試も当たり前となりました。

受験生からすると、受験機会が増えるということで歓迎できる話だと思います。

しかし、その反面、一回あたりの募集定員が少なすぎて、いわゆる「大番狂わせ」が起こりやすくなるという弊害も生じています。

また、学校によっては、募集定員を少なくすることで塾が算出する偏差値を上げる操作をしているのでは? などという疑惑(下衆の勘繰り)まで生じています。

教育機関である学校がそんな姑息なことするわけはない、と思いたいのですが、合格者数を極端に絞り、あとから大量に繰り上げ合格を出す学校を見ていると、疑念が生じるのも事実です。

 

さて、サピックス偏差値60で絞ってしまうと、第一志望校としてよく名前があがる学校が漏れてしまいました。そこで、59以上の学校を見てみます。

 

早稲田中学校 1回    2月1日    59
海城中学校 1回    2月1日    59
広尾学園中学校 2回    2月1日午後    59
広尾学園小石川中学校 3回    2月3日午後    59
栄光学園中学校    2月2日    59
慶應義塾湘南藤沢中等部 一般    2月2日    59

 

上述した基準により、早稲田・慶應湘南藤沢・広尾・広尾小石川は外します。

この考えだと、海城中を外すわけにはいきませんね。

入れることにします。

各学校の偏差値比較

開成  S-68   Y-71   N-72

麻布  S-61   Y-66   N-67

武蔵 S-59   Y-65   N-67

筑駒  S-71   Y-73   N-72

駒東 S-59   Y-66   N-65

渋幕 S-65   Y-70   N-69

渋渋 S-61   Y-67   N-69

栄光 S-59   Y-66   N-67

聖光 S-66   Y-70   N-69

海城 S-59   Y-64   N-64

 

おそらくこれらの学校の受験を考える方の大半はサピックスのテストを受験すると思われますので、サピックス偏差値をベースに話をすすめます。

もちろん四谷大塚日能研からもたくさん合格していることは知っていますが、こうした偏差値というのは、母集団によって精度がかわります。

偏差値65以上は上位6.68%、偏差値70以上は上位2.28%となりますので、もうこうなると偏差値による議論があまり意味をもたなくなってしまいます。

例えば、サピックスの偏差値では50となっている中央大附属横浜(1回)は、日能研では58,四谷大塚では57となっています。

偏差値からうかがえる母集団の差は、サピックス四谷大塚日能研でだいたい7~8相当と考えることができるでしょう。

例えば駒東を見るとそうした傾向がうかがえますね。

ところが、開成では3~4、筑駒にいたっては1~2しか差がありません。

筑駒合格者数を見ると、サピックスは98名、四谷大塚は39名、日能研は8名となっています。四谷大塚はともかく、日能研の合格者数では、筑駒の80%偏差値はまともに計算できないと思うのです。

まあそれを言い始めると、少なくとも3桁の合格者がいないとこうした数値は算出できなくなってしまうので、各塾は工夫をこらして精度を高める工夫をしていると思います。

 

偏差値と学校選びの関係については、こちらの記事で詳しく書きました。

peter-lws.hateblo.jp

 

東京大学現役合格率の比較

なにも東京大学ばかりが良い大学などというつもりはありません。わかりやすい指標として注目しているだけです。

 ◆東大に合格できるレベルの生徒が集まっている

 ◆東大に合格するための努力をした生徒が多い

 ◆東大合格レベルの生徒を指導できる先生がいる

以上3点には間違いないですから。

現役合格者数を卒業生数で割ってみました。

★筑駒 43.13%(69/160)

1.聖光  37.55% (86/229)
2.灘    32.57% (71/218)
3.開成  29.10% (117/402)
4.桜蔭  23.21% (52/224)
5.栄光  20.22% (37/183)
6.渋渋  18.56% (36/194)
7.日比谷16.40% (52/317)
8.駒東  15.86% (36/227)
9.西大和15.54% (53/341)
10.渋幕 14.78% (51/345)
11.浅野 14.45% (37/256)
12.海城 13.29% (42/316)
13.麻布 12.75% (38/298)
14.久留米大学附設12.32% (25/203)
15.ラ・サール12.06% (24/199)
16.筑附 12.02% (28/233)
17.女子学院 11.85% (25/211)
18.武蔵 11.70% (20/171)
19.横浜翠嵐 10.69% (37/346)
20.早稲田 10.49% (32/305)

※筑駒は卒業生数を公表していないので、中高の募集定員の160名を分母とした仮の数値なので分けて表記しました。

※高校からの学校および首都圏以外の学校は今回は検討しません。

それにしても筑駒は驚異的ですね。仮の数値といえども他を圧倒しています。

また、ベスト20に、桜蔭・女子学院と女子校が2校入っているのもすごいですね。

聖光の順調な躍進ぶりも巷の話題となっていました。

塾いらずで東大へ合格できる指導、というのが学校の自慢です。

もっとも教え子の聖光出身者に聞くと、同級生でも塾・予備校に通っている生徒はけっこういるとのことでした。

 

こうしてみていると、やはり伝統校は強いですね。このリストの中で新しい学校といえば、1983年に高校を開校した渋谷幕張と、1996年の渋谷渋谷くらいです。

※こうした情報は必ず学校の公式HPの沿革を調べるのですが、渋谷渋谷はHPのどこにも沿革が載せられていません。以前に調べたときも見つけられなかったことを思い出しました。

渋谷渋谷の前身となる渋谷女子高等学校は1924年の開校です。その学校法人が途中で渋谷教育学園と改組して現在に至るのですね。

渋谷渋谷は、まさにこの渋谷女子高等学校の敷地をそっくり利用して作られた学校ですので、直系の子孫?といえるでしょう。

渋谷渋谷としては、この渋谷女子高等学校のことを学校の歴史には載せたくなかった理由でもあるのでしょうか。

同じように1918年に開校した順心女学校を2007年に改名共学化した広尾学園が、きちんと沿革に順心女学校から載せているのとは対照的です。

 

もし中学選びの基準が東大合格率のみであるのなら、筑駒・開成・聖光、この3校で決まりですね。

 

学校の敷地面積の比較

男子ですからね。

やはり中高生になったら思いっきりスポーツに打ち込みたい、そう考えている子も多いでしょう。

そこで、各校の敷地面積を確認してみました。

栄光 11.3万㎢

渋幕 6.5万㎢

筑附 5.2万㎢

聖光 4.9万㎢

筑駒 3.4万㎢

武蔵 3.0万㎢

開成 2.5万㎢

海城 2.1万㎢

麻布 2.0万㎢

駒東 2.0万㎢

渋渋 0.35万㎢

都内の公立小学校の校地がおよそ1万㎢といわれていますので、まあ2万㎢もあれば都内では十分というべきでしょう。

それにしても栄光学園の11.3万㎢はすごいですね。

学校も自慢のようでHPにはこうありました。

校地: 113,000平方メートル
(首都圏中高一貫校の平均敷地面積:27,700平方メートル)

総建坪:14,300平方メートル
南棟・北棟・西棟
聖堂棟・第一体育館・第二体育館・大講堂
西校庭・中校庭・東校庭
トラックフィールド・サッカーコート・サブサッカーコート
テニスコート(7面)
野球場

本格的な陸上競技用のトラックフィールドに野球場とサッカーコート、テニスコートが7面にさらにミニサッカーコートまであります。

ekh.jp

実は校舎も素敵です。2017年にOBの隈研吾氏の設計で建設されました。木をふんだんに使用した2階建ての校舎は、海の家のようにリラックスできる空間を目指したそうです。

私は、この環境だけでもこの学校を選ぶ理由になると思っています。

 

筑波大付属と筑波大駒場の校地が広いのは、やはり国立パワーとでもいうべきでしょうか。

筑駒については、もともと 東京農業教育専門学校附属中学校として1947年に開校したのがルーツですので、校地が広いこともうなずけます。

また、学校にほぼ隣接している目黒区立駒場野公園にある「ケルネル田圃」での水田実習も名物です。

渋谷渋谷の面積は概算ですが、予想通り(予想以上)の狭さです。

まあこの学校に広いグラウンドを求める需要は無いのかもしれません。

建物は地上9階地下1階で、栄光とは真逆のコンセプトですね。栄光は3階建てを2階に減らしたそうですので。渋谷と大船ですから、これはやむを得ないところです。

そのかわり、川崎市多摩川べりにグラウンドを持っています。南武線の宿河原ですね。多摩沿線道路をはさんだ向かい側にクラブハウスの建物があります。

そういえば麻布も多摩川の鵜木にグラウンドを持っています。

 

授業時間数比較

まずは年間授業時間数を見てみましょう。

1コマ50分としたコマ数です。(ほとんどの学校は1コマ50分ですので、それ以外の時間の学校は換算しました)

海城・・・1296時間

渋幕・・・1260時間

聖光・・・1260時間

開成・・・1250時間

駒東・・・1188時間

武蔵・・・1188時間

麻布・・・1152時間

栄光・・・1152時間

渋渋・・・1138時間

筑駒・・・1014時間

公表していない学校もあるので、あくまでも「およその目安」程度にお考えください。

 

ところで公立中学校は年間1015コマ(1コマ50分)と決められています。

国立の筑駒がそれに合わせているのは納得です。

リストにあげたような学校に進学する生徒の場合は、年間授業時間数が長いから選ぶ、短いから避けるということではないでしょう。

どちらかといえば生徒の自主性にまかせている学校ばかりですね。

 

ちなみに授業時間数の多い学校は1600時限前後の授業を実施するようですが、偏差値を見ると・・・。

 

鉄緑会の在籍者比較

鉄緑会のHPによるとこうなっていました。

(2024年5月現在)
開成    1119 名
桜蔭    890 名
筑駒    597 名
麻布    512 名
海城    509 名
駒東    330 名
筑附    439 名
豊島岡    457 名
女子学院    292 名
雙葉    260 名
渋幕    303 名
渋渋    273 名
早稲田    298 名
聖光    114 名
栄光   101 名

 

筑駒の在籍生徒数は840名(実際はもう少しいる)ですので、鉄緑会通塾率(鉄緑会在籍数を生徒数で割った)は71%にもなってしまいます。これは6学年トータルの数値ですので、高3になるともっと跳ね上がるかもしれません。

開成は2100名在籍のようなので、53%です。

桜蔭は生徒数が1410名なので63%

麻布は生徒数が1600名として32.5%

1つの塾に生徒の過半数が通うというのは、やはり異常と言わざるを得ないですね。もちろん鉄緑会は素晴らしい塾なのでしょうし、生徒も楽しく通っているとは思いますが。

この数値を見ると、せっかく授業時間が少ない筑駒の生徒が、結局は塾通いをして東大を目指しているのかと思うと少々がっかりな気もします。

それにしても、栄光や聖光からも通っているのですね。聖光がある根岸線山手駅から鉄緑会がある代々木駅までは54分。学校→駅、駅→塾 の時間を考えると、1時間以上は確実にかかります。

栄光も大船駅から15分はかかりますからね。電車の時間が53分としても、1時間10分以上の通塾時間です。

もしかしてご自宅が新宿近くなのかもしれませんが、それにしても何かが間違っています。

何が何でも、何を犠牲にしても東大! というお考えなのか。あるいは学校が何もしてくれないから仕方がないのか。

 

結論

もちろん出ません。

◆学校に何を求めるのか

◆登校時間

この2つはご家庭によってさまざまですので。

もし私が相談されたなら、

「50年後に母校を振り返ったときに、楽しく懐かしく思える学校」

「受験生本人が、将来自分の息子を絶対に通わせたいと思える学校」

を基準にするようにアドバイスします。

入学前にこの2点を考えるのは困難ですが、要は長期的視野を持って学校を選んでほしい、ということですね。

 

ときれいにまとめたいのですが、「お前はどう思ってるんだ!」と聞かれることも多いので、「私なら」と思う学校を2つだけあげてみます。

私は通学時間を重視しています。

何せ6年間毎日のように通うのですから。

そこで、「もし自由に住む場所を選べるのなら」と考えてみたのですが、

◆麻布

◆栄光

でしょうか。

もし麻布なら、歩いて通えるところに住みたいです。麻布がある丘の周辺は、「超」高級住宅地です。そんなところに住んで、歩いて麻布に通学する。そんな青春を送りたかったなあ。

あるいは、逗子か鎌倉に住んで栄光も素敵です。鎌倉から大船まで2駅8分の距離です。JR横須賀線は逗子・鎌倉・北鎌倉・大船が隣です。北鎌倉に住めば1駅ですね!

海城も渋渋も良い学校だとは思うのですが、近くに住みたい街ではないです。青山のツインタワーに住んで渋谷渋谷に通う、などというのもなかなか素敵ですが、私の趣味ではないかな。

駒場に住んで筑駒・駒東というのも悪くないですが、そのまま東大駒場に進学できることが前提です。そうでないとちょっと嫌ですね。

すいません、どの学校が良いのかの議論が、どの町に住みたいのか、の議論にすり替わってしまいました。