中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】学校選びに役に立つ、文化祭の注目ポイント

9月から10月にかけて、各中高の文化祭・学園祭のスケジュールが目白押しでしたね。みなさんは行かれましたか?

今回は、文化祭が学校選びの役に立つ、という話です。

学校にとって文化祭の意義

 文化祭(この記事では、学園祭も文化祭に用語統一します)は、中高にとってどんな意義があるのでしょう?

 

◆生徒の自主性を促す

◆クラブ活動の集大成の発表の場

◆在校生が楽しむイベント

◆生徒の保護者へのお披露目イベント

◆学校と保護者がつながる場

◆外部に対するアピール

◆志望者を増やすための宣伝の場

◆生徒同士の結束を強める

◆他校生徒との交流の場

 

ざっとこんなことが思いつきますね。

学校にょっては、そのどれを重視しどれを軽んじるのかによって、文化祭の様相は大きく異なります。

文化祭分類

かなり乱暴ですが、このように整理してみました。

Aにあてはまる典型的な学校は麻布学園です。

ここの文化祭は、一言でいえば「カオス」です。

ほとんど大学学園祭のノリですね。

運営は完全に生徒の自主運営ですし、広く一般に公開しています。

 

Bの学校は、一番多いと思います。文化祭を、「外部へのアピール」のツールとしてとらえているのですね。とくにその学校を志望する受験生へのアピールを重視しています。お行儀のよいプログラムが並び、受験生の小学生も参加できるようなものがたくさん用意されています。もちろん学校の先生方がきちんと管理しています。

Cの学校は、放任でありながら、とくに外部にアピールしようというほどではない学校、たとえば女子学院とかでしょうか。まあ女子校ですから麻布のようなひどいことにはなっていませんが、あえて外部に学校を「良く見せよう」という意識は無さそうです。

Dの学校は、これも多数あります。昔見たことのある筑附がこんなかんじでした。今は違うかもしれません。その他にも、保護者の積極的な関与を求める学校はこちらに入るでしょう。ある男子生徒のお母様は、文化祭の焼き鳥屋台を担当したため、冷凍肉を串に刺す作業で手が霜焼けになったと笑っていました。麻布の生徒が聞いたら目を丸くしそうなエピソードです。

 

見るべきポイント

 

その1 校舎の様子

 校舎内を自由に歩き回れる唯一の機会です。教室や廊下、特別教室やグラウンド、体育館や裏庭、普段公開されていないような箇所まで歩き回ってみましょう。

建物の立派さや設備の充実ぶりに目を奪われがちですが、ここでは「全体の雰囲気」のようなものをつかんでみてください。

 

 私が訪れた学校には、近代的なガラス張りの校舎・陽光の入る明るいカフェテラス・広いロビー等が自慢の学校がありました。まっすぐ伸びた広い廊下が端まで見渡せます。体育館も外廊下から見下ろせる作りですし、体育室もガラス張りでした。

おそらく、ほとんどの保護者は好印象を抱くでしょう。

しかし、私は自分が生徒だったら、ここには通いたくないな、と思ってしまったのです。先生に常に監視されているようで、何か落ち着かないのですね。これは私が日陰者だから?

 一般に、歴史のある古い校舎を持つ学校ほど、校舎の作りに余裕があるというか、無駄な作りとなっているというか、合理主義一辺倒でない雰囲気を感じます。

 しかし、なにも古い学校ばかりが良いということではありません。新しい校舎を持つ学校にも、「わかっている」学校も多くあります。

ある学校は、近代的な新しい校舎なのですが、あちらこちらに、一見無駄に思えるスペースがあるのですね。廊下も直線ではなく、クランクのように曲げられています。そんな角のスペースに、何気なくベンチが置かれていたりもします。校舎入口ロビーにも、カフェテリアのようなテーブルと椅子が置かれています。生徒達が自然と座って談笑できるようなスペースが意図的に作られているのです。校舎の設計を考えた方が、「学校空間の役割」をよく理解されていたのでしょう。

 

 私の個人的な見解としては、思春期の生徒が集う「学校」という場は、彼らの社会生活の全てといってもいい「場」だと思っています。だから、そこには「光」と「陰」の両方が必要だと思っています。あまりにも見通しの良い、教師の目が隅々まで届く学校よりも、教師の目の届かない(と生徒が感じる)場所もまた必要だと思っているのです。

例えば、飲食店で席を選ぶ場合、普通のテーブルよりもBOXシートのほうが落ち着きませんか? 病院の待合室のような空間よりも、裏路地に面した喫茶店(今はもう見かけませんが)のほうが落ち着きませんか?

そんな感覚でしょうか。

 

文化祭に訪れた際には、そんな「言葉にはしづらい」空間の様子に注目してみましょう。

その2 壁の掲示

 文化祭のために全ての掲示物を撤去していることはなかなか無いと思います。普段から貼りだされているような掲示物が垣間見られるのも注目ポイントです。

 

その3 集まっている受験生と保護者、在校生の保護者

 そこに来ているということは、みなさん同様、その学校の受験を考えている親子です。もしかしてやがては同級生になるかもしれない親子です。また、在校生の保護者の様子も学校のカラーを反映しています。失礼のないように、そっと様子をうかがってみてください。

在校生の保護者が、あまりにも適当な服装の方ばかりだとがっかりします。自分の子どもが日ごろお世話になっている学校を訪れたのです。先生方にもお会いすることもあるでしょう。いくら「お祭り」といえども、失礼のない最低限度の服装というものはあると思います。

また、受験生親子も同様です。いずれお世話になるかもしれない学校に「その服装」で来たんだ、と驚くような方もいますね。もちろん子どもも同様です。

 

もし違和感しか感じないようならば、その学校はもしかして「合わない」学校かもしれません。

 

あ、もちろん、堅苦しい「お受験スーツ」で集え、といっている訳ではありません。そんな文化祭見たことは無いですが、もしあったら、これも「違和感」しか感じないでしょうね。

 

その4 教師の様子

 上述したA・Cのタイプの学校だと、そもそも教師の姿はほとんど見かけません。むしろ他の客に混ざって、楽しそうに展示をのぞいて歩いている先生を見かけるかもしれませんね。私はそういうのは微笑ましくて好きですね。

ある女子校では、校長先生(男性)が笑顔で教室の展示を見てまわっていて、生徒達もフレンドリーに迎えていました。

また、ある学校では、講堂の生徒達の出し物の間に、ちゃっかり教師有志によるバンドが混ざっていて、大盛り上がりのステージとなっていました。

 

反対に、B・Dのタイプの学校は、先生がきちんと目を光らせて生徒を統率していることと思います。その統率ぶりを見てみましょう。

ある学校では、文化祭開始直前に、制服姿の生徒達を一列に並ばせて、先生が訓示をしている光景を見ました。おそらく、お客様をお迎えする際の注意事項等を述べていたのだと思いますが、私が連想したのは軍隊でした。直立不動の新兵たちに鬼軍曹が吠えている、あの光景に似ていたのです。

また、先生が大声で生徒をしかりつけている、そんな学校を見たこともあります。

説明会では見ることのできない「素」の教師の様子が垣間見られるのも文化祭ならではです。

 

その5 在校生の様子

 もちろんこれがメインです。生徒の素の姿が見られます。もちろん文化祭仕様に、普段よりも異なる様子・テンションであることは割り引きましょう。髪の毛を金色に染めた、一見「やんちゃ」に見える在校生が、小学生に向けて熱く天体について語っている姿など見ると、学校に対する評価が少し上がりますね。

 

その6 教師と生徒の人間関係

 これは文化祭のときの話ではないのですが、某私立高校を訪れたときのことです。時間帯は放課後とあって、残っている生徒は多くはありませんでした。学校の先生が教室を案内してくださいました。ある教室のドアを開けると、数人の女子生徒が残ってだべっていたのですね。スカートも短い、まさに「今どきの」女子高生です。

「先生、どうしたの?」

「いや、ちょっと教室を案内してるんだよ」

「あ、私たちが可愛いから見に来たんでしょ?」

「どこがだ?」

楽しく笑い合う様子がとても自然で、普段からの教師と生徒の良好な関係が垣間見えた気がしました。この生徒たちは、お世辞にも躾がなっているとはいえませんでしたが、机の上に座ったまま、部外者の私が帰る時にも元気に手を振ってくれました。

 

もしかして文化祭で、生徒と教師が話している姿を見かけることがあるかもしれません。そうしたところに、学校の本質が垣間見えることでしょう。

 

注意

 

多くの学校の文化祭は、定員枠が設けてあり、申込制となっています。申し込み多数の場合は抽選となっているところもあります。コロナを契機に、「密」を避ける目的で厳格な定員制に移行した学校も多いです。

在校生ですら、数枚のチケットしか割り振られていないのが普通です。とくに女子校は全てがそのスタイルでしょう。

 

ある生徒は、その学校を熱望していたのです。しかし、6年秋に行われた文化祭の「チケット抽選」に洩れてしまったのです。4・5年生のときには行くチャンスが無かったのですね。結局その学校の受験をあきらめました。

お母様曰く、「ご縁が無かったのです」

 

そんなことはありません!

 

文化祭の抽選に漏れることと「ご縁がある」ことには関係ないのは当たり前です。

でも、その「当たり前」が「当たり前」ではなくなっているところに、入試を控えた受験生を持つ親子の不安な気持ちがあるのですね。

ばかばかしいとお思いですか?

 

・文化祭で「うちに来なよ」と声をかけられたことで発奮した生徒

・その学校のロゴ入りエンピツやノートを大事に飾り励みとした生徒

太宰府天満宮のお守りをもらいに九州まで足を延ばした父親

 

そんな話はいくらでもあります。

 

だからこそ、文化祭の抽選に漏れたくらいであきらめないでほしいと思います。

でも、行くなら、4年生・5年生のときに行っておきましょう。