中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】良い塾を見極めるための7つの質問

中学受験のための塾を探している

今通っている塾からの転塾を考えている

 

いくつかの塾を回ってみましたが、どれも良さそうな気がします。

いったいどの塾を選べばよいのでしょうか?

 

今回は、そうした塾を見分けるための、7つの質問を紹介します。

これらの質問を塾にしてみて、その反応をじっくりと検討しましょう。

 

質問その1 教室を見せてください

塾を訪ねるのは、昼間=生徒が来る前 の時間帯にしましょう。

生徒の授業時間に訪ねたとしても、教師は授業で出払っていますので、話は受付スタッフからしか聞けません。

また、「入塾説明会」のようなイベント的な説明会ではないときに訪れることを推奨します。

塾によっては、「入塾説明会のプロ」のような人材が、各教室を巡回しているのです。彼らは話のプロだけあって、実に説明が巧妙ですが、何の参考にもなりません。

 

さて、教室を見せてもらったら、こんな点をチェックします。

◆トイレの数・清潔さ

◆教室の空調・換気・照明等の環境

◆机・いすの大きさ等

◆黒板・ホワイトボードの様子

◆教室の数

◆壁の掲示

 

休み時間にトイレの前に行列ができる→トイレを我慢する

こんなのは嫌ですね。

塾によっては、それを避けるために、授業中に自由にトイレを使わせているところもあります。そこも確認してみましょう。

 

教室環境については、最低限で手を打ってください。学校レベルの環境を求めるのは無理というものです。授業料を2倍支払う覚悟があれば別ですが。

※教室環境を売り物にしている塾も少数存在します。高額です。もし高額でないとすると、どこかにしわ寄せが行っているのです。

 

机・椅子については、ほとんどの塾が学校と同じものを使っているはずです。それが最低ラインです。

 

黒板・ホワイトボードがきちんと清掃されていない塾は、まともな清掃が入っていない証拠です。黒板・WBは授業にとって命のようなもの。ここが蔑ろにされている塾の授業は推して知るべしです。

 

教室の数も聞いてみましょう。

後で聞く生徒数と合わせて、1クラスの生徒数もわかりますし、塾の勢い(生徒が増加傾向・減少傾向)もわかります。

 

壁の掲示物はとても貴重な情報源です。

◆期限切れの文化祭ポスターや古いお知らせが貼りっ放しになっている。

◆生徒向けの注意が高圧的

◆生徒の成績を実名で貼りだしてある

こうした塾は止めるべきでしょうね。

とくに座席表や順位表等、生徒の氏名が無造作に貼りだしてあるような塾は、個人情報保護の観点が欠落しているので要注意です。

 

質問その2 教室長の先生の担当教科は?

教室長の先生との面談を予約してから訪問してください。

もしそれがむずかしければ、せめて教師と面談してください。

 

そこで聞いて欲しいのは担当教科です。

もし複数教科を担当していたら、その塾はやめましょう。

経験上、複数教科をきちんと指導することはほぼ不可能だからです。

1教科だけだって大変です。

入試問題研究ひとつとっても、どう考えても時間が足りません。

 

さらに、教科を教えてもらったら、どうしたらその教科ができるようになるのかを尋ねましょう。

そこで熱心・親身に教科の学習のやり方等について語る先生なら安心できます。教科の勉強法について聞かれるのが、一番教師の本能をくすぐるからです。

ここで通り一遍の答えしか出てこないようなら、やめたほうがよいでしょう。

 

また、志望校の1つの名前をあげ、「今年の〇〇中学の問題は難しかったですか?」と重ねて質問してください。

塾の教師なら、その校舎の受験生が受けそうな学校の問題は全て解いているのが常識だからです。私に言わせれば、毎年100校分くらいの入試問題を研究するのは当たり前なのですが。

ここでまともな答えが返ってこないようなら、その教師は頼れる教師ではありません。

 

※社員に教師職がいない塾

 

本当は、教室長=教師 でなければならないのです。

生徒の様子は、授業にはいることで初めてつかめるからです。

学校についても、入試問題の研究をしないことには何もわかりません。

ただし、一部の塾では、授業は非常勤講師(契約社員)が行い、教室運営や進路指導・学習相談等は社員の事務職が対応する分業制をとっているのです。

私が知っているのは日能研ですが、その他にもあるようですね。

しかしながら、授業を担当していないとしても、勉強熱心な社員なら信頼できるかもしれません。

 

〇中学校の説明会には積極的に足を運んでいる

〇その教室から多く受験する学校の入試問題は4科目分きちんと解いている

〇生徒の成績・得点力・志望校・宿題状況等をよく把握している

 

これなら安心です。

 

質問その3 先生の人数、生徒数はどれくらいですか?

これを尋ねることで、その教室の規模がわかります。

教室数にくらべてあまりに少ない生徒数だと要注意です。

 

ここで、非常勤アルバイト講師の人数・割合等を聞くことは無意味です。

研鑽不足の社員教師よりも、非常勤学生アルバイトの方がはるかに優秀であったりするからです。

「アルバイト講師がいない塾のほうが良い塾」という考えは完全に誤解です。

 

質問その4 この校舎から最も多く合格する中学校は?

多くの塾では、全校舎の合格実績を合算した数字を公表しています。

そこで、その校舎の合格実績を聞いてみましょう。

その場合、広告宣伝として目立つ最難関校の実績よりも、最も多く合格する学校を聞くほうが有効です。

その塾・教室のレベルがつかみやすいからです。

また、学年人数と合わせれば、その校舎の実力が判明します。

 

さらに、近隣の他の教室や、他の塾の合格実績をわざと話題にするのも有効なやり方です。

その時の反応で、塾のスタイルがわかります。

校舎間の合格実績を競わせているような塾は止めたほうが賢明です。

 

また、他塾の悪口をいうような教師は人間性に疑問符がつきます。

 

質問その5 テキストは何を使っていますか?

塾で使用している教材は、おおむね以下のとおりです。

(1)自社開発のテキスト・・・SAPIX四谷大塚日能研・栄光ゼミナール等

(2)四谷大塚の「予習シリーズ」を採用・・・早稲田アカデミー・臨海セミナー等

(3)エデュケーショナルネットワーク(栄光ゼミナール・Z会)の教材・・・多数

(4)塾向け教材作成会社の教材・・・多数

(5)手作り教材

 

このうち、一番おすすめしたいのは(1)の塾です。

塾にとってテキストは生命線です。

テキストとカリキュラム・テストはリンクしていますので、そこを「他人まかせ」にするというのはあり得ません。

 

とはいうものの、教材・カリキュラム・テストの開発には、莫大な労力・資金が必要です。そこに手をだせる塾はほとんどありません。

そこで、簡単なのは「予習シリーズ」を導入することです。YTnetとよばれる四谷大塚の提携塾になってしまえば、教材・カリキュラム・テストが全ておまかせできます。

早稲田アカデミーは、それをベースに、自社教材を上乗せするスタイルですね。

 

また、そこまで難関校狙いの生徒層でなければ、栄光ゼミナールの教材を採用するという手もあります。

 

さらに、塾向け教材専業出版社がいくつかあります。

育伸社・教育開発・文理・日本教育出版など多数あります。

知らないですよね?

これらの会社は、書店には卸していません。塾(+一部の私立小・中)対象にしか販売・営業していないのです。

したがって、みなさんが入手することは原則できませんし、その必要もありません。

 

自前で教材を作れない中小塾が多く採用しています。

 

これらの教材の見分け方は簡単です。

 

シンプルな教材名・装丁

出版社名が表示されていない(場合がほとんど)

単色刷り(がほとんど)

表紙だけは立派

塾名が表記されていない(中には表紙だけ塾名を印刷してくれるところも)

 

ただし、中学受験よりもはるかに市場規模の大きい公立小中生向けのものがほとんどで、中受向けのものは多くありません。

 

クオリティの低い教材よりも、はるかにましだと思います。

 

一番危険なのは、(5)です。

その塾は選んではいけません。

 

質問その6 費用をきちんと教えてください

最も大切な質問です。

安からぬ費用を支払うわけですから、ここを明確にしなくてはなりません。

とくに、月謝は安く見えるのに、オプション講座が多数用意されている塾は要注意です。トータルの費用が高額になるからです。

また、施設費・光熱費・教材費・テスト代 などが別建ての塾も多数あります。

「月謝はいくらですか?」

「それ以外の費用はかかりますか?」

「年間で実際に支払うべき金額はいくらですか?」

「本当にそれ以上はかからないのですね?」

当然の確認です。ためらう必要はありません。

まともな塾なら、費用の一覧を紙の形で渡してくれるはずです。

 

「お子さんの成績や受験校によっても費用はかわりますので」などとあいまいに言葉を濁す塾は避けましょう。

 

私が聞いた噂では、授業料が「時価」の個別指導塾があるそうです。面談しながら、いくらくらいまでなら出せそうか探りを入れて費用を提示するそうです。

もしこの話が事実なら完全な「詐欺」ですね。

 

「今なら、キャンペーン期間につき、入塾金が免除、さらに〇〇費が半額です」などという話が出てきたら、その場で退席すべきでしょう。

TVショッピングじゃないのですから。

 

さらに、特待生制度がある塾は、基本的には避けるべきでしょう。

特待生の授業料を誰が負担しているかを考えればわかりますね。

また、そうまでしないと優秀層が集客できない証拠でもあります。

 

適正なサービスには適正な対価が伴います。

あまりに安すぎる塾・高額すぎる塾は避けましょう。

 

質問その7 補習はやってもらえますか?

ここで、

「成績不振者には、徹底的に補習をして、わかるまで教えます」

「居残り補習をしっかりやります」

「塾の無い日でも、教師が呼び出して教えますよ」

「志望校に合わせた補習をやります」

などと得意そうに語る塾はやめましょう。

「補習」といえども、教室を使って教師が生徒を指導すれば費用が発生するのは当然だからです。

「補習」という名の無料授業の費用は、誰かが負担しているのかを考えればわかりますね。

そもそも「補習」が必要となっている時点で、通常の授業のクオリティが低いことを暴露しているのと同じです。

「補習」と言う名の偽サービスに惑わされてはいけません。

 

授業時間内にきちんと指導を終わらせる塾こそ、選ぶべき塾なのです。

 

※自習室について

これは不要です。

親の目の届かないところで勉強させるのはやめましょう。

自習室が有効なのは、中学生以上になってからです。

 

 

おまけの質問 過去問を貸し出してもらえますか?

 

本来、受験校の過去問は、受験生が書店で買うべきものです。

「〇〇中学過去10年入試問題集」といったものです。

もし6校受験するなら、6冊買わなくてはなりません。

しかし、なかにはこうした方がいるのですね。

 

・受けるかどうかわからない学校だから買うのがもったいない

・10年以上前の過去問にも取り組みたいから

・ぼんやりしていたら売り切れて入手できない

 

そこで、塾に貸し出しを頼む方がいるのです。

「ちょっと借りてコピーしよう」ということなのでしょう。

塾としても依頼には応じてあげたいのですが、そうはいきません。

違法だからです。

実質上、公共図書館以外が他人に書籍を貸し出すのは違法です。もちろんコピーもご法度です。

 

したがって、貸出依頼に気軽に応じる塾というのは、遵法精神が無い塾だと判断できます。

一事が万事、個人情報の扱いやハラスメント対応等も不安です。