中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

受験までの1か月、あと1点UPのためにできること、できないこと

今日は1月1日ですが、新年のご挨拶は省略します。「受験生は旧正月でお祝いしよう」などと昔はいいました。

受験まで今日をいれても31日となりました(東京・神奈川の場合)。今日は、受験本番31日前のただの1日でしかありません。お子さんは、いつものように早起きをして、いつものように机に向かい、いつものように過去問に取り組んでいらっしゃると思います。

あと31日で、なんとか得点を1点でもUPさせたい!

今日はそのやり方について書いてみます。ただし1か月では出来ることと出来ないことがあります。そこもきちんと整理します。

1.小学校は休ませるべきか?

 私の職業上の立場からすればお答えしづらい質問です。実際に何人もの保護者の方から毎年同様の質問を受けます。

 30年前ならこうお答えしていました。

「一日中家にいるお子さんとずっと一緒に過ごしていて、本当に大丈夫ですか? イライラしませんか? 不安になりませんか? そしてその気持ちをお子さんにぶつけてしまいませんか? それくらいなら、息抜きを兼ねて直前まで学校に普通に通わせほうがましでしょう。受験の前日を休めばそれで充分でしょう。」

しかし、今やこの考えは古いですね。家に大人が必ずいることが前提だからです。

それでも、感染症(コロナ・インフルエンザ)のリスクを少しでも下げるためには、小学校に行かせる日数はしぼりたいですね。

そこで、今はこのようにお答えしています。

「立場上、休むなとも休めとも言えません。ご家庭の判断となります。しかし、直前1週間は休む方が大半ですね。また、1月に入ったら受験が終わるまではお休みされる方もかなりいらっしゃいます。」

もし私が自分の子供を受験させるのなら、1月は小学校は休ませます。これで答となったでしょうか。

(1)休ませることのメリット

 〇感染症のリスク低減

 〇時間の確保

 さきほど、家で子供と顔を突き合わせていると親子関係がギスギスすると書きましたが、そもそもそういう関係になっていることのほうに問題があります。

 もうこの時期には何をやるべきか、子供本人が自覚しています。親は黙って美味しい食事を用意して見守っていればよいのです。

(2)デメリット

 正直、デメリットはありません。まあ、身体がなまるくらいでしょうか? でも、たった1か月です。それくらいなら問題ないでしょう。

 しかし、周囲の目を気にする方は多いですね。

「受験のために学校を休ませるなんて(けしからん!)」

「子どもが学校に行きたがっているのに可哀そう(邪推)」

「そんなにまでしないと合格できそうもないのかしら(嫌味)」

「でも、塾は行かせてるんですって(非難)」

こんな声が聞こえてきそうではあります。実際に聞く話です。

しかし、冷静になって考えてみましょう。今まで費やしてきた努力と時間を。中学受験をしない子供たちが野山を走り回っていた(今時はないですが)間に、どれだけがんばって勉強していたことか。学校で皆が流行のアニメやゲームの話をしていても、全く知らないで仲間に入れてもらえなかったこともありましたよね。全てはあと一か月で報われるのです。優先すべきことは何かはすぐわかる話です。

 また、このような心無いことを言う方とは、これっきり縁を切ればよい話です。本当の友人なら、「太郎君頑張ってね。」「花子ちゃん、受験終わったら遊ぼうね。」というはずです。

 もちろん、小学校の担任の先生には、事前にきちんと事情を説明しておかなくてはなりません。今の受験率を考えれば、「わかりました。がんばってください。」と言ってくださるはずです。もしそれで機嫌を損ねるような先生だったとしたら、その程度の方だったということで、気を遣う必要すらないということです。もっとも、30年前なら中学受験に反対意見をお持ちの先生というのが必ずいましたが、今や絶滅危惧種ですので心配する必要はないでしょう。

 また、小学校から中学校にこの件で連絡が行くことはありません。仮にあったとしても中学校が受け付けません。

 

2.1か月で出来ること

(1)過去問30本

毎日朝から、過去問に取り組んでください。

受験予定校が5校あり、それぞれの学校が2回入試を実施していたとすると、3年分ができることになります。やるにあたっての注意事項は以下のとおりです。

 ◆一度解いたものはやらない

 ◆受験予定校の新しい年度のものを優先する

 ◆受験予定校のものが終わってしまったら、他の学校のものでもよい。

 ◆試験時間・科目順は学校に合わせる

 ◆答え合わせを丁寧にやる

 ◆得点は気にしない

とくに最後のアドバイスは重要です。学校によっては合格最低点を公表しています。この時期になってそれを下回っていると正直子供は落ち込みます。そこで親まで一緒になって落ち込んではいけません。常に前向きに振舞いましょう。そして、この得点によって志望校を下げないことも大切です。

(2)毎日4教科の学習をする

 理科・社会なら暗記もののドリル・プリント等の学習ができますね。また、理科の場合は計算問題の練習もよいでしょう。国語なら知識問題の整理です。漢字・熟語・ことわざ・慣用表現など、整理するチャンスです。算数は苦手な単元の問題を解き直すのがよいですね。

タイムスケジュールはこのようなかんじでしょうか。

朝食前・・・漢字ドリル・計算トレーニング(計1時間)

午前中・・・過去問演習(実際の試験時間に合わせる)

午後1・・・過去問の答え合わせ(丁寧に)

午後2・・・4科目の学習

夕飯後・・・4科目の学習の続き

ここで最重要なのは、時間のコントロールです。

きちんとタイマーを使って、学習時間を決めてください。「終わるまで」スタイルの学習をすると、睡眠時間に食い込みます。「時間が来たら」強制終了しましょう。

 

3.1か月ではできないこと

 (1)過去の塾のテキストの総ざらえ

いつかやろうと思って大事にとっておいたテキストがありますね。もうあきらめてください。時間がありません。処分してかまいません。

 (2)手をつけていない問題集

 いつかやろうと思って用意しておいた問題集がありますね。もうあきらめてください。時間がありません。処分してかまいません。

 (3)新しく買った問題集

 「1週間で完璧」的なタイトルのおさらい系の問題集が書店に行けばいくらでも売っています。絶対に買ってはいけません。時間がありません。

 (4)入試に出そうな小説

 いつか読もうと思って用意していた本がありますね。もうあきらめてください。時間がありません。入試が終わってから読みましょう。

 (5)解けない問題にチャレンジする

 過去にチャレンジしたけれど解けなかった問題、見た瞬間に解けそうもないとわかるレベルの難問、こうした問題はきっぱりと捨ててください。もう理解する時間はありません。おそらく塾の先生に質問しに行っても怒られて追い帰されるだけだと思います。

 

4.大切なこと

 (1)易しい問題を確実にとること

 難問が解ける生徒より、易しい問題を確実に落とさない生徒のほうが合格します。この1か月の学習の目標をここに据えましょう。

 (2)得意教科を延ばす作戦より苦手教科を強化するほうが大切

 誰だって得意教科の学習のほうが好きです。苦手教科の学習は嫌なものです。ついつい気が付けば得意教科ばかりやっている、そんなものですね。

 でも、だからこそ苦手教科はいつまでたっても苦手教科のままなのです。あと1か月では得意教科の得点力をこれ以上上げることはできません。それより苦手教科に注力しましょう。苦手教科=得点力が低い=伸びしろがある、こう考えてください。例えば算数が90点とれる生徒を100点にすることは難しい(不可能)ですが、社会が50点しかとれない生徒を60点とれるようにすることは可能です。

 (3)割り切る勇気

ここまできたら、「割り切る勇気」が必要です。全ての学習を終了し完璧な状態で入試に臨める受験生は存在しません。

「あれもやっていない」「これもできていない」と言いながら1月31日が終わります。それでいいのです。持てる時間の全てを無駄なく勉強に費やしたのですから。これが限界です。その時点の実力で受験に臨むしかないのです。