前回、海外で社会科の学習を孤軍奮闘している太郎君へのアドバイスを紹介しました。
高校受験のための社会科学習に苦戦している太郎君(仮名)へのアドバイスです。
それに対するお返事もいただいていますので、ここでその一部を紹介します。
1.太郎君の返信
peter先生、ていねいにアドバイスをありがとうございました。
中学受験を目指していたころから、社会科が苦手でした。だから、先生の手紙にあった、「海外にいるからできなくて当たり前」という指摘に、はっとしました。たしかに、今までも苦手な社会科の勉強はいつも後回しにしていて時間がなくなってしまうことの繰り返しでした。でも、僕の目指している学校は、皆があこがれる学校です。きっと今頃は、日本の受験生たちが塾で必死に勉強しているのだと思います。
僕もこれからは、言い訳をせずに、必死で勉強したいと思います。
こうして少しでも本人がやる気をだしてくれたのなら嬉しいですね。
正直言って、現在の太郎君の社会科のレベルは、日本の中学受験生にも負けるレベル(それも最上位ではない生徒に負けるレベル)だと思います。でも、だからといってそれが挑戦をあきらめる理由にはならないと思います。
「帰国生なんだから、社会科なんて必死にならなくても、英語力を鍛えるほうがいいのでは?」
こうした意見も耳にします。
でも、ちょっと待ってください。日本の学校に入学すれば、周囲の生徒の大半が日本の学校で学んできた生徒達です。学校の授業も、そうした生徒を基準として進められていきます。
そこでは、「僕は海外からの帰国生だから」などという言い訳は一切通用しないのです。
受験するなら、日本の受験生と同等レベルの教科力を身に着けることが大切だと思っています。
2.お母さまからの返信
Peter先生
いつもお世話になっております。
この度はご親切なメールをいただき、有難うございます。
解説を読み、息子も私も感動致しました。
同時に、息子の知識の少なさにもガッカリしました。
Peter先生のような指導のお上手な先生について勉強していたら、息子は今頃社会が得意科目になっていたかもしれません…
良い先生との出会い、環境作りは一番大切だと感じております。
海外で塾に行かず一人で勉強する事は、とても難しいと痛感している毎日です…
言い訳になってしまうのですが、息子は現地校の勉強や宿題、受験のための課題(国語、数学)だけで、理科社会を勉強する時間は殆どありません。
現地校では数学のトップセッターに選ばれ喜んでおりましたが、レベルが高すぎて今迄以上に勉強しなくてはならなくなりました。
息子は日本の勉強をする時間がなくなってしまうと、嘆いておりました。
主人は息子にどうにかして理科社会の知識を身につけさせたいと考え、通信講座(理科社会だけ)を申し込んでくれました。
ですが、手付かずの状態です。
本人は、来月の長い休みで終わらせるつもりのようです…
息子自身は〇〇校に合格したいと強く思っているのですが、それがどれほど大変なのか分かっていないようです。
困ったものです…
長い愚痴になってしまい申し訳ございません。
peter先生からいただいたメールで、息子もやる気が出てきたようです。
次回のテストでは少しでも良い点数が取れるよう、私も息子のサポートをしたいと考えております。
どうぞ宜しくお願い致します。
この手紙をいただいてから、何度も読み返しています。
海外在住で、日本の学校の受験を目指すのは実に大変です。
頭ではわかっていても、こうして実際の声を聴くと、身の引き締まる思いがします。
普段から、海外帰国生のご相談には、「理科・社会をきちんとやることが必須です!」と強調してきました。それはもちろん間違いないのですが、思いやりに欠けていたかもしれません。
勉強時間も、教材も、指導者も、情報も、あらゆるものが不足する海外にいながら、日本の学校の受験を目指すというのは、想像以上に過酷な試練なのです。
逆に言えば、それをクリアしてきた生徒というのは、本当に努力の価値を知っている生徒だと思います。
日本の学校(一部の)が海外帰国生を求める理由はここにあるのだと思いました。
こうして海外在住の生徒の話を聞くと、どうしても国内の生徒に向ける視線がより厳しいものにならざるを得ません。
教材も指導者も情報も塾から豊富に得られる環境にいながら、それを活かそうとしない生徒には、海外在住の受験生の労苦を話して、自覚を持った学習をするよう促す日々ですね。