前回、高校受験生の学習時間について考えました。
中学受験生と比べて少なすぎる、と書きましたね。
中1:15.5時間、中2:22時間、中3:31時間
小4:21時間、小5:27.5時間、小6:36時間
もう少し考えてみたいと思います。
中高一貫校生の学習時間
教え子で、最難関私立中に進学した中3の生徒に、1週間の時間の使い方について聞いてみました。この子は塾には行っていません。クラブ活動は、平日2回、あとは土曜日だそうです。
◆平日
5:30 起床
※この間、10分くらいは、NHKの基礎英語の勉強をする
6:30 自宅を出る
※電車の中で、30分くらいは勉強する
どうやって勉強するのか聞いてみると、座れないときは、前に回したリュックの上にノートを広げれば勉強できる、とのことでした。
16:30 帰宅 (部活の無い日)/18:30帰宅(部活のある日)
※ この間、休憩・風呂以外に60分くらいは勉強する
18:30 夕食
19:00~21:30 150分くらい勉強
21:30~22:00 テレビを見たりYouTubeを見たり
22:00 寝る
◆土曜
6:00 起床
※この間、60分くらいは、勉強する
8:00 自宅を出る
※電車の中で、30分くらいは勉強する
16:30 帰宅
※ この間、休憩・風呂以外に60分くらいは勉強する
18:30 夕食
19:00~21:30 150分くらい勉強
21:30~22:30 テレビを見たりYouTubeを見たり
22:30 寝る
◆日曜
6:00 起床
7:00~12:00 300分くらいは勉強する
12:00~13:00 昼食&休憩
13:00~18:30 休憩・風呂以外に300分くらいは勉強する
18:30 夕食
19:30~21:30 120分くらい勉強
21:30~22:00 テレビを見たりYouTubeを見たり
22:00 寝る
1週間の合計勉強時間は、およそ36時間となります。
「ずいぶん勉強してるね。」
「だって、先生。そうしないと置いていかれるから。自分より頭のいい生徒いっぱいいるし。」
「学校の成績はどうなの?」
「今のところ、小テストほぼ満点。定期試験は、満点なかなかとれないんだよね。でも、悪くても80点台、だいたい90点台かな。成績表はだいたい5だよ。」
「すごいね。どれどれ。ほお、美術が4で、あとは全部5じゃないか! これ学年でトップだろ。」
「そんな訳ないじゃん。ほんと、すごい子いっぱいいるから。」
「でも、毎日そんなに勉強してて嫌になったりしないの?」
「別に。勉強嫌いじゃないし。好きってほどでもないけど。でも、好きなのかな?」
「それでも勉強時間、長いね。家にいるときはほとんど勉強してるじゃないか。」
「そんなでもないよ。ちょこちょこYouTube見たりしてるし。小学生のときのほうがもっと勉強してたって。先生、よく知ってるくせに。今は、部活も楽しめてるし、中学受験の受験勉強してた時より全然短いって。」
「学校の宿題は多いの?」
「そうでもない。まあ、普通かな。」
「じゃあ、宿題以外の勉強してるんだ。」
「そう。基本は学校のプリント。あとは学校から出てる問題集。それから、基礎英語もあるし、自分でTOEICの英語問題集もやってるし。数学は青チャート買ったから、それとかかな。」
「大変そうだね。」
「大変っていうか、もう時間が足りなくて。」
「これって、試験前だけじゃないよね?」
「試験前はもう少しやってるよ。夜のテレビとかYouTubeとか封印するから。普段は見てるけどね。」
「親にうるさく言われたりしてるの?」
「そんなわけないじゃん。もう何もいわないよ。それより、早く寝ろとか、そっちがうるさいくらい。」
もう、立派すぎて何もいえません。
周囲が勉強するのが当たり前の環境なので、自分で工夫して考えながら勉強しているのです。
友達と遊びに行かないのか聞いてみると、たまには行くそうです。あとは、部活の先輩に遊びに連れていってもらうこともあるそうです。
「ねえ、まわりの同級生たちは、君と同じくらい勉強してるの?」
「そんなの知らないよ。でも、鉄とか行ってる子は、もっと夜遅くまで勉強してるんじゃないかな。もちろん、遊んでばっかりの子もいるけど。」
この生徒の通う学校は、東大をはじめとした大学への進学実績も目覚ましいのですが、その陰にはこうした勉強が日常習慣と化している生徒の存在があるのです。
中高一貫校の大学進学実績
東大をはじめとした難関大学の合格者出身校別ランキング、そんな記事が毎年春になると週刊誌を賑わせます。あんまり東大を頂点とする大学ヒエラルキーの世界は好きではないのですが、職業がら一応チェックはしています。
もちろん、主要難関私立高校がずらりと上位を独占しているのはいつものとおりです。そこに日比谷高校や翠嵐高校が割って入っているのはさすがです。
こうした私立高校の大学実績が図抜けていることに関しては、巷間このようなことが言われています。
◆もともと優秀な生徒を中学から青田買いしたのだから当たり前だ
◆鉄緑会の指定校だから東大に合格する生徒はみな中1から鉄に通っていた。つまり鉄の成果というだけ
◆学校がまるで受験予備校のように勉強させまくっているらしい
◆学校は何もしてくれないけれど、生徒が自主的に塾に行ったから
◆夏期の補習授業から日曜日の自習室提供まで学校が至れり尽くせりだったから
しかし、多くの中高一貫校生から学校の様子を聞いてみると、どうやら少々違うと思います。
努力の価値を知っている生徒が、当たり前のように中学生になってからもその努力を継続したから
これが真実だと思います。
私立中学に進学してからの勉強に向かう姿勢については、以下の記事に書きました。
中高一貫校に進学すれば遊べるという幻想
もしお子さんがまだ小学生、中学受験を目指して努力中なら、ぜひ気をつけていただきたいことがあります。
このようなことは絶対言わないでください。
中学に合格したら、いくらでも遊んでいいから
高校受験がないから遊ぶ時間がたくさんあるよ。だから中学受験がんばろう
これは大嘘です。
お子さんを騙してはいけません。
勉強に終わりはありません。
まして、私立に進学すると、周囲は勉強に対する姿勢が違います。そこで勘違いして遊んでしまうと、せっかくの私立進学がもったい無さすぎます。
高校受験という、ある意味「足踏み状態」の勉強をしなくて済む。これこそが最大のメリットです。
より深い学び・より本質的な学びに費やす時間ができる。そうした事実をきちんと伝えてほしいと思います。