中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【高校受験】あらためて、高校入試について、中学受験目線から考える

私の専門は中学受験です。

しかし、高校入試の相談を受けることも多くありますし、最初は中学受験をするつもりで勉強をしていたが途中から高校受験に切り替える生徒もいます。また、帰国子女入試の場合は、自分で帰国のタイミングが選べずに、結果として高校受験になる生徒もいます。

今回は、あらためて高校受験について考えてみたいと思います。

ただし、あくまでも「中学受験目線」からの考察です。

高校入試制度の基本のおさらい

 すでにお子さんの高校入試を経験されている方にとっては、「何を今さら」の話ですので読み飛ばしていただいて結構です。

 

【神奈川県の場合】

内申点・・135点満点 → 100点満点に換算(a)

 中2:5点×9科目=45点

 中3:5点×9科目×2=90点

※一部の高校では、特定の教科を2倍まで重点化する場合あり

 

 

学力検査・・・入試の点数

 3~5教科の得点合計を199点満点に換算・・・(b)

 ※2教科まで、各2倍以内に重点化する場合あり

 

調査書の評価

 中3の「主体的に学習に取り組む態度」の評価について、評価Aは3点、評価Bは2点、評価Cは1点に換算した合計・・・100点満点に換算した数値・・・(c)

 

特色検査

 観点ごとの得点合計を100点満点に換算・・・(d)

 特色検査とは、高校によって実施される実技や自己表現・面接などのことです。

デッサンやスポーツの種目が相当します。

自己表現検査では、グループ討論をやらせたり、教科横断型の問題を解かせたりスピーチをさせたりと様々な検査が行われます。

とくに上位校で行われる特色検査問題は、いわゆるPISA型のテストといってもよいでしょう。

 

第1次選考…次の数値S1により募集人員の90%まで選考します。

 合計数値S1の算出式

 S1=(a)×f+(b)×g (f、gは合計が10となるそれぞれ2以上の整数とし、各学校が定めます。)

 (注)特色検査を実施した場合は、S1=(a)×f+(b)×g+(d)×i (iは1以上5以下の整数)

 

第2次選考…「第1次選考」及び「資料の整わない者の選考」において合格となっていない者の中から 次の数値S2により募集人員まで選考します。

 合計数値S2の算出式

 S2=(b)×g'+(c)×h' (g'、h'は合計が10となるそれぞれ2以上の整数とし、各学校が定めます。)

 (注)特色検査を実施した場合は、S2=(b)×g'+(c)×h'+(d)×i' (i' は1以上5以下の整数)

 

さて、これらの得点の計算は具体的にはこうなります。

Aさんの場合
 2年の内申・・・合計32点
 3年の内申・・・合計35点×2=70点
 内申合計・・・102点(135点満点)
  →102×100÷135=75.6点・・・100点満点換算
3年:主体的に学習に取り組む態度
 A(3点)×5=15点
 B(2点)×3=6点
 C(1点)×1=1点
 合計 22点(27点満点)
  →22×100÷27=81.5点・・・100点満点換算
入試の得点
 5科目合計385点
  →385×100÷500=77点・・・100点満点換算

 

例えば内申4:入試6の割合の学校の場合

75.6×4+77×6=764.4点・・・第一次選考の得点

観点別3:入試7の割合の学校の場合

81.5×3+77×7=783.5点・・・第二次選考の得点

 

たぶんこれで間違ってはいないと思うのですが。

実にわかりにくい!

もうこれを書いているだけで、中学入試がなんてすっきりさわやかな選抜方法なのかと思いますね。

内申なんてものは撤廃して、いっそのこと本番入試の1発勝負にすればよほどすっきりと公平な試験制度になると思うのは私だけでしょうか。

中学入試はもちろんのこと、大学入試だって一発勝負です。

なぜ高校入試だけがこんな制度になっているのかはなはだ疑問です。

※もっとも、大学入試も年々複雑化してきました。これについては、記事を改めて書きたいと思います。

 

例えば翠嵐高校の場合はこのようになっています。

◆第一次選考・・・学力検査:評定: 特色検査=7:3:3

◆第二次選考・・・学力検査:主体的に学習に取り組む態度(評価):  特色検査=8:2:2

第一次選考における学力検査の割合は、ほとんどの学校が6となっていて、一部の学校で5ないし7ですね。翠嵐は学力検査の比重が高い学校であるといえます。

 

 

内申美人という言葉

みなさんは、「内申美人」という言葉を聞いたことがありますか?

内申点をとれる生徒(おもに女子に多い)」という意味です。

具体的には、定期試験の点数は今ひとつなのに、なぜか内申は高評価、そういう生徒のことです。

「うちの子は内申美人だから、公立高校入試に有利だわ。」

「うちの子は内申美人になれそうもないから、中学受験必須なの。」

「あいつは内申美人で羨ましいよ。」

といった文脈で聞かれる言葉ですね。

では、いったいどうしたら「内申美人」になれるのでしょうか?

(余談ですが、今「内申美人」と入力していると、ちょいちょい「内美人」と誤変換されます。)

 

 

内申点の上げ方

 

①定期試験(中間・期末)で高得点をとる

 しかし、これも「テストは満点なのに5がもらえない!」という声をよく聞きます。逆に、「テストはひどい点数だったのになぜか4がついた!」という声も。

テストの得点だけでは内申点が決まらない点はやっかいなのですが、いずれにしても高得点であるにこしたことはありません。

正直いって、公立中学の定期試験の問題レベルは平易です。学校の授業を真剣に受けてきちんと復習するだけで得点できるレベルです。さらに確実な得点を見込むためには、市販の問題集を活用しましょう。各教科書会社別に細分化された問題種がいくらでも手にはいります。また、教科書の章末問題を何周もやるのもよいですね。

公立中学生対象の地元密着型塾の中には、「〇〇中定期試験対策!」だとか、「〇〇中期末テスト英語30点UP!」などという宣伝をしているところをよくみかけます。

こうした塾は、地元の公立中学の定期試験の過去問題のストックを持っていて、きめ細かな対策をたててくれるようです。

それ自体はありがたい話なのですが、そもそも定期試験レベルの問題でこうした塾の対策を必要としている時点でどうなのか? とつい考えてしまうのは、私が中学受験の世界の住人だからなのでしょう。

②課題の提出期限を守る

 宿題・レポート・作文等、学校から提出を指示された課題は、「期限を守って全てきちんと」提出しましょう。

この「期限を守る」ことのできない生徒がとても多いのですね。ちょっと信じられません。もっとも大人になっても「提出物の期限を守る」ことのできない人は多数います。私も偉そうなことは言える立場ではありません。

③提出物のクオリティを上げる

 別に、読書感想文を書くとして、「全国読書感想文コンクール」で金賞をとれるクオリティにしろ! といっているのではありません。もっとも、そのレベルであれば、内申や推薦にとても有利ではあります。

提出させられることの多いものとして、「教科書準拠ワーク」があります。こんなもの、期限直前にやっつけでやる性質のものではありません。授業の進行に合わせて、毎日こつこつとやるべきものです。定期試験対策としても役立つのですから。そうした丁寧な勉強ぶりが評価されるということでしょう。

④授業に積極性を見せる

 授業中は積極的に挙手しましょう。積極的に発言しましょう。もちろん不規則発言ではありません。授業というのは、ミュージシャンにとってのライブみたいなものなのです。観客が乗ってくれるライブは、ミュージシャンだっていつも以上に乗って演奏するものです。生徒が積極的に参加してくれる授業は、教師としてもやりがいのある授業となるのです。「間違ったらどうしよう」などと考える必要はありません。生徒というのは間違えるのが仕事?です。間違えるからこそ成長できるのです。

⑤積極的に質問に行く

教師というのは、本能的に教えるのが大好きな生き物なのです。生徒が質問しに来てくれるのが大好きです。どんどん質問に行きましょう。あまりに的外れな質問では困りますが、教師心をくすぐるというか、教えてあげたくなるような質問をしてくれるとうれしいものです。また、そうした質問を考えることも、実はとても良い勉強になるのです。

⑥ノートをきちんととる

授業中にぼんやりしてはいけません。板書を書き写すのはもちろん、先生の発言も大切そうなことはきちんとノートに書きましょう。教師の話を一言も聞き漏らすまいと集中し、一所懸命ノートをとっている生徒、いいですねえ。

※ただし、ノートに集中するあまり、先生の話を聞かなくなるのは困ります。カラフルに色分けして「ノートの完成度を高める」ことに燃える生徒というのがいます。これは本末転倒ですね。

⑦授業中小テストは落とさない

授業中の小テスト、生徒の理解力をはかるためによく実施されますね。この小テストは満点が当たり前です。授業を集中して聞き、家できちんと毎日復習していれば必ず満点がとれるテストだからです。

⑧先生を頼る

内申点を上げるために、塾を利用する。一見正しいように思えますが、実はおかしな話です。教科の学力をあげるなら、まず最初に頼るべきなのはその教科の先生です。効果的な勉強の進め方や、弱点の克服法、あるいは自分に足りない物は何なのか、あらゆることをまずは担当の先生に相談しましょう。そのうえで、それだけでは足りないものを補うために塾を利用する、これが王道です。

⑨目標を明確にする

中学1年から高校入試までは3年間しかありません。自分が進学したい高校は決まっていますか? 小学生だって、4年生にもなれば、志望校を考え始める時期なのです。まして中学生にとって高校入試は「必ずやってくる試練」であり、「失敗が許されない試練」でもあるのです。中1にもなって目標が定まっていないのでは困ります。

もちろん自分ひとりでは難しいでしょう。学校の先生に相談してみるべきですね。

⑩時間を無駄にしない

3年間なんてあっという間です。無駄にできる時間はありません。

おそらく多くのみなさんは部活をはじめることでしょう。

「中3の夏の大会で部活は引退。それまでは部活命!」こうした中学生も多いですね。

しかし、言わせてください。

甘い!

中学生の本分は勉強です。

何も、高校入試のために、という狭い話ではありません。

中学生で学ぶ勉強は、将来にとって重要な基礎教養なのです。

部活命はけっこうです。しかし、それが勉強をしなくていい言い訳にならないようにしましょう。勉強も部活もどちらも、なんてむしがよすぎると思います。

勉強をきちんとやることを前提としてのクラブ活動なのを忘れないようにしたいですね。

 

勉強時間について

たまたまネットニュースで見かけた話題です。

偏差値70超えの公立中学生がどれくらい勉強しているのか、という記事でした。

どれどれ。どれくらいなのかな?

平日・・・中1なら最低1時間半、中2は2時間

     中3は、部活引退前は2時間半、引退後は3時間半、12月以降は5時間

土日・・・中1:4時間、中2:6時間、中3:8時間

 

ということは、1週間の勉強時間はこうなりますね。

中1・・・15.5時間

中2・・・22時間

中3・・・31時間(平日は部活引退前後平均3時間として)

これは、塾での学習時間を含む時間だそうです。

これがいったいどのような根拠に基づく数字なのかはわかりません。

「うわ! 偏差値70超えるためにはこんなに勉強しなくちゃだめなんだ!」

と驚かすための数字なのか、

「へえ。偏差値70超える生徒の勉強量も大したことないね。それなら私のほうがやってるよ」

と思わせるための数字なのか。

おそらく前者だとは思うのですが。

 

ところで、中学受験の小学生の学習時間はどうなっているでしょうか。

塾の無い日にも、塾で勉強するのと同じくらいの時間家庭学習をするのが基本です。

小4・・・平日は3時間×5、土日も3時間×2、合計21時間

小5・・・平日は.3.5時間×5,土日は5時間×2、合計27.5時間

小6・・・平日は4時間×5、土日は8時間×2、合計36時間

※おそらく小4は習い事も多いと思いますので、土日のどちらかの半日は習い事でつぶれると思います。土日にもっと勉強する子も多いですが、少な目にみつもって、平日と同じ時間と仮定しました。5年生になっても、平日の学習時間はそんなに増やせません。その代わり土日はもう少し勉強ができます。

小6は受験学年ですからね。小学校に行く時間・食事等の時間・睡眠時間、それ以外はすべて勉強にあてられます。土日に8時間としましたが、実際にはもっと勉強している子が大半です。8時~17時、昼休憩をはさんでもこれで8時間です。あと3時間はみな勉強しているでしょうね。

しかも、これは何も最難関校を目指す生徒だけの話ではありません。学力が低い生徒ほど、追いつくためにはより一層の学習時間が必要になるのは当たり前ですので。

 

そうした中学受験生を当たり前のように見てきた私からすると、中学生の学習時間はどうしても少な過ぎるとしか思えないのです。

 

まあ、これはたまたま見かけたネット記事情報ですからね。何の信憑性もないデータです。たぶん、都立日比谷や、県立翠嵐高校、あるいは慶應女子高・開成高等を受験する生徒の学習時間はこんなものではないはずです。

 

それにしても、たとえ合格できなくても進学先がある(公立中学には全員行ける)小学生よりも、合格できなければ中卒!の可能性がある中学生の学習時間が少ないというのは私には理解できません。

中学生って、そんなに忙しいのでしょうか?

 

知人に、高校受験専門塾の先生がいます。その塾では、ゴールデンウィークや正月にも、最上位クラスの生徒(塾全体の2割程度)のみを対象とした講座があるのだそうです。気になったので聞いてみました。

「上位層だけを優遇するような講座をもうけて、その他の生徒からはクレームにならないのですか?」

すると、返答はこうでした。

「ああ、中学生はね、塾の勉強量が少ないほうが喜ばれるのですよ。」

やっぱり私には理解できない世界です。