中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

小5のみなさんへのアドバイス 入試まであと1年

さて、今回は、来年入試を迎える小学5年生のみなさんへのアドバイスを書こうと思います。

おそらくは、「まだ1年先の話だしなあ」「先輩(お兄さん・お姉さん)は大変そうだなあ」などと、まるで他人事のような感覚でいるのではないでしょうか。

これから、その思い違いを覆す話をしていきますね。

 

1.あと1年で出来ること、出来ないこと

1年と考えるから、まだまだ時間がたっぷりあるような気がするのです。ここは細かく分割して考えてみます。

まず1年を12か月とし、それを半分にします。

前半の6か月は教科学習、後半の6か月は入試問題演習、そういう風に分けてみます。

 (1)教科学習にかけられる時間

算数・国語・理科・社会の4科目を学習するときの、それぞれの教科にかけている時間はどれくらいでしょうか?

もちろん得手不得手によってさまざまだとは思いますが、平均すれば、算数・国語に理科・社会の2倍かそれ以上の時間をかけていると思います。

ここでは、仮に2倍としてみます。

それを6か月に割り振ってみましょう。

算数:2か月、国語:2か月、理科:1か月、社会:1か月

これが各教科の学習に振り分けられた残り時間です。

さて、こう考えてみてください。今から1か月間は、理科だけ学習します。次の1か月は社会科だけ、算数に2か月、国語に2か月、これで6か月です。

例えば社会科についてみてみましょう。

 おそらくは、5年生が終わろうとするこの時期は、歴史の学習の途中だと思います。もう明治時代は終わりましたか? これから戦争の時代でしょうか?

 ここから、現代史を学び、さらに公民分野も学ばなくてはなりません。

公民分野としては、日本国憲法基本的人権・平和主義・国会・内閣・裁判所・議院内閣制・社会保障地方自治、こういった知識を学びます。さらに、国際連合や国際社会、現代社会の諸問題など、入試頻出項目が出てきます。

 これら全てを、たった1か月で全てマスターできますか?

そんなのムリですか?

いいえ、そのムリをやらなくてはならないのです。

理科についても同様に1か月で、そして算国は2か月ずつ。

これがみなさんに残された「あと1年」の正体なのです。

1か月でマスターしなくてはならない内容を、6か月に分散して各教科同時進行で学んでいるにすぎません。ぎゅっと集めてしまえば、わずか1か月で全てを学ばなくてはならないのです。

 (2)入試問題演習にかけられる時間

 これを最初にざっくりと6か月と割り振りました。

8月からスタートして来年1月までで6か月です。

志望校・受験予定校がもし6校あれば、それらの学校の過去5年~10年の過去問題をやる必要があります。しかも、最近は複数回入試を実施する学校も増えてきました。

仮に6校が2回ずつ入試を行っているとして、それを5年分やるとすると、これで60本となります。(1本とは、4科目1回分)

もちろん、受験校の過去問だけの学習では不十分です。様々な入試傾向の他の学校の入試問題も解いていくべきですね。それを30本解くとして、合計90本です。これを6か月に割り振ると、平均して月あたり15本となります。

過去問演習で最も大切なのは、「見直し・間違え直し」です。自分の弱点を洗い出し、補強するのが過去問演習の最大の目的なのです。

したがって、例えば日曜の午前中に1本解いたとして、その答え合わせ・間違い直し・覚えなおし・解き直しに、数時間はかかります。午後一杯かかると思って間違いないでしょう。

 (3)一日で使える時間

 小学校のない日(日祝日・夏休み等)は、朝の6時から夜の20時まで机に向かえますね。途中で食事もしますので、それを1時間とすると13時間は勉強ができます。しかし、学校がある日はそうはいきません。

学校に行く前の朝に1時間、そして学校から帰ってから寝るまでに3時間、そんなものではないでしょうか。土曜日はもっとできますね。

これは、塾に行く時間や学校の宿題をする時間を入れていません。運動会や修学旅行も考えていません。

毎日学校に行く時間と食事時間・睡眠時間以外の全てを受験勉強に充てたとしても、大した時間にはならないのです。

現実にはそんなことは不可能です。つまり、受験勉強にあてることのできる時間は、もっと少なくなります。

ぎょっとしましたか? そんな生活は嫌だ!と思いましたか?

非情なようですが、時間だけは平等です。一人だけ特別に時間がたくさん与えられるわけはないのです。その平等な時間の中で、どれだけ無駄をそぎ落とし、どれだけ密度の濃い学習をするのか、それが勝敗を分ける条件なのです。

 

2.実際に1年でどれくらい伸びるのだろうか?

 それはわかりません。

人による、としか言い様がないのです。

私が過去教えていた生徒で一番伸びた生徒は、偏差値でいうと30伸ばしました。

最終的に第一志望だった麻布中に合格しています。この生徒の場合は、帰国生だったこともあって、塾に通いはじめたのが6年生になってからでした。そして本人の必死の努力を今でも覚えています。しかし、これはレアなケースです。

実際には、今から5伸ばすことができれば上出来です。本当のところは、現状を維持するだけでも大変です。

目標とする学校が「不可能な」レベルの志望校なのかどうかは、お通いの塾の担当の先生に相談してください。プロとしての率直な意見がうかがえるはずです。

もし私が相談されたら、夏休み前まで様子を見ます。入試までのカウントダウンが始まっているこの時期になっても学習姿勢に進化が見られない場合は、伸びしろが無いと判断します。ここから半年の頑張りが、志望校に手が届くかどうかの分かれ目なのです。