中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

模試の結果がひどい!(2024.3.17加筆修正)

※この記事は、224.3.17に加筆修正しました)

学年が切り替わる季節となりました。新5年・新6年あたりから、各塾は様々な公開テストを実施しはじめます。

また、6年生になると、実際の志望校判定のテストも増えてきます。

日能研の全国模試、四谷大塚の合不合判定テスト、SAPIXサピックスオープン。いわゆる三大塾の模試が次々と押し寄せてくるようになってきます。

結果にショックを受けている方も多いと思います。

第一志望校の合格可能性が20%!

目の前が真っ暗になる思いですね。

頑張り続ければ成果はともないます。たしか塾の先生はそう言っていたはず。

いったいいつになったら成果がでるのか?

そこで私が実践的なアドバイスをしましょう。

1.そもそもその模試(テスト)は何を目的として設定されたテストか?

テスト・模試といっても様々です。おもに以下の種類に分けられます。

①塾の生徒募集を目的としたテスト

②生徒の個人情報(氏名・住所・成績・志望校等)を取得するのが目的のテスト

③生徒の立ち位置=順位・偏差値算出を目的としたテスト

④志望校の合格判定を目的としたテスト

もちろん、これらの目的がミックスされているのが普通ですが、それでもどの目的を主目的としたテストなのかを考える必要があります。

この中で、とくに要注意なのが、①と②を主目的としたテストです。見分け方は非常に簡単で、これらのテストのほぼ全てが無料です。

多大なコストがかかるテストを無料にしているのは何故なのか、その理由をちょっと考えればわかることですね。

私が基本的に無料テストを推奨しない理由がそこにあります。

お子さんの立ち位置や志望校の合否判定を見たいのなら、きちんと対価を支払ってテストを受けるべきだと思います。

※テストの種類の詳細はこちらの記事に書きました。

peter-lws.hateblo.jp

2.模試を受ける意義とは?

 どうしてもテストを受けると、志望校の合格判定が気になりますね。しかし、本来模試を受ける意味はそこにはありません。

◆時間内に問題を処理するトレーニン

◆テストというものに慣れる

◆弱点を把握する

以上3点が模試を受ける意義なのです。

 

 (1)スピード感を身に着ける

子どもによって、問題の処理スピードは大きく異なります。全く同じように指導をしてきた生徒に、全く同じ問題を解かせても、制限時間を大きく余らせる生徒もいる一方。制限時間に半分も解くことのできない生徒もいるのです。イメージとしては、100m走を、8秒で走り抜ける生徒と30秒以上かかる生徒が同じ教室に座っているようなものですね。この遅い生徒達の問題を解く様子をじっくり観察すると以下のようなことがわかります。

 

〇問題に取りかかるまでが遅い

 なんでしょうね。「始め!」の合図がかかってから、ゆっくりと筆箱から鉛筆をとり出し、問題を読み始めたと思ったら、今度は使いもしない消しゴムをしじみじと眺めていたりする、そういう生徒がいるのです。良くいえば「大物」ですが、どう考えても時間内に解き終わることはできません。

 

〇問題文を読むのが遅い

 国語はもちろん、理科であれ社会であれ、問題文を読まないと解くことはできません。しかし、あまりにも丁寧に何度も何度も問題文を読んでいると、それだけで試験時間は終わってしまいます。おそらくそうした生徒は、自分自身が納得いくまで読解しないと先へ進めないタイプなのでしょう。

 

〇どう答えを書くべきかわからない

 問題を把握し、答えもなんとなくわかっているのです。しかし、どう答えればよいのかがわからない。解答用紙の1㎝でペン先が空中停止している生徒たちです。

 

〇字を書くのが遅い

 字を書くのに丁寧に書くのはすばらしいことです。しかし、テストではある程度の丁寧さは犠牲にしても素早く升目を埋める能力が要求されます。しかも最近のテストは記述問題が増えています。あまりにゆっくり丁寧に書いていたのでは間に合わないのです。

 

〇解答に迷う

 せっかく書いた答案を何度も何度も消しゴムで消す生徒がいます。おそらくは自分の書いた答に自信がもてないのでしょうね。

 

こうした生徒達は、とにかく問題演習を多く積むことで、時間内に終わらせる「スピード感」を身につけなくてはいけません。それに最も効果的なのが「模擬試験」なのです。

 

 (2)テストに慣れる

 テストには、特有の「約束事」があります。漢字指定・ひらがな指定・複数回答・記号選択・正誤問題、そして算数なら式の書き方。国語でも文字数の数え方(解答欄の使い方)が作文とは異なります。

 テストを多く受けることで身に着く「テスト慣れ」は入試に向かって必要なスキルです。入試は1回勝負ですから、予行演習は欠かせません。そこで、6年生にもなると、何度も模試を受けることで、一定の時間で問題を解く練習を積むのです。また、模試といえどもテストの緊張感は独特です。それに慣れるという効果も大きいですね。

 

 (3)弱点を把握する

 テストを受ける最大の目的は、自分の弱点を把握することにあります。例えば算数が得意だと思っていたら、つまらない計算ミスばかりして得点を落とす、そんなケースもあるでしょう。社会科が得意なつもりでいたのに、歴史年代の暗記に穴がある、そんなケースもあるかもしれません。国語についても、長文読解は得意のはずだったのに、韻文が壊滅的であるかもしれませんね。こうした欠点を明らかにするのが模試の最大の目的なのです。

弱点が把握できたら、その穴埋めの方法を考えていきます。

 

くれぐれも模試の結果に一喜一憂することなく、着実に模試を利用していってほしいと思います。

 

3.模試の結果は気にするな!

これがアドバイスです。理由を説明しましょう。

 

 (1)模試と入試の受験者層が異なる

たとえば開成を目指す生徒なら、サピックスオープンを受けなければいけません。

開成に最も多くの合格者を出しているのがサピックスだからです。

他の塾ではそこまでの合格者がいませんので、過去の合格者・不合格者の成績に基づいたデータが出せないのです。

また、逆に、中堅校を志望するなら、それらの学校の合格者数が最も多い塾の模試を受ける必要がありますね。

しかし、すべての受験校について、適正な受験者層の模試など存在しません。しかも「〇〇中学オープン」といったターゲットを絞りすぎた模試は受験者数が少なすぎるために判定精度が著しく下がります。

受験者数が多い模試は実際の入試の受験者層を反映せず、実際の入試の受験者層を反映させる模試は判定精度が低い、そういう矛盾を内包しているのが「模試」の宿命なのです。

 経験から言うと、あまりにその学校のスタイルに特化したテストよりも、一般的な学力を総合的に図るテストのほうが、生徒の実力を掴みやすいと思っています。そのうえで、過去問題の出来具合を詳細に検討していくほうが生徒の合否を予想しやすいと思います。

 (2)模試の問題がよくない

最近サピックスの模試の問題を見ていて気がつきました。

異常に難しいのです。

あきらかに実際の本番入試問題よりも難易度が高くなっています。

こんな問題、解けなくてかまわない! むしろ解ける必要はない!

プロの目から見て、あきらかに問題の質が受験生にふさわしくないのですね。

こんなテストでは、正確な判定は出ないはずです。

また、四谷大塚の合不合判定テストも曲者です。明らかに、日頃四谷大塚の日曜テストを受けている生徒に有利な問題のスタイルとなっています。

そこで、複数の塾の模試を受けてみる、というのも一つの方法です。

 

模試はあくまでも現時点のお子さんの立ち位置と弱点を把握するためのものです。

その結果に一喜一憂することには意味がありません。

模試の結果が素晴らしくても、入試本番での成功が約束されるわけでもありませんし、その逆もいえますね。

テストを受けたら、間違い直しを徹底的に行い、弱点を把握して前に進む、ただそれだけが有効な模試の活用法となります。