(※2024.3.20加筆修正)
ご存じ日能研です。
教室数が多いため、知名度も高いですね。電車の車内広告の「四角い頭を丸くする」をご覧になった方も多いでしょう。口の悪い他塾教師が、「丸い頭を四角くする」と揶揄していました。ひどいですね。
1.日能研の二つの法人について
さて、その日能研ですが、首都圏では同じブランドで2つの別法人が運営しています。関東系といわれる(株)日能研関東と、本部系といわれる(株)日能研の二つです。
そのほか、日能研関西・日能研九州・日能研東海というのがありますが、ここでは触れません。
会社概要を見るとこうなっていました。
(株)日能研関東 |
(株)日能研 |
|
設立 |
1973 |
1973(創立1953) |
代表者 |
小嶋隆 |
高木幹夫 |
教室 |
[神奈川] 日吉校、たまプラーザ校、新百合ヶ丘校、青葉台校、川崎校、センター北校、武蔵小杉校、宮前平校、新川崎校 [東京] 調布校、二子玉川校、旗の台校、八王子校、成増校、多摩センター校、巣鴨校、浅草橋校、新中野校、立川校、蒲田校、田無校、府中校、大井町校、自由が丘校、池袋校、明大前校、荻窪校、三田校、中目黒校、駒沢大学校、品川校 [埼玉] |
【神奈川】 菊名校、センター南校、中山校、相模原校、鶴見校、横浜校、中央林間校、二俣川校、戸塚校、戸塚校東戸塚教室、上大岡校、金沢文庫校、横須賀中央校、港南台校、大船校、藤沢校、藤沢校湘南台教室、茅ケ崎校、本厚木校、小田原校 【東京】 赤羽校、ひばりが丘校、練馬校、西日暮里校、竹ノ塚校、千住校、高田馬場校、上石神井校、お茶の水校、青戸校、国分寺校、吉祥寺校、錦糸町校、深川校、豊洲校、勝どき校、目黒校、渋谷校、経堂校、成城学園前校、町田校 【千葉・茨城】 |
高木幹夫氏は御年69歳、1984年に父親が創立した塾の経営を引き継がれました。小嶋隆氏は御年55歳、やはり父親が作った塾を2006年に引き継いで現在に至ります。どちらもいわゆる「二代目」ですね。もともと先代の高木氏の塾のフランチャイズだった先代の小嶋氏が独立した形だと思います。今は本部系は新横浜に、関東系はセンター北に本部があります。
まあ設立の経緯だとか経営者が誰だとかは、通う生徒にとってはどうでもよいことです。近くに日能研の看板を出した教室があればそこに通う、ただそれだけの話ですよね。では、もし通える範囲に両方の教室があったらどうでしょう?
例として、横浜市営地下鉄のセンター北駅とセンター南駅の日能研をとりあげます。
港北ニュータウンの中心として子育て世代が多いエリアです。
センター北駅にほぼ直結しているのが関東系の本部校舎です。センター南駅前が本部系の校舎です。なにせこの両駅は歩いていけるくらいの距離ですからね。迷います。
物凄くおおざっぱにまとめると、以下のような違いがあります。
〇本部系・・・子供の学びや自主性を重んじる姿勢
〇関東系・・・勉強をやらせて合格実績を出す姿勢
もしご家庭の方針が、あまりがつがつと勉強をやらせたくない、ゆるく学んで、それで合格できる学校でかまわない、というものならば本部系がいいですね。また、あくまでもきちんと宿題管理をしてもらい、目標校合格を第一に考えるなら関東系といえるでしょう。
ところで、最新の情報でなくて恐縮なのですが、以前の関東系は予備校のようなシステムでした。社員は教材作成スタッフと、あとは事務運営スタッフだけで、授業を担当する教師は非常勤扱いなのですね。常に教室に詰めているスタッフは、授業を担当する教師ではありません。進路指導もこの事務スタッフが行います。さすがにそれでは何の指導もできないので、事務スタッフが教室内に教師と一緒に入り、「ダブルティーチング」と称して宿題チェックなどを行ったそうです。もちろんこれだけでは進路指導はまだできませんので、本社から詳しいデータが提供されます。過去の生徒の模試データ・志望校・合否結果などが一目瞭然となっているものです。それを見れば適切な進路指導ができる、というわけですね。社員の教室スタッフは、近隣のマンション等へのポスティングも自ら行ったそうです。入室率で賞与の額が変わるからです。 教師は、夕方になると教室に現れ、授業だけを実施して帰る、まさに予備校スタイルです。
これは非常に合理的なスタイルですので、初期の日能研関東の飛躍に効果絶大だったのでしょう。もっともその後、他塾との戦い(特にサピックス)に敗れたのも、これが原因だと思われます。私に言わせれば、普段授業を教えていない人間が進路指導をするなんてありえません。もっとも、その後改革が実施され、古株の講師が次々と退職させられたそうですので、今は変わってきていると思われます。
2.日能研の長所
日能研の長所といえば、こんなところでしょうか。
〇教室数が多い・・・通いやすい
〇教材が充実している・・・安心感
〇カリキュラムが整っている
〇豊富な情報をもっている
〇合格実績を正直に公表している(たぶん)
〇中堅校に強い
〇食事休憩がある
とくに最後の食事休憩については、メリットと感じる方も多いでしょう。食事休憩無しのサピックスとの最大の(?)違いです。といっても、19時に15分だけですので、軽食です。さらに教室によっては、宅配弁当サービスやマクドナルドと提携していて、注文もできるそうです。
3.日能研の短所
短所はこれです。
〇難関校に強くない
〇生徒のレベルが高くない
〇費用がわかりにくい
〇Nバッグが恥ずかしい
もしお子さんが、最難関校を目指すなら、日能研は選びにくい塾です。もちろん合格者も多数いますが、往時の勢いはありません。主戦場の神奈川でも、難関校はのきなみサピックスに負けました。筑駒にいたっては、12倍以上の差がついてしまいました。
開成 | 38 |
麻布 | 59 |
筑駒 | 8 |
慶應普通部 | 13 |
栄光 | 53 |
聖光 | 32 |
駒場東邦 | 37 |
海城 | 62 |
灘 | 42 |
武蔵 | 21 |
桜蔭 | 21 |
女子学院 | 54 |
雙葉 | 30 |
豊島岡 | 75 |
慶應中等部 | 7 |
慶應湘南藤沢 | 9 |
渋谷渋谷 | 42 |
渋谷幕張 | 85 |
また短時間集中型の学習をさせたいなら、やはり向きません。逆に、中堅校、とくに神奈川の学校を目指すなら情報が豊富ですし、ライバルも多くいます。親は勉強のことはわからないからとりあえず塾に行きなさい! という感覚なら、悪くはない選択でしょう。知人の日能研社員に聞いたところ、テスト後に「採点ミス」「出題ミス」についてのクレームが皆無だとか。サピックス教師の知人曰く、テスト後のクレーム・問い合わせは多数だそうです。両塾の親の温度差が表れていますね。
私の中では勝手に「イトーヨーカドー」だと思っています。どこにでもあり、一通りの食材はそろっているので日常使いには適していますが、凝った食材も高品質の食材もありません。それらは成城石井や明治屋・紀伊国屋に行かないと入手できないのです。
(なにげなくイトーヨーカドーに例えましたが、イトーヨーカドーも衰退・大量閉店中でした。もっとも経営的にはセブンイレブンが好調です)
4.お勧めできる塾なのか?
おすすめできる塾の一つだと思います。
知人から塾についての相談を受けることがよくあります。
そのお子さんの学力や性格等を知らなければ、そしてご家庭の方針がわからなければ何のアドバイスもできません。
そういう際には、最寄り駅にどんな塾が看板を出しているのかを聞いてみます。日能研か四谷大塚があれば、そのどちらかを選べばよい、そういうアドバイスになります。無難な選択、ということですね。
逆に、看板が出ていても、入塾する際にはよく検討したほうがよい塾というものがあります。SAPIX、ena、早稲田アカデミー、個別指導塾、等ですね。そのあたりについては別の記事で詳しく書いています。カテゴリー「塾選び」のところにまとめてあります。
↓こちらは基本編です。
5.市販教材について
私が塾を評価する重要ポイントの一つに、「オリジナルのテキストがあるか?」というものがあります。テキストをゼロから構築するのには多大な労力・費用がかかります。多くの塾はそれをする体力がないため、四谷大塚の予習シリーズを使ったり、栄光の教材を使ったり、あるいは塾専用教材出版社のものを使ったりします。しかし、やはりその塾の指導方針に即した教材を自社開発したほうが指導しやすいに決まっているのです。きちんと教材を自社開発しているところは、塾としての「真面目さ」を感じます。
日能研はその意味で「真面目」だと思います。
さらに日能研は、「みくに出版」という出版部門から実にたくさんの参考書・問題集を出版しています。まず過去問題集については、銀色の表紙が特徴的なものが、教科別に出版されています。教科別なので、1教科だけ強化する際には使いやすいですね。またその他の問題集も、ざっと見てみたかぎりでは、なかなか使いやすそうです。小学館や学研のような塾部門をもたない(少なくともガチの中学受験部門を持たない)出版社が作る参考書は今一つの場合が多いのですが、日能研ブックスのシリーズは悪くないと私は評価しています。
また、進学情報誌として、「進学レーダー」という雑誌があります。ためになる記事も多いので、つまらないネット掲示板など見るよりよほどきちんとした情報が入手できますね。