うちの子がカンニングをしているといわれました。どうしたらいいでしょうか?
こう相談されたことがあります。
ううん、難しい問題ですね。
今回は生徒のカンニングと対処法についてまとめてみたいと思います。
「うちの子はカンニングなんかと無縁だから」そう思って画面を閉じる前に、ぜひ最後までお読みください。
1.低学年のうちのカンニングはめずらしくない
最初にお話ししておきたいのは、子供のカンニングは珍しくはない、ということです。
「珍しくはないといっても、うちの子は関係ないでしょ。」
そう言いたくなる気持ちはわかりますが、まずは聞いてください。
小学生はカンニングに対する罪悪感があまりないのが普通といってもいいでしょう。
だから、見る機会があれば、罪悪感などなにもなしに、つい見てしまうのですね。
しかも、カンニングの仕方というのが、実に稚拙です。
身を乗り出すようにして前の子や隣の子の答案をのぞき込み、それをそのまま書いてしまう、そんな生徒は実は珍しくないのです。
そういえば、私が小学1年生のときのテストで、隣に座っていた女の子が私の解答を丸写しにし、あげくのはてには氏名欄まで私の名前を引き写していたことがありました。生意気な小学生だった私は「それはカンニングというんだよ」と教えてあげたことを覚えています。
やがて、どうやらこれはカンニングというらしい、そしてそれはやってはいけないことらしい、ということに、徐々に気が付いていくのです。
そのきっかけというのは、自分がカンニングされたときです。
今日のテストに備えて漢字の練習を昨日一所懸命やった。今日こそは満点をとるぞ! と張り切ってテストに臨んだとき、隣の子が自分の答案をのぞき込んでいたらどうでしょう?
とても不快ですよね。
こうして、カンニングをされるのは嫌なものなんだ、ということを身をもって知り、やがて自分もやらなくなります。
だいたい小4の前くらいでしょうか。
だから、低学年のうちのカンニングはさほど心配することはありません。
もちろん、放置しろ、といっているのではありません。
見つけた場合はその場で注意をします。
「自分の力で頑張るんだぞ。」と言って。
しかし、これもその場での注意でなければ効果はありません。
何日もたってから注意したところで、本人はカンニングしたという事実すら忘れているのです。
低学年なんてそんなものですね。
しかし、4年生になってからのカンニングは注意が必要です。
2.高学年のカンニングは要注意
4年生といえば、受験に向けたカリキュラムがすすむ時期ですし、学校見学等を通じて、受験校を意識し始めるころです。また、公開模擬試験のようなものを受験する機会も出てきます。
点数に対する欲が出てくる時期なのですね。
この欲が良い方向に向かえばよいのですが、やはり子供のこと、水が低きに流れるように、安易な道へと走りがちです。
それが、カンニングの原因となるのです。この時期になってからのカンニングは、「そんなものだよ」「自然にやらなくなるよ」と放置するわけにはいきません。
4年生段階でのカンニングは、徹底的に駆逐する必要があります。
〇カンニングは絶対にバレる
〇カンニングをすると、物凄く叱られる
〇カンニングは絶対悪なんだ
このことを、身に染みてわからせなくてはいけません。
この時期にきちんと指導をしないと、カンニングが癖になってしまうのです。
いついかなる時でも、他人の答案を見ずにはいられない。
そうなってからでは、矯正はとても困難です。
6年生の教室にて
たとえば、6年生に小テストをやったとします。
あくまでも授業中の小テストですので、その点数が重大な問題を招く、そういった性質のものではありません。
ところが、カンニングに精を出す生徒というのが必ずいるものなのですね。
そこで、教室全体に注意をします。
「テストは実力で受けなければ何の意味もないからな。」
それでも止めません。そこで、もう一度教室全体に話をします。
「たとえ隣の子の答案が見えてしまっても、絶対見てはだめだぞ。カンニングを疑われるような行動はしないようにな。」
それでも止まりません。そこで、こう話をします。
「みな一旦鉛筆を置きなさい。残念ながら、この教室でカンニングをしている生徒がいる。自分のためにはならないぞ。本番入試でやってしまえば、不合格になるんだ。第一、一所懸命勉強してきたのに、隣の生徒にのぞき込まれたら誰だって不快だろ? 自分の力を信じて頑張れ。」
それでも止めないのです。
自分のことだと思い至らないのでしょうか。
そこで、当該生徒の真正面に仁王立ちをして、生徒を注視します。
生徒は何度もこちらの顔を見ては、目を伏せます。何度もです。
いつものようにカンニングをしようとして目をあげると、私と目が合うわけですね。それであきらめるのですが、また目をあげて、また私と目が合う。その繰り返しなのです。
結局テストの時間中、私ににらみつけられたまま、テストは終了します。
もちろん得点は、普段取っている点数とはくらべものにならないような低得点に終わります。
こういう生徒は、もうカンニングが日常の習慣化してしまっているのです。
だから、何があろうと見ずにはいられない。
そのため、すでに得点力が落ちています。
こうなってしまうと重症です。
3.カンニングは必ずバレている
私も教師になってからわかったことです。
カンニングって、教師からは全部バレバレなんですね。
生徒の目の動き、頭の角度、手の動き。
これらが不自然なので、簡単に見抜けるのです。
それでも、バレていないと思って姑息にカンニングを繰り返してしまう。
この状態がとても危険なのは、こうした生徒は本番入試でもやってしまうのです。
もちろん、入試会場の試験監督の先生は全てお見通しです。
黙ってリストに✔を入れ、不合格にするだけです。
実際にも、実力はあったのにカンニング癖がなおらず、ほとんどの学校を不合格になった生徒というのがいました。
塾から注意されたことがないから大丈夫か?
もちろん、大半の生徒がカンニングとは無縁です。前に座っている生徒の答案が丸見えであったとしても、それに気が付かないほど自分の答案に没頭しています。仮に気が付いたとしても、注意を払いません。さらに、テスト中にトイレへ行く際、自分の答案用紙をそのままにして平気で席を立ちます。真後ろの生徒から丸見えです。おいおい、警戒心無さすぎだろ、と思いますが、後ろの生徒も全く見ようとはしません。これが普通なのです。
だから、安心して大丈夫です。
ただし、カンニングがわかっていても(教師には100%わかっています)、塾が親に連絡してくるとはかぎりません。むしろ、連絡しないほうが普通です。
本人に直接注意をし、それで矯正されればそれがベストだからです。
さらに言えば、塾としても余計なトラブルは避けたいものです。
生徒のカンニングを親に連絡する
→親は子供に問い質す
→子供は否定する
→親は子供の言い分だけを信じる
→塾に対して逆ギレする
こうしたストーリーが見えますので。
4.対処法
カンニング癖への対処は初期対応が全てです。
また、子供の成績に親があまりにもこだわりが強いと、子供がカンニングに走る傾向は確かにあります。とはいえ、必ずそうなるものでもありません。
では、逆に、カンニングをしない生徒(もちろんこれが大多数です)というのはどんな生徒なんでしょうか?
〇ぼんやりしていてカンニングのようなことに思い至らない
〇正義感が強く、見られるのも嫌だし見ることもありえない
〇自分で頑張った教科なので、自分の力で勝負したい
ほとんどの生徒が上記の理由からカンニングをしません。
簡単な話です。
一所懸命勉強すればよいのです。
そうすれば、カンニングはしたくなくなります。
5.残念な実例
その1
A子の父親からのクレームです。
「うちの娘が、隣の席のB子がいつも自分の答案をカンニングしているので、テストに集中できないといっている。B子を辞めさせるか、クラスを替えろ!」
その気持ちはわかります。
誰だって、カンニングされるのは嫌なものです。
いきなり辞めさせることはできないとしても、ここはB子に注意をする場面でしょう。
しかし、残念なことに、B子は悪くないのです。
実は、カンニングの常習犯はA子のほうであり、B子は被害者なのでした。
このA子の心理状態というのがよくわかりません。
なぜ真実と真逆のことを親に言いつけたのでしょうね?
もしかして点数の低いことを父親に咎められ、とっさに嘘の理由でも言ったのでしょうか。
このタイミングで、真実をA子の父親に言ったところで無駄です。娘の言い分しか聞く耳はもたないからです。
その2
C男は、その日のテストの答案をすべてカンニングしました。試験監督の先生がだめですね。斜め前に座っていたD太の答案と、C男の答案用紙が全く同じだったのです。
記述問題の解答も、正解も、不正解も。
正解をカンニングするならまだしも、不正解の部分までD太の答案をまるまる写し取るというあたりが、C男の稚拙さを表しています。
採点している教師が気が付きました。
座席表と照らし合わせて真相が明らかになったのです。
さすがに、ご家庭に連絡をとるしかありません。お父様がいらっしゃいました。
しかし、頑としてわが子の非を認めないのですね。
わが子は自分で解いた。わが子の答案を丸写ししたのはD太のほうだ。
この主張を曲げないのです。
その日の座席配置を説明し、前に座っていたD太がC男の答案を見ることは不可能であることを説明しても信じようとはしません。
あげくのはてに、「お前らが答案を改ざんした。うちの子をはめる気か!」といって激高される始末です。
自分の子供を信じるのは大切ですが、この場合は少し違うと私は思うのです。
まだまだ残念なケースはたくさんあるのですが、書いているうちに哀しい気持ちになってきたのでこれくらいにしましょう。
うちの子はこうでなくてはならない。
その押しつけが子供を追いやってしまうのです。
ぜひお子さんを信じてあげてください。
お子さんの、出来る部分も出来ない部分も、強さも弱さも、全てを理解して丸ごと信じてあげてください。
そうすれば、姑息な手段で点をごまかすようなお子さんにはならないはずです。