今回は、このテーマで書きました。実は、毎年必ず聞かれることがあるのです。
「先生、やっぱり受験番号は早い番号のほうがいいですよね?」
もちろん否定します。
「そんなことはありません!」
それでも、生徒の受験番号を伺うと、一桁順位だった! なんてことがよくあるのです。
今でこそネット出願が主流になったから良いのですが、まだネット出願でなかった時代、出願日の早朝から学校の門の前に並んで早い番号を取る、そうしたご家庭がありました。その場合、犠牲になるのはだいたいお父様です。真冬の早朝、会社に行く前に夜明け前から並ぶのです。
受験番号が合否に関係するはずがありません。そんな当たり前のことが、いざわが子の受験を前にすると、わからなくなってしまうのでしょうか。
「親がわが子にしてあげられるせめてものことだから」
「番号が早いと、熱意が学校に伝わるかもしれないし」
そうお考えになるご家庭には、もう何を言っても聞いてもらえないのです。郵送で出願を受け付ける学校の場合には、わざわざ千代田区にある東京中央郵便局に一番に出しにいく、そうした方もいました。
そこで今回は、データをお見せしますので、この問題に結論を出してしまいましょう。
1.受験番号別の合格者グラフ
(1)A中学
学校名はあえて伏せました。人気の学校です。
ごらんいただければお分かりのとおり、受験番号と合格人数の間に相関関係はありません。それはそうですね。この学校の募集要項にはこうあるのです。
※受験番号は、出願情報入力・入学検定料支払いの順とは関係なく、ランダムに発番されます。
よい時代になりました。ネット出願の1番のメリットといってもよいでしょう。ただし一つ気になる点があります。1200番台の合格者が数名なのは、出願人数が少なかったからとわかるのですが、1100番台の合格者数が妙に少ないですよね? 出願人数は100名いたはずなのですが。
また、800番台から少しずつ右肩下がりになっているのも気になります。
もしかして、ランダムといいながら、最後の駆け込み出願者は番号が後ろになっているということなのでしょうか?
まあ1000番台の合格者のほうが400番台の合格人数より多くなっていますので、グラフに入れた矢印は誤差の範囲と見ても良いと思います。しかし、1100番台の合格者の少なさは誤差では片づけられないと思うのです。
(2)B中学
こちらの学校もネット出願なのですが、受験番号の発番については、このように書かれていました。
※受験番号は出願情報入力や受験料振込の順によって決定されるものではありません。
ランダムとは書かれていませんが、振込順ともなっていないので、おそらくはランダムな発番なのでしょう。しかし、グラフを見ると、500番以降については何等かの順があるような気がします。
しかし、1~100番までの合格者数が少し多くなってはいるものの、400番台までは受験番号による合格人数に有意な差は認められません。しかしそこから右肩下がりとなり、600番台の合格者数は明らかに少なくなっています。
(3)C中学
C中学のグラフはどうでしょうか。
400番台から600番台にかけて右肩下がりとなっています。しかし、600番台の合格者数と300番台の合格者数にさほどの差が無いところを見ると、これも誤差の範囲と考えることができるかもしれません。しかし、700番台の合格者数の少なさは、誤差と考えにくいですね。
この学校の受験番号の発番はこのように書かれていました。
【受験番号について】
受験番号は、2024年1月10日(水)午前9:00以降、受験料お支払い完了の順番で発行いたします。
(コンビニ決済を選択された方は、お支払い確認後の受験番号の発行になりますのでご注意ください。)
(4)D中学
こちらも人気校なのですが、合格者数が少なく、それに伴って受験者数もそう多くはありません。そのため、グラフにしてみてもはっきりとしたことはわかりにくいですね。300番台が少ないですが、この学校は例年受験者数が400人を超えない学校ですので、単に出願人数が少なかったためと思われます。
ところでこの学校のHPのQ&Aコーナーにはこうありました。
Q:受験番号が早いほうが有利ですか?
A:全く関係ありません。
それはそうですよね。また、学校の募集要項にはこうありました。
※出願期間になると、受験料のお支払いが可能となり、受験番号が発行されます。
※受験料のお支払いが完了すると受験番号が発行され、・・・
つまり受験料支払い順の発番となるのですね。そう考えると100番以下・100番台・200番台に有意な差が認められないので、番号による合否の差は生じていないとみることができるでしょう。
(5)E中学
こちらの学校も、受験番号の発番について特に開示されてはいませんが、受験料支払い後に受験票の印刷ができるとありますので、出願(=受験料支払い)順の発番と考えてよいでしょう。
グラフを見ると、やはり後半に行くにしたがって右肩下がりの傾向がうかがえます。とくに500番台は明らかに少ないですね。
(6)F中学
この学校の受験番号の発番についてはこうなっていました。
※受験料納入が完了した時点で、支払い完了メールが送付され、受験番号が発行されます。
こちらも受験料支払い順に番号が発行されるのですね。しかしグラフを見ていただければわかるとおり、とくに若い番号が有利ということはありません。あえていえば400番台の合格者が少ないかなという印象です。誤差の範囲とはいえないような気がしますね。
(7)G中学
こちらの学校は、募集要項にはこのように書かれていました。
※受験番号は,出願情報の入力や入学検定料の支払いの順によって決まるものではありませんので,間違いのないように慌てずに入力・手続きを行ってください。
なるほど。とくにランダムとも書いてありませんが、支払い順でもないということですね。グラフを見ていると、200番台までは差がみられませんが、300番台・400番台と合格者が右肩下がりです。
(8)H中学
こちらの学校では、受験番号についての情報は公表されていませんが、「受験料お支払い後受験票を印刷して・・・」となっていますので、普通に支払い順とみてよいでしょう。
その割には受験番号と合格者数の間にとくに相関関係は見てとれませんね。
2.受験番号について
(1)受験番号の発番スタイル
こちらについては明記してある学校もそうでない学校もありますが、おそらく以下の2パターンと思われます。
①受験料支払い順
従来の「出願順」と同じです。ネットバンキング・コンビニ支払いによらず、受験料を支払った順に受験番号が発番されます。
②ランダム
A中学のようにランダムを謳っている学校もあります。このスタイルをとるため、出願・受験料の支払から受験票発行までタイムラグが生じます。
③支払い順とランダムのミックススタイル
募集要項には「出願順(支払い順)ではありません」となっていても、ある程度順がついていることが推測される学校です。おそらくは出願期間中のどこかのタイミングで一度発番しているのではないかと思われます。そこまでの合否に有意差がみられないからです。しかし、最後のほうのブロックについては明らかに合格率が下がっていますので、こちらは後から発番していることが予想できるのです。
(2)ミライコンパス
ご存じの方も多いと思いますが、ほとんどの中学で出願→発表についてはmiraicompassというシステムが使われています。ただし学校によってアレンジが加えられていますので、必ずしも全く同じ出願スタイルというわけではありません。
おそらくは、上述の受験番号発番スタイルを選択してシステム化できるようになっているのではないでしょうか。
3.受験番号と合否の関係
ここから先は、完全に私の憶測にもとづく結論です。
受験番号と合否には関係が無い!
グラフをよくご覧ください。
受験番号が早いから合格者数が多いとはなっていませんね。
これが事実なのです。
ただし、最後の1~2ブロックについてはどうも怪しい。明らかに合格率が下がっています。
その原因を推理しました。
(1)最初は受験するつもりが無かったのに、間際になって急に出願した
今回グラフ化した学校は、すべて第一志望校として受験する生徒ばかりの学校です。しかも、1日しか受験日が無い学校をえらびました。複数回受験の学校では番号と合否の関係を見定めにくいからです。
本来なら第一志望の学校として真っ先に出願手続きを済ませそうなものなのに、ぎりぎりのタイミングで出願するのはどういうことなのでしょう。
◆成績低迷により一度は受験をあきらめたが、やはり諦めきれずに最後の最後になって出願した
ありそうですね。秋から冬にかけて行われる模試の結果を見て、一度は受験をあきらめたのですが、どうしても志望校に対する思いが断ち切れない。その思いはよくわかります。でも、一度はあきらめたということは、成績も合格ラインに達していなかったのではないかと推測できます。合格率が低くなる要因の一つです。
◆1月校の快勝により、急遽2月校でチャレンジすることにした
これもありそうです。受験料も3万円もかかりますからね。1月校の結果を見てから急遽出願する方も多いでしょう。しかし準備不足のため合格率が下がるのです。
◆間際に思い立って出願はしたものの、他校の合格を見て受験しないことにした
これはどうでしょう? 念のために出願しておいた押さえの学校を受験しないで済んだ、こうしたケースはたくさんありますが、今回グラフ化したのはほとんどが2月1日1回しか受験が無い学校です。(2日校もありますが)
このパターンは無さそうです。
(2)出願を後回しにしていた
◆受験番号順にこだわりがまったくないのでのんびり出願した
いいですねえ、この余裕。そうです、別に焦る必要などないのです。別にぎりぎりを攻める必要もありませんが、自分のタイミングで出願すればよいでしょう。
◆出願準備にミスがあり、ぎりぎりのタイミングとなってしまった
いくらなんでもそこまでぼんやりさんはいないだろうと思うのですが、過去には同様のケースが無かったわけではありません。
◆本命校は他にあり、出願が後回しとなった
例えば1月の渋幕が大本命だったり、3日の筑駒、あるいは慶應中等部が大本命の場合があると思います。2月1日の学校は優先順位が低かったのですね。それでのんびり出願したというケースも考えられるでしょう。しかしそもそも優先順位が低かったため、過去問演習も十分にはやっておらず、やはり不合格となってしまった、そういうことかもしれません。
(3)最後の最後まで受験校が決まらなかった
これはまずいです。過去問演習も十分にできません。その状態で受験したところで結果は苦戦するのは目に見えています。
4.結論
最後に結論を言います。
★受験校は早い段階で決定し、出願期間中の好きなタイミングで余裕をもって出願する
当たり前すぎる結論で恐縮です。
とにかく、間際になって受験校で迷うのが一番よくないのです。
早い段階で家族の意見を一致させ、受験校を確定しましょう。あとは出願のタイミングはいつでもよいのです。焦る必要はありませんので、じっくりとミスが無いか確認してから出願しましょう。
※面接の順番
学校によっては午後に面接を実施するところもあります。その面接順が早いほうが午後入試を考える場合には有利ということもあるでしょう。しかし、多くの学校の面接は、必ずしも受験番号順に行われているとは限りません。まあ前半、真ん中くらいまでの番号なら良いと思います。もちろんランダムに発番されている学校の場合はこちらで番号をコントロールできません。
※教室から出る時間
試験終了後、少しでも早く学校を後にしたい(=午後受験に向かいたい)方も多いでしょう。しかし、こちらも教室レイアウト次第です。必ずしも若い番号から先に下校できるとは限りません。しかも、最初の生徒と最後の生徒の時間差はせいぜい30分程度です。ここを気にするのはおろかです。
※補欠繰り上げに有利?
どこかでそんな記事を見かけました。補欠繰り上げの連絡をする際、同じ点数に複数人いた場合には若い番号から電話をかけて定員に達したら打ち切るから、若い番号が有利だという説です。
そんなデマを信じてはいけません。
中学校がそんな愚かな理由で合格者を決定するはずがありません。
たとえ同じ点数に複数人並んだとしても、教科の点数が全く同じということはありえません。例えば国語の点数が高い方を優先するとか、あるいは4科目のバランスが良い生徒を優先するとか、学校の合格者判定会議で必ず優先順位を定めてから補欠繰り上げの連絡をするに決まっています。