中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

アメリカ駐在の方のための中学受験のアドバイス その1

今回は、ピンポイントのアドバイスです。

現在アメリカ駐在中、あるいはこれから駐在予定の方へ、日本の中学受験のアドバイスを書きたいと思います。

1.総論

 企業と赴任先にもよりますが、海外赴任の3~4か月前に辞令が出るケースが多いと思います。(赴任先がスライドする場合はもっと準備期間が短い場合も)

 日本の家・家財道具をどうするか、赴任先の家をどうするか、など考えることは山盛りで大変な日々となります。とくに子供の教育については最重要課題となります。しかも赴任期間が固定されている場合はほとんどありませんね。最低3年といわれていたが、気が付いたら5年いたとか、4年くらいはと言われていたのに2年で急遽本帰国が決まったとか、こればかりは会社都合ですので何ともなりません。そこで、子供の教育については、どう転んでも何とかなるように多面的な準備が基本となってきます。

しかし、その前に、以下のことを決めておく必要があります。

最終的に子供は日本の教育に戻るのか、それともそのままアメリカの教育に乗るのか。

 (1)アメリカの教育に乗ったままとする場合

 例えば子供が小学生だったとして、おそらくはアメリカの現地校に通いますね。

●Elementary school・・・1st Grade(6才〜7才)から5th Grade(10才〜11才)

●Middle School・・・・・6th Grade(11才〜12才)から8th Grade(13才〜14才)

●HighSchool・・・・・・9th Grade(14才〜15才)から12th Grade(17才〜18才)

だいたい日本の小学校・中学校・高校と合ってはいるのですが、HighSchoolが4年間なのは要注意です。そしてもちろん学年の切り替わりが9月ですので、日本の小6の9月にMiddle Schoolが始まり、日本の中3の9月にHighSchoolが始まり、そして日本の大学1年の7月に高校を卒業するくらいのイメージでしょうか。

もっともこれは州によって異なり、また渡米するタイミングによっても変わってきますし、現地校に入学する段階で1学年落として進学することを勧められることも多いので、はっきりとしたことはいえないです。またHighSchoolからは単位制の授業となり、必ずしも同じ年齢の子どもだけが同じ学年ということもなくなりますので。

さらに大学になると多彩です。アイビーリーグに代表されるような私立総合大学がすぐに思い浮かびますが、その他にも、州立大学、公立コミュニティカレッジリベラルアーツカレッジ等となっています。さらに工科大学や芸術系大学等があります。

 一般的にいうと、HighSchool卒業時の18歳で成人した大人とみなされますので、家を出るのが普通です。選んだ大学の寮に入るところから大学生活が始まり、卒業後も実家には戻らず就職するというのが普通でしょう。クリスマス休暇だけ帰るという感じかな。アメリカ映画を見ていると、犯罪者(&予備軍)の20~30代の独身男性が、実家でママと暮らしている、なんてシチュエーションがよく出てきます。あれは、高校を卒業したのに実家暮らしという、登場人物の自立できない幼児性を示しているのですね。日本とはだいぶ異なります。私は早くに父親を亡くしたため同居する母親の生活を支えていたのですが、アメリカで知人に母親と暮らしていると言うと何ともいえない目つきをされたことを覚えています。今にしてみると、「自立できていないダメな奴」という目線だったのですね。失礼な!

 それはさておき、HighSchoolを卒業してしまえば寮に入ることになりますので、いつ日本に本帰国しても問題はなくなります。問題なのはその前に帰国が決まった場合ですね。その場合は全寮制の私立校、Boarding Schoolへの入学(転入)を考える必要があります。あるいは最初から地元の学校には通わず、Boarding Schoolに入れるというのも考慮に値します。教育内容は素晴らしいところも多く、そのまま名門大学への道が開けるところも多数あります。その代わり学費は非常に高いですね。これは所属企業の教育支援規定やご家庭の経済状況、そして何より子供本人のパーソナリティ次第です。小中学生で寮生活に適応できる英語力や精神力があることが必須ですので。

 その他の選択肢としては、日本の私立学校がアメリカに開設した学校というものも2つだけあります。

西大和学園カリフォルニア校・・・幼稚園~中学校

 こちらは平日生の学校と補習校を兼ね備えています。実際に訪問してお話をうかがったところ、平日生は非常に少なく、実質的には補習校だそうです。寮もありませんので、こちらに通うメリットは、カリフォルニア駐在で「現地校は嫌だ、日本人学校でなければ!」というケースだけでしょう。

慶應義塾ニューヨーク学院・・・高校(9th ~12th Grade)4年制

 1990年にニューヨーク州ウェストチェスターに開校されました。この学校の特色は以下のとおりです。

 ・日本の高卒資格&アメリカの高卒資格の両方が得られる

 ・希望者は全員日本の慶應大学へ進学できる

 ・寮が完備

 ・学費・寮費は高額・・・Boarding Schoolと同等

 ・校則は意外と厳しい

校地は広く緑豊かな環境です。ウェストチェスターって、日本人も多く住む治安も悪くないエリアですが、何にもないところですからね。未開発の土地が広がる中に、ポツンポツンとホテルやゴルフ場、大学やレストランなどが点在しています。マンハッタンからそう遠くないエリアに未開の地が広がるのって日本人にはイメージしづらいですね。グーグルアースでごらんください。全体的に緑色!です。

 学校については様々な情報をネットで見かけますが、私自身が直接得た情報はありません。知人のお子さんが進学したくらいなもので。帰国してからの慶應大学が保証されているというのが最大のメリットだと思います。

(2)日本の教育制度に戻る場合

 日本とアメリカの教育制度は大きく異なります。制度というより、教育内容・教育目標・コンセプトが大きく異なるのです。違う方向へ向かう線路を走るスピードも異なる別の列車に途中から飛び移るイメージでしょうか。一番子ども本人に負荷のかかる茨の道です。しかし、最も多いパターンです。

 A:大学から日本に戻る

 帰国生入試による大学受験のほうが入りやすいとは未だに言われることですが、少しずつその優位性は減っています。人気大学ほど入りにくくなっているといえるでしょう。考えてみれば単純な話です。大学にとって「英語以外の学力が不安」な生徒を受け入れるメリットは何かと考えればわかりますね。帰国生が優位な大学・学部のみを受験するのか、それとも入りたい大学・学部があらかじめ決まっていて受験するのか、それによって対応は大きく異なります。

 B:高校から日本に戻る

 私立高校入試の枠は大きく減ってきたとはいえ、帰国生を優遇する高校はまだあります。現地日本人学校の校長の推薦書・学力証明とzoomによる面接だけで合格が決まる学校もあります。高校にとってみれば、高い英語力とコミュニケーション能力に期待しているのですね。さらに高校の生徒の多様性を重視しているということだと思います。しかしこちらも帰国生入試を実施している高校に絞ると選択肢は限られます。偏差値を度外視した受験パターンとなる場合を多くみかけますね。

 C:中学から日本に戻る

 帰国生入試を実施している中学は多数あります。一般入試もできます。本稿ではこれについて詳しく説明する予定でしたが、だいぶ長くなりそうなので、稿をあらためて詳述したいと思います。