あと2日で2024年を迎えます。
そこで今回は2023年を振り返って、来年の入試で出そうな(気がする)重大ニュースを振り返ってみたいと思います。
(出題されそうな順ではなく、思いついた順に書かせてください)
- 1.Generative AI(生成AI)の発達と影響
- 2.新型コロナウィルスの総括
- 3.ジェンダー平等
- 4.インバウンド回復
- 5.G7広島サミット
- 6.猛暑
- 7.原発関連
- 8.普天間移転問題
- 9.ウクライナの戦争
- 10.イスラエルによるガザ地区攻撃
- 11.まとめ
1.Generative AI(生成AI)の発達と影響
みなさんはChatGPTを使ったことはありますか?
もう凄いとしかいいようのないAIですね。AIについては、いつかは実現するが遠い未来である、永久に登場しない、といった2つの考え方がありましたが、そんな論争を吹き飛ばす衝撃がありました。
文章生成に長けたもの以外にも、画像作成に特化して人間としか思えない映像を作成するモデルや、音楽系のものなど、様々なものが次々話題となっていますね。すでに一部の中学校では授業に取り入れるところも出てきたようです。
さて、このテーマを入試に出そうとすると、このように扱われると思います。
(1)否定的にとらえる
◆フェイクニュースや偽画像があふれる→私たちにリテラシーが求められる
大学の世界史の記述入試問題をChatGPTに解かせてみました。出力された解答は、まあびっくりするくらいなめらかな文章なのです。さすが!と思わされる実力だったのですが、よく内容を見てみると、すべての知識が誤っていました。いったいどこから引っ張り出してきたのでしょうかね? 生成AIの弱点として指摘されている点の一つです。生成AIには真贋を見抜く能力は無いため、「本当のような嘘」を吐き出します。それを誰かが意図的に行えば、某国大統領のお好きな言葉を借りていえば「Fake news」が流されることにもなりますね。
◆教育現場が混乱する
学校のレポートにこれを活用されると教育現場が混乱することは容易に想像つきます。現状では否定的な学校が大半を占めますが、時流には逆らえません、いずれは活用の方向に舵を切らざるをえなくなるのでしょう。
◆失業者が増える
10年前でしたか、オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン博士が発表した論文が話題になりましたね。
たしか、10年後には今ある職業の半分が消滅するとか。
そこから10年たったわけですから、少し検証してみましょうか。
THE FUTURE OF EMPLOYMENT: HOWSUSCEPTIBLE ARE JOBS TOCOMPUTERISATION?
というタイトルの論文のリンクを貼っておきますので、興味のある方は読んでみてください。(70ページ以上あるので、さすがに全部読む気はしませんでしたが、57ページ目からリストが載っています)
https://www.oxfordmartin.ox.ac.uk/downloads/academic/The_Future_of_Employment.pdf
冒頭にこう書かれています。
702の詳細な職業についてコンピュータ化の確率を推定し、将来のコンピュータ化が米国の労働市場の結果に及ぼす予想される影響を検証する。
702の職業を全部あげるわけにもいきませんので、確率の高いほうから20並べてみます。
電話営業 / 不動産の権利調査員 / 洋裁師 / 数理技術者 / 保険事務員 / 時計修理工 / 運送業者 / 税理士 / 写真処理技術者 / 口座開設担当者 / 司書 / データ入力係 / 計測器の組立工 / 保険調査員 / 証券業 / 注文受付係 / 融資担当係 / 保険査定士 / スポーツ審判員 / 銀行窓口係
Order ClerksとかMathematical Technicians、あるいは Timing Device Assemblers and Adjustersなどといった何の職業なのかわからないものが多く、適当に訳しました。でも、こうして見ても、まだ消えていない職業ばかりのような気がしますね。とくに運送業など2024年問題といわれるほど人手不足が深刻化しています。
逆に、残るとされている職業を1位から20位まで並べてみます。
(この部分の翻訳は、テーマに敬意を表してAI翻訳のものをそのまま掲載します。これ、便利ですね)
レクリエーション・セラピスト / 機械工、設置工、修理工の第一線監督者 / 緊急事態管理ディレクター / 精神保健・薬物乱用ソーシャルワーカー / 聴覚士 / 作業療法士 / 義肢装具士 / 医療ソーシャルワーカー / 口腔・顎顔面外科医 / 消防・防災第一線監督者 / 栄養士・管理栄養士 / 宿泊管理者 / 振付師 / セールスエンジニア / 医師・外科医 / 教育コーディネーター / 心理学者 / 警察・刑事の第一線監督者 / 歯科医師 / 小学校教員
よかった、教育系は生き残れそうです。
人とかかわる仕事、高度な技能が必要な仕事、総合的な判断を瞬時に求められる仕事、そうした仕事が残るのでしょうか。
そういえば、アメリカの脚本家たちが生成AIをめぐってストライキを行ったニュースもありました。イラストレーターや脚本家といった従来は「特別な才能」がなければできなかった職業が今後仕事を奪われてしまうのかもしれません。
(2)肯定的にとらえる
新しい技術というものは、だいたい普及初期では拒絶反応にさらされるものです。中学入試としては、未来ある子供たちにもっと明るい未来を考えてほしいと思うものでしょう。そこで、生成AIを積極的に活用していくことについての出題などいかにもありそうですね。
2.新型コロナウィルスの総括
本当はまだ終わっていないのですが、やっと今年に「5類」になったことで、日常生活が戻ってきました。
コロナ禍の最中には出題しづらかったですが、総括的に社会に与えた影響など問われそうですね。
3.ジェンダー平等
LGBT理解増進法が成立しました。もう小学生にとっても「常識的」なテーマですので、今後出題が増えると思っています。もちろん肯定的な文脈でです。
社会の多様性=ダイバーシティ を重視することの意義など出されそうですね。
三重県はダイバーシティ社会を推進しているそうで、こうありました。
ダイバーシティ(diversity)は日本語に訳すと多様性ですが、一人ひとりが尊重され、多様性が受容されることで、個人の生きがいや学び、社会の発展や新たな価値創出などにつながります。そうした多様性が受容される社会は、想定外のさまざまな変化へも適応しやすいと考え、県では県民の皆さんとともに、ダイバーシティ社会の実現に向け取り組んでいきます。
多様性こそが社会の強さ・しなやかさを生み出すのですね。
4.インバウンド回復
こちらはコロナの総括として出されるかもしれません。関連して「オーバーツーリズム(観光公害)」や「エコツーリズム」「モノ消費からコト消費へ」などもおさえておきたいポイントです。
5.G7広島サミット
いちおうあげておきますが、あまりに内容がないので、参加国だけ覚えておけば十分です。
6.猛暑
私はつい先日炬燵を出しました。いちおう自分の中で「炬燵は12月解禁」と決めていて(これ出すとたちまち生活環境が怠惰になるので)、いつもなら12月になるのが待ち遠しいものなのですが、今年はいつまでも夏が続いていましたからね。11月に27.5度とかありえないです。
異常気象・地球沸騰化・熱中症特別警戒アラート(来年より運用)といったワードに要注意です。また、関連して線状降水帯による災害、黒潮蛇行、サンゴの白化、漁業への打撃(駿河湾でシラスがとれないとか、静岡で沖縄の魚のグルクンが大量に水揚げされているとか)も注目したいところです。
7.原発関連
原発再稼働の問題や、福島第一原発の処理水海洋放出問題など、ほんとうはとても大切なテーマです。ただし、入試には出しにくいテーマでもあります。どう扱ったところで、国策に批判的な内容にしかなりませんので。
8.普天間移転問題
こちらもとても大切なテーマです。今朝の新聞から共同通信の記事を引用します。
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設を巡り、軟弱地盤改良工事の設計変更を玉城デニー知事が承認しないのは違法だとして、国が承認を求めた代執行訴訟の判決で、福岡高裁那覇支部は20日、知事に承認するよう命じた。承認に至れば、防衛省沖縄防衛局は軟弱地盤がある大浦湾側で工事に着手する。国による代執行訴訟は2例目で、初めての判決。
三浦隆志裁判長は承認について、判決の送達を受けた翌日から休日を除いて3日以内に行うように命じた。判決理由で、承認を巡る別の訴訟で敗訴が確定しているにもかかわらず、知事が対応しないのは法令違反だと指摘。設計変更申請に関する事務を放置することは、社会公共の利益を侵害すると判断した。
承認を巡っては、県が国を訴えた別の訴訟の最高裁判決で今年9月、県側敗訴が確定。斉藤鉄夫国土交通相は勧告や指示の後、承認の代執行に向け10月に提訴。同30日の第1回口頭弁論で即日結審していた。
さらに、ついに行政代執行されました。
この問題をめぐってはいくつかのポイントがあります。
◆沖縄への米軍基地の押し付け
◆沖縄県民の意志の軽視(無視)
◆移転先の不適・・・軟弱な地盤、貴重な海洋生物消失
◆多額の費用・・・当初予算の3500億からすでに2.7倍にふくれあがり、まだ先が見通せない
◆地方自治の崩壊ーー行政代執行
そのほかにも、沖縄県民に対する差別意識(そういえば7年ほど前に、米軍基地ヘリパッド工事反対運動中の人にたいして大阪からきた警察機動隊員が「ぼけ、土人が!」と発言した事件がありました。当時の沖縄担当大臣が「“土人”が差別であると個人的に断定はできない」と発言したこともニュースになっていましたね。)
さて、日本の防衛問題の本質、さらには差別意識にもつながる重要テーマなのですが、やはり7同様、中学入試では扱いづらいテーマです。どうしても国の政治に対して批判的な流れでしか出題できませんので。
せいぜい、普天間・辺野古の位置を地図で選ばせるとか、米軍基地の割合を選ぶとか、琉球の歴史について出題するとかくらいじゃないでしょうか。攻めたところで、米軍基地があることで沖縄にどんな悪影響があるのか考えさせるくらいが限界だと思われます。
9.ウクライナの戦争
現在進行形です。したがって出題しづらいテーマです。NATO加盟国や、関連してEU加盟国などを軽くおさえておく程度でしょうか。もちろんウクライナの位置は確認しておくべきです。
10.イスラエルによるガザ地区攻撃
発端となる、パレスチナのハマスがイスラエルを無差別攻撃したのは10/7です。入試に反映させるにはぎりぎりのタイミングですね。そしてこの紛争も現在進行形です。なかなか出題しづらいテーマではあります。
ここは基本知識である、イスラエルの建国、3大宗教の基本知識、地図で位置を確認、といった程度をおさえておけばよいと思います。
出題するとすれば、ナチスによるホロコーストや、それがイスラエル建国の背景にあったこと、その結果パレスチナ問題が生じたこと、そうした流れになるでしょうか。第四次中東戦争による石油危機も出せそうですね。
11.まとめ
まだまだ気になったニュースはあります。
◆こども家庭庁発足
◆新紙幣発行予定(2024)
◆インド人口が世界一になった
◆マイナンバーカード関連・・・トラブル続き
◆宇都宮ライトレール(LRT)開業
◆ハワイ・マウイ島大規模山火事(ラハイナが消失しました。素敵な街だったのに残念)
◆防衛費増額・・・敵基地攻撃能力(反撃能力)を持つことが決定
◆Jアラート(全国瞬時警報システム)
◆イギリスTPP加盟
きりがないのでこれくらいにしますが、実は時事問題はそう多くは出題されません。
時事問題にからめた文章から、歴史を考えさせるとか地理の常識を問うとか、そういった角度での出題がほとんどです。中学入試用の市販の重大ニュース本をさらっとながめる程度で十分だと思います。
【おすすめの重大ニュース本】
ざっと書店をみてみると、塾が出したものとしては、
〇2024年中学入試用 サピックス重大ニュース(SAPIX)
〇2024年度中学受験用 2023重大ニュース (日能研ブックス)
〇ニュース最前線 2023 (四谷大塚)
〇2024年中学入試用 重大ニュース - 社会&理科の時事問題対策(栄光ゼミナール)
※これは栄光ゼミナールの親会社「Z会」が、グループ企業の「エデュケーショナル・ネットワーク」に作らせたものなので、塾向け専用教材としても売られています。もしかして同じものがお通いの塾で販売されているかもしれません
が売られていました。
こうしてみると、昔より出版するところが減りましたね。
業界の裏事情を言ってしまうと、この「重大ニュース」の作成って、労多くして功少なしの典型なのです。
通常の参考書・問題集というのは、一度頑張って作成すると、毎年利益をあげてくれるものです。中には10年以上改訂なしで売られ続ける強者参考書も見かけます。
ところが、この「重大ニュース」ばかりはそうとはいきません。毎年ゼロから原稿を書かなければならないのです。参考になるような他の出版物も見当たりません。写真等の版権をとるのも時間との闘いです。
したがって、よほど体力(人材&資金)がある塾でないと作成に手を出せないのです。
なるほど、四谷大塚・日能研・サピックスの3大塾くらいしか作らない道理です。まあ今や四谷大塚はナガセ(東進)傘下、サピックスも代ゼミ傘下なわけですが。
どれを選んでかまいません。価格も横並びです。手に取ってみて、気に入ったものを選べばよいと思います。
そのほか塾以外が出しているものとしては、
〇2024年入試用重大ニュース 時事問題に強くなる本(学研)
〇朝日新聞出版「中学受験2023 時事ニュース完全版」
〇読売新聞社「2023入試に勝つ新聞記事」
といったものがありますが、選ぶ意味はありません。中学受験を知らない人たちが作っているからです。
個人的に好きなのはサピックス版です。理由は、見た目が一番すっきりしていることと、思考力系のコンセプトが見えるからです。
好みの問題としか言えませんので、お好きなものを入手してください。