中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

お雑煮、作りますか?(2024.1.29加筆修正)

※2024.1.29加筆修正)

正月あけの授業でしたでしょうか、生徒たちに何気なく聞いてみたことがあります。

「みんな、お雑煮は食べたかな?」

質問の意図としては、お雑煮の地域性について話を発展させる目論見でした。おおざっぱにいって、東日本は焼いた角餅にかつおだしの澄まし汁系、西日本は丸餅に味噌仕立て、さらに地域によってさまざまな特色があります。そんな話から、食文化の地域性と広がりについて授業に入ろうという、いわば落語で言うところの枕のような話題だったのです。

 ところが、衝撃的な事実が判明しました。

生徒の中に、お雑煮を食べたことが無い生徒がいるのですね。それも何人もです。

べつに豪華な特別料理ではないのです。お雑煮ですよ?

さらにリサーチしてみると、おせち料理は全員が食べていることが判明しました。

どう考えてもお雑煮よりもハードルが高そうなおせち料理を全員が食べていたことも驚きです。

からくりがわかりました。

お雑煮は、作るのが面倒くさいから省略されているのに対し、おせち料理は買ってきて蓋を開けるだけなので、簡単に正月の食卓にのぼるのですね。

おせち文化が途絶えていないことを喜ぶべきなのか、お雑煮文化が廃れていることを嘆くべきなのか。

一人の生徒は言っていましたね。

「うちのお雑煮は、麵つゆでつくるんだよ。」

麺つゆは便利で私も多用していますが、お雑煮は麺つゆでいいのか?と思う私は古い人間なのでしょうか。私だって粉末だしや白だしを愛用していますが。もっとも、この話題を保護者会等でしたところ、保護者の皆さま(全員お母さま)の笑いをとれたのは、だいぶ昔です。いつの頃からか、この話をしても、「麺つゆ、なにがおかしいの?」という空気がただようだけなので、話題にすることはやめました。

こんな話をした後日、一人の女生徒が嬉しそうに寄ってきましたね。

「先生、お雑煮作ってもらったよ! 初めて食べたけど、おいしかった!」

「おお、それは良かったね。」

「でね、お母さんが、次からは自分で作りなさい! だってさ。」

「・・・。」

 

お雑煮って、そんなに作るのが大変な料理でしたっけ?

 

本来、お雑煮は「ハレ」の日の特別な料理という意味合いがあります。

そもそも「餅」は、農耕民族である日本人にとって、特別な意味のあるものでした。それを神にそなえた野菜類や「若水」という年初に井戸から汲んだ水で煮込み元旦に食べる風習は、平安時代から続くものです。箸も、両端が細い「祝い箸」を使いますよね。一方を人が、他方を神が使うという「神人共食」の考えを示します。

私も、普段はインスタントやレトルト食品を愛食しますが、押さえるべきポイントってあると思うのです。

来春、ぜひお雑煮をお子さんと食べませんか?

 

ところで、お雑煮については農林水産省のこのHPがおもしろいですね。

www.maff.go.jp

〇北海道:「鶏ガラだし雑煮」・・・砂糖入りで甘めのすまし汁

岩手県:「宮古くるみ雑煮」・・・餅をくるみだれにつける

〇愛知県:「名古屋雑煮」・・・角餅と餅菜だけのシンプル雑煮

京都府:「白味噌雑煮」・・・具材はすべて丸く切る

鳥取県:「小豆雑煮」・・・小豆を入れた雑煮

徳島県:「白味噌あん餅雑煮」・・・甘いあん餅が汁と相性抜群

〇福岡県:「博多のブリ雑煮」・・・大きなブリが入っている

〇東京都:「東京江戸雑煮」・・・コクのあるすまし汁

東京生まれの私からすると、味噌仕立てが不思議な気がします。また鳥取県のものは、「お汁粉だろ!」とツッコミたくなりますが、各地域の伝統の味って面白いですね。