中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

グノーブルの評価とサピックスとの比較

さて、中学受験の塾には、今までとりあげた四谷大塚日能研サピックス早稲田アカデミー・ena以外にもたくさんの塾があります。

私もさすがに全ての塾について詳しいわけではありませんが、内情について多少なりとも知っている塾をいくつかとりあげてみたいと思います。

グノーブル

先日、知人の母親から言われました。

「やっぱり今は、サピックスよりグノーブルなんでしょ?」

なるほど。グノーブルもそう評価されるようになったのですね。

グノーブル設立の経緯について語るためには、SAPIX創立の経緯についても語る必要があります。けっこう複雑な話なのですが、そこが本題ではないので簡単に。

まず、TAPという難関校に抜群の合格実績を誇る塾がありました。TAP小学部(中学受験部門)とTAP中学部(高校受験部門)の2つの法人に分かれており、さらにその上に株式の大半を持つ理事長が別にいました。で、この理事長のやり方に反旗を翻し、小学部・中学部の代表取締役をはじめとした主要メンバーがごっそりと離脱して作った塾がSAPIXというわけです。1989年のことでした。

やがてSAPIX中学部が高校生の大学受験部門の「NUXUS」というブランドを立ち上げ、英語が専門の中山伸幸氏が代表となります。この中山氏が、SAPIX中学部と対立して2006年に離脱、グノーブルを作ったわけです。

中山氏が抜けたあとのサピックス中学部はやがて代ゼミに買収され、その後に小学部も続きます。やがて小学部の元社長がグノーブルに合流して2013年に中学受験部門を立ち上げることになります。この時、サピックス小学部から多くの教師が引き抜かれました。もっとも、この引き抜かれたメンバーも玉石混交と聞きます。それはそうでしょうね。SAPIXに何らかの不満があったから辞めるわけで、SAPIX内での評価が高かった先生はそうそう辞めないでしょうから。もっとも、サピックス小学部も代ゼミに買収された直後のことですから、そのこと自体に不満を持つ者もいたことでしょう。

その後のサピックス小学部の順調な成長ぶりを見ると、グノーブルに引き抜かれた教師の穴はそう大きくはなかったのかもしれません。SAPIXの分裂後にTAPが消滅したのとは対照的ですね。

 

こうしてみると、中学受験のグノーブルは、サピックス小学部の指導方針を踏襲していると思われます。そこに、大規模化してしまったサピックスにはないきめ細かさを付け加えている、そんなところではないでしょうか。

しかし、グノーブルの校舎数が13校舎にも増えてきた現在、きめ細かい指導に期待できるかは不明です。教材や教師についても、サピックスの進化版ならよいのですが、劣化版だと困りますので、見極めが必要です。

ところで、中学受験のグノーブルは大学受験のグノーブルとは別物なのでご注意ください。大学受験部門はなかなか好調のようですね。中山氏はカリスマ的人気があると聞きます。中学受験部門に、そのようなカリスマ講師がいるのかどうかは聞こえてきませんが、中学受験は講師の実力だけでは何ともならない世界です。教材・テスト・カリキュラム・情報等の総合力で勝負する時代です。この情報という面では、グノーブルの規模ではまだまだこれからといえるでしょう。