※この記事の初出は2023.11.05です。2024.10.22にUPDATEしました。
家庭教師を探している方は大勢いらっしゃると思います。
しかし、なかなか良い先生に巡り合うのは難しいですよね。
今回は、家庭教師の探し方、選び方、そして注意点を中心に書いてみたいと思います。
※いかなる家庭教師も持ち上げる意図も貶める意図もありません。ただの私の主観にすぎませんのでご容赦ください。
家庭教師の種類と探し方
家庭教師には、以下の4種類があります。
A:大学生アルバイト
B:プロ①・・・家庭教師だけで生活している
C:プロ②・・・個別指導・集団指導塾の講師と掛け持ち
D:自称プロ・・・元保護者or元学生バイト講師
それぞれの力量もスキルも違うのですが、どうも探そうとするとこれらが混在となっているようですね。そのあたりを整理しながら考えます。
A:大学生アルバイト
「家庭教師」というと、まず思い浮かぶのは大学生ですね。
今も昔も大学生アルバイトの王道でもあります。
そんなに力量は期待できないけれど、そのかわりに価格もそんなに高くはありません。また、大学のブランドで選べば、ある程度の学力は期待できるはずです。
私も学生時代、やっていたものです。私などよりはるかに優秀な友人(医学部生)から、「俺には教えられない」といって紹介された生徒もいました。彼が教えられないといった理由はすぐにわかりました。とにかくこの子は勉強が不得意なのです。ただし、性格は極めて素直で、言われたことは何とか頑張ろうとする気持ちはあったのを覚えています。勉強以外にもいろいろな話をしたものでした。この子が医学部に進学した後も、夏休みに大学のレポートの手伝いを頼まれましたが、これは依存しすぎですね。
ただし、教える側からすれば、あまり割の良いアルバイトとはいえません。1回2時間程度の指導にたいして、半日がつぶれてしまう印象がありました。
B:プロ①
家庭教師だけで生活している方もいますね。
いわゆる「プロ家庭教師」です。
価格が非常に高いのが特徴です。
こうした方が一週間に何名の生徒を指導しているのかは知りませんが、常識で考えても、平日は1名、土日に数名、がんばったところで一週間に10名は教えられないでしょう。時間単価が1万円以下ではちょっとやりたくないな、と私なら思います。収入を確保するためには回転を稼ぐしかないでしょうけれど、そうすると指導内容の準備をする時間が不足しそうです。
C:プロ②
普段個別指導・集団指導などの塾で仕事をしながら、家庭教師も兼任しているという方ですね。こちらも多そうです。家庭教師専任の人よりも、指導経験人数が多いと思いますので、スキルに期待できそうです。
D:自称プロ
最も避けるべき家庭教師です。プロでもなんでもありません。ただのアマチュアです。学生時代に塾で非常勤講師のアルバイトをしていた。その後一般企業に就職したが事情により退職した。そこで家庭教師をはじめた。こんな方もいますね。需要があるのなら私が口出しするべきではありませんが、「教える」ということに対してあまりにも安易なのが気になります。
大学生アルバイトの探し方
前述したように、家庭教師として一番多いのは大学生アルバイトです。
この大学生アルバイト家庭教師の活用法について書く前に、探し方から考えます。
昔は大学の学生課に気軽に直接申し込めましたし、大学生は掲示板に貼られた募集票を見て応募する、そんなスタイルが多かったと思います。あるいは、銀行の掲示板に切り取り票つきのちらしが貼られているのも見かけました。先輩から後輩への紹介もありましたね。しかし、現在はだいぶ様子が変わってきているように思います。
(1)大学の学生課・生協を通して探す
まずは昔ながらのスタイルから試すのが王道ですね。変な業者の中間搾取などなく、ダイレクトに希望の大学の学生を探せます。
手順としては、学生課か生協に依頼します。依頼の仕方は大学によってさまざまです。たとえば東大の場合は、東京大学教養学部等学生支援課が仲介してくれます。
検索する際には、「東京大学 大学院総合文化研究科・教養学部 家庭教師」で検索すると募集要項等が見つかります。
※単に「東大 家庭教師」で検索すると、無数の派遣業者のページが出てくるのでご注意ください。いかにも東大生の互助会組織のように見せかけている悪質なものもありますので。
この募集要項を見ると、時給は3000円と決まっていて、申し込む方の身分証明・子どもの学生証などを持参しての申し込みなので、学生・保護者双方にとって安心感がありますね。2週間掲示してくれるそうです。
また、名古屋大学生協では5500円の手数料をとってWEBで申し込みが可能です。
ご自宅から遠くないところに良い大学があれば、まずはそこに直接申し込んでみるとよいでしょう。
◆メリット
料金が不当に高くない、むしろ安いことが一番のメリットです。
東大生で時給3000円ならかなりリーズナブルだと思います。もっとも大学生にとってもメリットがあるのです。
調べてみたところ、小学生対象の集団指導塾の学生アルバイトの時給は2000円~2500円だそうです。サピックスが3000円、グノーブルが3200円です。
金額的には同等だとしても、どうしても塾は時間・曜日が1年間固定されがちであり、授業前後にもいろいろ仕事を頼まれそうなので敬遠する学生も多いですね。その点家庭教師は気楽です。双方の利害が一致しての時給3000円なのです。
◆デメリット
完全な素人の大学生がやってきます。それは覚悟してください。また、家庭教師派遣業者を通すときのように、気軽に教師をチェンジすることもできません。
さらに、時期によってなかなか応募者が集まりません。学年の切り替わりや、夏前あたりが集まりやすいでしょう。
(2)家庭教師派遣業を通して大学生を探す
いちばん簡単で、かつトラブルになりやすい探し方です。
ちょっとネットをのぞくと、こんな文言が謳われていました。
指導者としての人格をもち、厳しい採用基準を突破
学力を伸ばすためのあらゆる指導方法を網羅した研修項目をクリア
進学塾での指導経験、中学入試から大学入試までの複数の合格実績をもつ
現役東大生・現役医学部生の講師陣が合格のためのノウハウを余すことなく伝授
顧客満足度№1
すごいですね。もしこれが真実なら、もうこの会社に頼むしかない!
そう思ってしまいます。
もしこれが本当なら、ですが。
このような基準を満たす学生がどれくらいいるのでしょうか。プロの家庭教師でもなかなかいないと思います。そこで、こんなことが起こりがちなのです。
①家庭教師派遣業者へ頼む
②やってきた学生はあまりにも期待はずれだったので、チェンジしてもらう
この後②を何度か繰り返す
③業者から、値段の高いプロを勧められる
④あきらめて高い費用を払うが、それに見合ったスキルのプロかどうか不安
気軽に頼みやすい派遣業者ですが、いろいろと費用が高くつくことも覚悟しておくべきですね。また、研修についてですが、きちんとやっているところはほとんど無いといっていいと思います。長時間の研修を行うような業者は学生が敬遠しますので人が集まらなくなるのですね。また当然コストもかかります。
つまり、業者の広告宣伝を鵜呑みにしてはいけない、ということなのですね。
時給が安い(=レベルが低い)ことを承知の上で、自分で大学の学生課に足を運ぶような手間をかけずに気軽に頼む、そんな感覚なら問題はないのだと思います。
たまたまとても良い大学生にあたった、そんな声もあるようですので。
(3)マッチングサイトを利用する
たぶん、これが今後主流になるのだと思います。頼む方も頼まれる方も気軽です。
ちょっとサイトをのぞいてみると、開成出身の東大生が時給6000円で載っていました。このうち25%前後がサイトへの仲介手数料としてとられますので、4500円が学生の取り分ですね。高いですが、開成出身ブランドへの対価なのでしょう。もちろんこうしたサイトには、学生だけでなくプロも多く登録していますので、もしプロ家庭教師を探すならこれが最も簡単な探し方でしょうね。デメリットとしては、やはりこの仲介手数料です。まあこれはあきらめるしかないコストでしょう。
(4)知人からの紹介
もしこれができれば、これが一番です。
「うちの子が習っていた〇〇先生がとても良かった。おかげで志望校に合格できたの。」なんて話を聞いて、その先生を紹介してもらう、これが一番良いのは言うまでもありません。どんな先生なのかが事前にわかるばかりか、中間搾取がありませんので。
ただし、学生の場合は卒業がありますので難しいかもしれません。
私の知っている方で、大学を卒業して企業に就職した後も、家庭教師を続けていた方がいました。
「この生徒の中学合格までは責任がありますので」とおっしゃっていたのが印象的でした。
普通はなかなかそうはいきません。大学卒業と同時(あるいは就活シーズンの前)に家庭教師を辞めるのが普通です。
親戚や知人のお子さんが大学生なので、紹介してもらう。
こうしたケースもありますね。
人間性や家庭環境を知っているわけですので、一番安心できます。
もちろん指導力は未知数です。
ただし、一度お願いしてみたものの、どうにも「違う!」ということで、断る際に、なかなか断りにくい可能性はあります。そこだけは事前にきちんとしておくべきでしょう。
プロ家庭教師を派遣業者に頼む場合
個別指導塾の選び方のところでも書きました。
家庭教師派遣業の取り分は、一般に半分と言われていますが、広告を派手に出している大手の業者は7割は取るそうです。
つまり、時給3000円なら、その半分以下しか本人に渡らないのですね。もし本当のプロに頼むのなら、時給1万円以下では引き受けないでしょうから、皆さんが支払う金額は時給2万円~3万円、あるいはそれ以上ということになります。
さらに派遣業者は、入会金として1万円~2万円をとるところが大半ですし、管理費名目で別途毎月数千円を徴収するところもあるようです。
ある家庭教師派遣業者のHPによると、小学生の学校の授業のフォローだと3850円/時間、経験豊富な講師で6050円/時間とありました。さらに中学受験コース(小6)だと、5500円~6500円/時間、塾指導経験者なら7150円だそうです。これに学習サポート費なる費用が3300円、入会金22000円でした。
いくつかの業者の情報を調べてざっと整理すると、必要な費用は以下のようなものになりました。
①入会金・・・0円~32400円
②授業料・・・4000円~10000円/時間
③管理費・・・3000円~10000円/月
④更新費・・・0円~32400円/年
⑤教材費・・・0円~
⑥交通費・・・実費
更新費は無料のところがほとんどです。教材費に関しては無料(客が用意)のところも多いですが、高額な教材費を請求される場合もあると聞きますので注意しましょう。
また、プロ家庭教師の場合は、評判の良い先生はなかなか空いている時間枠がとれないという問題点がありますね。
プロ家庭教師の力量と価格
世の中には、どんな世界でもその道のプロというものがいます。家庭教師など、素人大学生が18歳でできる仕事(ほんとうは違うのですが)なわけで、どれくらいのスキルがあれば「プロ家庭教師」といえるのでしょうか?
テレビ等で「カリスマプロ家庭教師」として大活躍の安浪京子氏についてみてみると、週刊誌のプロフィールに
神戸大学発達科学部にて教育について学ぶ。関西、関東の中学受験専門大手進学塾にて算数講師を担当、生徒アンケートでは100%の支持率を誇る。プロ家庭教師歴20年以上。
とありました。
大学で学ぶ教育学は実際の教師の仕事には全く役立たないことは常識ですので、実務経験としては、進学塾の指導経験と家庭教師経験を合わせて10年以上(最低ライン)の指導経験があれば「プロ」と名乗ってもよさそうですね。
ちなみに安浪氏の指導費は2万円!/時間だそうです。
ところで、教師について生徒アンケートをとる塾が私は好きではありません。一見合理的かつ生徒優先のやり方のように見えますが、「良い授業」と「人気の授業」は必ずしも一致しないからです。
さて、教師としてのスキルを磨くには、どれだけ多くの生徒を指導したのか、その人数が重要です。もし家庭教師だけを10年続けたとしたらどうでしょうか。週1回の指導として、一週間に指導が可能な人数は、せいぜい10名程度ですね。10名×10年とすると、100名の指導経験ということになります。この人数は、大手集団指導塾では、大学生アルバイト講師でも1年間で担当している人数です。
つまり、家庭教師だけを何年やっても、指導経験を積むのが難しいのです。
家庭教師歴の年数よりも、集団指導塾の指導歴を重視して選ぶのが正解だと思います。
受験生を育てた保護者はプロ?
中学受験でわが子を〇〇中学に合格させた、そうした母親が家庭教師を始める、そんなケースがあります。あるいは受験コンサルタントを名乗って、相談料2万円をとっている、そんな方もいました。
これはお勧めできません。
そもそも経験値が少なすぎます。
せいぜい2~3人のわが子の指導経験しか無いのですから、プロを名乗っていいレベルではありません。こうした「自称プロ」講師は、もしかして現役の大学生よりも力量が劣ることもあるのです。
家庭教師の利用法
(1)受験合格までの指導を丸投げする
これは大変です。かかるお金も青天井となりますし、そもそも1人で4科目の受験指導ができる先生を探すのが大変です。もしそうしたプロの先生と出会えれば、それはとても幸運だと思います。それでは、1科目1人として、4人の先生を頼むのはどうでしょう? これはやめたほうがいいですね。4科目の連携がない指導は効果があがりにくいですから。私の過去の教え子に、家庭教師を6人つけていた生徒がいました。どれだけお金が余ってるんだ!と驚くより先に、四科目で4人は分かるとして、後の2人は何を教えているんだ?というのが謎でしたね。
(2)1科目だけの指導を頼む
おそらくこれが一番多い利用方法でしょう。ただし、とくに算数については注意があります。受験算数の指導ができる大学生は少ないですし、プロでも怪しい人間は多数います。笑い話のようですが、サピックスの算数の指導を派遣業者に頼もうとしたら、断られたという話を聞いたことがあります。予習用の教材がないサピックスの指導をその場でアドリブでできるレベルの先生が所属していないということだったようです。教えてもらう問題を前渡ししておく、そうした工夫が必須です。
(3)質問ができる先生を頼む
わからなかった問題、解けなかった問題の質問をその場で答えてくれる先生、欲しいですよね。でも、そんなプロは少ないです。学生では無理です。
(4)勉強の監視役を頼む
親が目を離すとすぐにさぼってしまうわが子。せめて家庭教師の先生が横で監視してくれていれば。そうした目的なら、とくにスキルは必要としませんので、気軽に大学生を頼むとよいでしょう。
(5)子供のやる気を引き出す
素人には無理ですが、一つだけ例外が。子供が熱望している学校の卒業生の場合です。例えば桜蔭中を熱望しているお子さんの場合、桜蔭から東大に進学した大学1年生のお姉さんが見つかったらどうでしょう。憧れの存在として、子供のモチベーションが上がりそうですね。
(6)勉強以外でも話し相手となってほしい
私は学生時代に、とある男子高校生の家庭教師をやっていたことがあります。応接間で教えていたのですが、そこにはピアノがありました。指導時間の2割くらい(もしかするともっと?)はピアノの蓋をあけて、二人で歌を歌ったり簡単な伴奏法を教えたりと、仲良くやっていたものです。その子が「可愛い店員の子がいるんだ」といっていたアンナミラーズ(懐かしいですね)に行ってパイをごちそうしたこともありました。地方の医大に進学した後も、夏休みに帰省すると大学の英語の宿題の手伝いを頼まれたりもしましたね。
子どもが気軽になんでも相談できるお兄さん・お姉さんのような存在としての家庭教師、これもありだと思います。もちろん勉強メインでないといけません。
結論をいうと、家庭教師を頼む場合は、何をどれくらい指導してほしいのかを明確にして、その範囲で全力をつくしてもらう、こういう割り切りが重要だということです。
おまけ
私は、家庭教師を探すことは「ピアノの先生」を探すことに似ているなあと思っています。
子どもにピアノを習わせようと思う場合は、選択肢は以下のようなものですね。
(1)大手ピアノ教室・・・ヤマハ・カワイ
まずは定番ですが、これは集団指導です。
(2)大手ピアノ教室の個人レッスン
いわゆる大手個別指導塾のようなものですね。
(3)町のピアノの先生
これは「個人でやっている個別指導塾」です。
(4)通いのピアノの先生
これが「家庭教師」に相当します。
しかし、これが探すのが最も困難です。ネットで調べると近所にも何人もの先生がいるのですが、力量が不明です。音大出身で自宅にピアノがあればそれだけで看板を出せるようですが、それが指導力を担保しないのですね。私がうかがった教室では、キッチンの横にアップライトピアノが1台置かれているだけでピアノ教室を開いている主婦の方もいました。少しでもピアノをご存じの方ならこれがあり得ないことはおかわりいただけるでしょう。
結局はクチコミを頼りに探すほかありません。そうした先生の中には、プロの演奏家としての顔を持つ方や、卓越した指導スキルを持つ方もいらっしゃるのです。また、音大の学生に自宅に来てもらうという方法もありますね。