子育てのありようは、各御家庭によって様々です。
父親と母親の役割もまた様々ですね。
そこに正解などないはずです。
ここで書きたいのは、「中学受験」に向けての役割分担についてなのです。
これには、実は正解があるのです。
30年の変化
私が中学受験の指導を初めてから、30年以上経ちました。
学生時代のアルバイト講師を含めるともっとになります。
その間、受験生の親も変わったなあ、と思います。
厚生労働省のデータから作成しました。
単位は万世帯です。
まあ予想通りですね。
専業主婦世帯と共働き世帯の世帯数は、1990年代に逆転しました。
そのため、
家にいつも母親がいる
このことを前提とした受験戦略が変わるのは当然です。
「中学受験をする家庭は父親の所得水準が高いから共働き率は低い」という考えもあるでしょうが、「子どもの教育費を考えると共働きが必要」という考え方もまた成り立ちます。
また、子どもの教育に熱心な家庭ほど、母親も社会で活躍している場合が多いということもいえるかもしれません。
求められる役割の種類
父母の役割分担の話の前に、そもそもどのような役割が必要なのかを整理します。
(1)勉強を教える
塾に丸投げしても成績は上がりません。
家庭学習を抜きにして中学受験は不可能だからです。
親が勉強を見てあげるのは基本です。
もちろん、「勉強を見てあげる」といっても、多種多様なやり方があります。
①ゼロから講義・指導をする
塾無し受験の場合ですね。
これについては、別の記事で書いています。
②子どもの質問に向き合う
即答できる質問もあれば、時間をもらわないと答えられないものもあります。それでも、子どもの質問にきちんと向き合うことは大切です。
③テストの間違い直しを一緒にやる
子どもは一度解いた問題の直しは苦手です。そこに親が一緒になって考えることは有効です。
④丸付けをしてあげる
子どもにまかせると、かなり適当に丸付けをします。とくに記述の採点や、漢字の採点など、大人の目が重要です。
(2)スケジュール管理
1日単位・一週間単位・ひと月単位・一年単位
子どもの学習内容や学習時間のスケジュール管理は親の仕事です。
子ども本人に任せるわけにはいきません。
いわば、芸能人のマネージャーのようなものですね。
子どもに最高のパフォーマンスを発揮させるための裏方のような役割です。
とくに、教科の単元を把握し、今何を学んでいるのか、これから何を学ぶのかを管理するのは重要です。苦手単元が、今後習う機会がないのならば、家庭で独自にフォローを考えなくてはなりませんし、今後何度も繰り返し習うものならば、それは後回しにできます。
(3)成績管理
テストの成績票返却のたびに、偏差値が上がった・下がったと一喜一憂するだけなら誰だってできます。
ここで「成績管理」というのは、現時点での子どもの弱点を把握し、成績推移を管理しながら、次のアクションを模索する、そういう意味です。
場合によっては個別指導や家庭教師を探す必要が出てくるかもしれません。
家庭教師の是非についてはこの記事をお読みください。
個別指導の費用についてはこちらで考察しました。
(4)学校選び
こればかりは子どもにはできません。まさか塾に丸投げも不可能です。
親が自分の足をつかって情報を取りに行く必要があるのです。
最近は、仕事を持つ親が参加しやすいように、学校説明会を土曜日に開催したり、平日の夜に開催したりするところも増えてきました。
ある学校など、平日夜の説明会の際に、お茶とサンドイッチが配られます。配慮が凄いですね。
ただし、相変わらず平日午前の説明会しか開催していない学校も多数あります。
しかし、忙しいからといって説明会参加を後回しにしていると、高学年になってから後悔します。
(5)子どもを精神的に支える
子どものやる気を上手に引き出しつつ、調子が出ないときのケアもしながら、時には叱り、時には褒め、子どもを精神的に支えます。
こればかりは親しかできません。
この他にも、子どもの体調管理もありますが、これは受験以前の基本ですので省きます。
両親が仕事を持っている場合
この場合の父親と母親の役割分担は簡単です。
平等・均等に分担する
これが基本です。
おそらく、家事の分担も平等だったと思います。
子育てについても、均等に負担してきたことでしょう。
中学受験についても、同様にすすめるのは当然ですね。
母親が専業主婦の場合
この場合の役割分担も簡単です。
平等・均等に分担する
これが基本です。
仕事に忙しいお父様には言い分もあるでしょうが、実は主婦は忙しいのです。家事労働は、時間がとられます。
掃除・洗濯・アイロン掛け・買い物・食事の支度・弁当の用意・PTAの負担、これらにはどれも予想外の時間がかかります。
子どもが熱を出したら病院に連れていくのはだれですか?
学校の授業参観に行くのはだれですか?
ママ友とのランチだって、必要な情報交換の場ともいえるでしょう。
いわば、「家庭」というフィールドで仕事をしているのですね。
だから、「中学受験」の役割は平等に負担するのは当然だと思います。
分担方法
(1)役割を完全に分ける
(2)全てを共同で負担する
このどちらかですね。
これについては正解があります。
役割を完全に分ける
これが正解なのです。
監督が2人いる野球チーム
指揮者が2人いるオーケストラ
映画監督が2人いる撮影現場
コーチが2人いるフィギアスケーター
考えるまでもなく、うまくいかないことはわかります。
子どもへの指揮系統は1本に統一すべきです。
例えば、母親が算数の解き方を説明している横から「そんなものは方程式を立てればいい!」などと言われたらどうですか?
眠そうに眼をこすっている子どもに、「あともう1問頑張ってから寝ようね」と母親が頑張らせているのに、「眠いときに勉強しても無駄だ! もう寝なさい!」と言われたらどうですか?
だからこそ、役割を分担したら、それぞれの役割については父親・母親のどちらかだけが主導して負担すべきなのです。
ただし、学校選びだけは共同でやってください。
両親が一緒に見に行くことが基本です。
★全てを母親が仕切った場合
父親が海外赴任中のため、全てを母親が負担したご家庭がありました。
父親には、一切口出しさせなかったそうです。
父親が負担したのは経済面だけ。
それもまた一つの見識です。
注意
注意その1・・・途中で父親が口出しをする
昔は多かったケースです。
母親に子どもの教育は丸投げしていたのですね。
塾選びも日々の宿題チェックも塾との相談も。
それが、6年生の夏ごろ、志望校を確定しようかというタイミングになってから、父親が急に口出しを始めるようになるのです。
「どれどれ、太郎の成績はどうなってる?」
「なんだ、この成績は! お前は今まで何をやっていたんだ!」
「〇〇中学なんて、受験する価値は無い!」
ほとんど昭和の親父ですね。
息子の成績が悪いのはお前のせいだと夫に責め立てられて、さめざめと泣くお母様を慰めたことがあります。
任せたのなら、中途半端に口出しをしない、これも見識です。
注意その2・・・両親で前のめりになりすぎる
本来なら夫婦そろって子どもの教育に心を砕くことは悪いことではないはずです。
ただ、両親がそろって子どもを追い立てると、子どもには「逃げ場」がなくなるのですね。
父親と母親のどちらかが、常に子どもの安全弁になるように上手に役割を分担してください。
注意その3・・・プロに任せるところは任せましょう
たまに(最近は多い)いるのです。子どもの成績や入試問題の分析に燃える父親が。
本来なら悪いことではありません。しかし、過去問の出題頻度分析や子どもの成績分析については、プロにまかせるべきなのは間違いありません。