今まで同じようなテーマで書いてきました。
しかし、こう聞かれてしまったのです。
「結局のところ、どれが一番合格に近いのですか?」
そこで今回はその疑問にお答えしたいと思います。
※もちろん特定の塾や教師を持ち上げるつもりも貶めるつもりも毛頭ありません。私の個人的な見解にすぎませんのでご容赦ください。
- 結論
- 根拠その1 時間数
- 根拠その2 時間の質
- 根拠その3 理解度の差
- 根拠その4 志望校対策
- 根拠その5 弱点の見極め
- 根拠その6 入試問題の添削指導
- 根拠その7 家庭事情の把握
- 家庭教師VS個別指導塾
- 追加・・・リモート家庭教師について
結論
今回は、結論からまいります。
とかく私の記事は長文になりがちですので、最後まで読む気がしないとよく言われるのです。
そこで結論から。
家庭教師 > 個別指導塾 > 集団指導塾
これが結論です。
おや? と思われたかもしれません。
今まで私は、どちらかといえば、集団指導塾推しの意見が多かったので。
ただし、前提条件を2つ設定しないとこの結論は出ません。
◆どちらも最高レベルの教師であること
◆費用を考慮しないこと
教師レベルは最重要課題ですので、レベルの低い家庭教師とレベルの高い教師による集団指導を比べても意味はありませんので。
また、費用を考えれば、集団指導塾がもっともリーズナブルであり、家庭教師が最も高額になることは当たり前です。
ここでは、比較のために、前提条件を設定したのです。
根拠その1 時間数
これが最大の根拠です。
とにかく小学生には時間がありません。
お子さんの生活時間を考えてみてください。
中学受験のための勉強にあてられる時間はどれくらいありますか?
平日・・・月~金
学校教育法で授業時間は年間1015時間と決められていますので、5時間授業の日が週1日、6時間授業の日が週4日となります。
5時間授業の日は14:30頃、6時間授業の日は15:30頃が下校時刻となると思います。
さらに6年生ともなると、クラブ活動や委員会活動もありますね。
いろいろ考えると、平日の帰宅時間は16時くらいと考えることができるでしょう。
帰宅と同時に勉強に取り組むのはさすがに難しいですね。
着替えたり、おやつを食べたり。それらを大急ぎで片づけたとしても、16:30から勉強に取り組むのがやっとだと思います。
ほとんどの塾では、授業スタートを17:00前後に設定しているのはそれが理由です。
小学校から帰って、塾の支度をして塾までたどり着くと、17:00くらいになってしまうのです。
土曜・日曜
土曜日の授業については、2002年にいったん廃止されました。ところが、学力低下への対応から、徐々に土曜授業が復活しました。どうやら「ゆとり教育」の弊害が表れたようなのですね。
しかし、また最近は減りつつあります。これは学校の先生の働き方改革が目的です。
批判を覚悟で言いますと、中学受験をする子にとっては、土曜授業がなくなることは朗報以外の何物でもありませんね。
受験学年の6年生にもなると、習い事はもう辞めているはずです。
全ての時間を受験勉強に費やすとして、平日なら3時間程度、土日で10時間ずつといったところでしょうか。
そして、ここが肝心なのですが、この持ち時間は「全受験生共通」です。
ということは、他の受験生と同じような時間の使い方では、順位を上げることは難しいのです。
そこで2つのやり方しかありません。
その1つが、「物理的に勉強時間を確保する」ことなのです。
そのためには、塾に行く時間を節約することも効果的なやり方であることはおわかりいただけると思います。
近くの塾だったとしても、往復で30分はかかりませんか?
塾に行く支度も必要でしょう。そこに10分くらい。
さらに、塾は無駄の多いシステムです。
◆せっかく早くついたのに、他の生徒がそろうのを待つ時間
◆もう問題を解き終わったのに、他の生徒が解き終わるのを待つ時間
◆もう板書をノートに書いたのに、他の生徒が書き終わるのを待つ時間
◆わかりきっている問題なのに、他の生徒への説明を聞く時間
◆他の生徒が叱られているのを待つ時間
一つ一つの時間は短くても、「塵も積もれば・・・」ですね。
細かく計算できるものでもありませんが、毎日1時間は無駄に捨てていることになると思います。
考えてもみてください。
自分だけが、1日25時間だったら。
わが子だけが、毎日1時間をプレゼント(誰からだ?)されていたとしたら。
これがどれだけ有利なことなのかは言うまでもありません。
お子さんが「ただいま」と家に帰ってきたとき、そこに家庭教師の先生が待っている。
実に効率が良いですね。
※この時間の確保の裏技として、「中学受験推進派私立小学校」に通うという奥の手があります。
こうした小学校の一部では、6年生後半は授業が「自習時間」となり、みな過去問を解いているとか。
このことの是非は論じませんが、時間は確保できます。
根拠その2 時間の質
単に机に向かっていたからといって、勉強になっているわけではないですね。子どもの集中力って、本当に10分程度しか続かないのです。
集中と弛緩を繰り返しているのですね。
もちろんこの「弛緩の時間」も次の集中のためには重要ではあります。
さて、集団指導塾の場合、たとえ3時間の授業時間だったとしても、その時間中フルに集中し続けているわけではありません。
また、授業も、お子さんのスピードにピッタリフィットしたペースで進んでいるわけでもありません。
つまり、「無駄」が多いのです。
その点、一対一の家庭教師&個別指導は、お子さんのペースで指導が可能です。
根拠その3 理解度の差
同じ事象を同じように説明しても、それが本当に「わかる」ようになるのには、個人差があります。この理解度の差を無視しながら授業をすすめるのが集団指導塾なのです。
その点、家庭教師&個別指導なら、お子さんの表情を見ながらの指導となりますので、効果的です。
根拠その4 志望校対策
6年生になると、志望校に合わせた指導がはじまります。
複数の志望校を持つ生徒に対しては、基本的には志望校に特化しすぎないことが大切です。とはいうものの、学校によって入試問題に傾向の差というものはあります。
例えば、1日に開成を受験する生徒と麻布を受験する生徒に同じ指導はできません。
また、桜蔭・豊島岡を受験する生徒がもし鴎友学園も志望校に加えていたとしたら、その生徒には記述の指導が必須です。
全生徒が全く同じ受験パターンで受験するのでない限りは、こうした指導を集団で実施することは不可能です。
根拠その5 弱点の見極め
生徒の出来具合には、テストの点数には現れないものもたくさんあるのです。これは集団指導では全て把握することはなかなか難しい。
授業中、まじめにうなずいている生徒がいました。テストの点数も悪くはない。こうした、教師から見た「まじめな生徒」というのは、どうしても様々な指導が後回しになりがちなのです。
とてもできる生徒・とてもできない生徒のほうに多くのリソースが注がれがちなのですね。
ある時、ふと簡単な質問をその生徒にしてみて驚いたことがあります。
知識体系に大きな穴があったのです。
あやうく見落とすところでした。
集団指導の限界です。
根拠その6 入試問題の添削指導
6年生にもなると、実際の入試問題を使った演習が始まります。
国語に限らず、社会科でも記述問題は常識です。
算数も解く過程を書かせる出題は多いですね。
そうした問題の添削指導ばかりは、個別にやってあげる必要があります。
一人の生徒が持ってきた入試問題の添削指導を丁寧にやろうとすると、最低でも1科目1時間はかかります。
集団指導ではほぼ不可能です。
これも家庭教師&個別指導が有利な点です。
根拠その7 家庭事情の把握
生徒によって、入試についての家庭の意見は様々です。両親の意見が食い違っていることも多くありますし、兄弟姉妹の存在も影響が大きいですね。
「本人は麻布に行きたいそうですね」
「すいません、私は反対なのです。」
「なぜですか?」
「実は従弟が麻布に進学したのですが、勉強を全くやらずに遊んでばかりいて、現在浪人中なのです。それは困るので」
「そうですか。お父様は何と?」
「父親は、駒東にしろといっています」
「それはどうしてでしょう?」
「実は父親は開成出身でして」
「そうだったのですか。それなら開成を受験させてもよいと思いますが」
「それが、子どもの実力では開成では通用しないと言って」
「なるほど。私の目からは十分やっていけると思いますがね。わかりました。1日は駒東ですね」
「いえ、私は慶應普通部を受けさせたいのです」
「??」
「実は小学校受験に失敗しまして。慶應幼稚舎を狙っていたのですが。だから、中学からぜひ慶應に行かせたいのです」
「慶應だったら、湘南藤沢や中等部もありますが」
「いえ、私は中等部出身なんですが、うちの子には合わないと思います」
「そうですか。それでは湘南藤沢は?」
「私の妹が湘南藤沢に進学したのですが、話を聞くと、あまり通わせたくはないと思います」
もちろんこれはフィクションの会話ですが、実際にはもっと混迷した会話が普通です。
各家庭にはそれぞれの事情というものがあります。
それらを全て把握することなど不可能です。
これも集団指導の限界です。
家庭教師VS個別指導塾
似て非なるものです。
個別指導塾は、時間が決められています。そこに合わせて通塾しなくてはなりません。
無駄な時間が発生するのは集団指導塾と同様です。
ただし、集団指導塾よりは少々有利ではありますが。
もし自宅近所に時間の融通の利く個別指導塾があれば、これは良いと思います。
ここまで家庭教師を強力に持ち上げてきましたが、もちろん弱点もたくさんあります。
それでも、経験値の高い有能な家庭教師に全てを任せれれば、それが理想的なのには変わりないですね。
非現実的な夢ですが。
ただし、理想的に思える家庭教師にも、いくつか問題点があります。
◆有能な家庭教師を探せない
ここが最大のネックとなります。
ある程度名の通った集団指導塾だと、教師のレベルも一定水準以上であることが期待できます。しかし、個人営業の家庭教師となると、何を基準に探すべきかから難しい。
まあ今回の記事は、そうした家庭教師が見つかることを前提としていますが。
家庭教師の探し方についてはこの記事に書いています。
◆自宅に他人をあげなくてはならない
これもハードルとなりますね。
生活空間に他人を上げたくはないですから。
昔の家のつくりによくあった、「応接室」のような空間が必要です。
◆指導環境
実は他にも、気づかれにくい家庭教師の弱点があるのです。
生徒の指導には、黒板とチョーク1本(あるいは紙とペン)があれば事足りるといいたいのですが、実はそうはいきません。
◆豊富な参考図書
◆PC
この2つが必須なのです。
集団指導であれ、個別指導であれ、教室環境であれば、この2つは揃います。
「あれ、この問題が苦手なんだね。ちょっと待ってて。今ちょうどよい問題集を持ってくるから。」
「なんだ、見たことがないのか。ほら、これだよ」
こんなことはよくあります。
これら全てを持ち歩くわけにはいきませんので、家庭教師(家庭訪問型)には意外な落とし穴があるのです。
一番理想的なのは、家のすぐ近くに、教室環境(黒板orホワイトボード&参考資料&PC)を完備した家庭教師が住んでいることでしょう。
ほぼ無理なのが残念です。
追加・・・リモート家庭教師について
家庭教師の長所に加えて、短所も解消される、とても理想的なスタイルに思えます。
ただし、残念な弱点が1つあります。
指導の効果が薄くなるのです。
中学受験生である小学生の指導の場合、生徒の理解度や疲れ具合など、生徒の様子を詳細に把握しながらの指導をします。
また、時には意図的な無駄話(生徒の志望校にまつわる小ネタ等)を織り交ぜて、生徒の集中力を自在にコントロールしていくのです。
リモート指導ではこれが存分にできません。
わずかのタイムラグをともなうモニター越しの指導には限界があるのです。
中学生以上の指導には適したスタイルだと思っています。