中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】慶應湘南藤沢を目指してみよう

今回は、神奈川エリアの人気校、「慶應湘南藤沢」について取り上げます。

どんな学校なのか

どうすれば進学できるのか

そのあたりを考えてみましょう。

※この学校を持ち上げる意図も貶める意図もありません。あくまでも私の主観に基づく私見ですのでご容赦ください。

どんな学校なのか

 

そもそもこの学校を目指そうとする方にとっては周知の事実ばかりですが、あらためて整理してみます。

 

慶應義塾はご存じのように歴史の古い学校です。

1858年に福沢諭吉が開いた蘭学塾が母体です。その10年後に、「慶應義塾」として創設されました。もちろん名前の由来はその当時の元号慶應」からきています。1892年からの歴史を誇る普通部と比べると、慶應湘南藤沢は1992年開校ですから、まだ30年ほどの歴史しかありません。慶應の中では「ヒヨッコ」とみなされてしまう学校ではあります。

これをプラスと捉えるのか、マイナスとみなすのかは、まさに人によるとしかいえません。

慶應普通部出身の知人は、「普通部こそ明治から続く慶應の本筋。中等部より上だ。まして湘南藤沢なんて俺は慶應だと思っていない!」と力説していました。母校愛は認めますが、部外者からすればどうでもいい話です。

慶應湘南藤沢出身の知人にいわせると、「湘南藤沢こそ新しい慶應の精神を具現化したものだ。つまりこれからの慶應の本筋はこちらだ!」そうです。

 

「母校愛」に満たされるのも、慶應各校の特徴なのかもしれません。

 

慶應グループの進路選択肢

 

慶應にはいくつもの学校があります。

いずれ大学は慶應大学へとつながるとしても、その途中の進路は様々です。

なかなかわかりにくいので、整理してみました。

紫色が共学青色が男子校赤色が女子校です)

慶應の進路選択肢

幼稚舎(小学校)から中学への選択肢は2つです。

女子はもちろん全員が中等部に進学します。

男子は中等部と普通部の2択です。例年、中等部:普通部の割合が1:2くらいです。

そして、幼稚舎から湘南藤沢中等部に進学する生徒はほぼいません。男女それぞれで、1名から多くても3名くらいです。0名のときもあります。

 

2013年に横浜初等部(横慶と称されます)が東急田園都市線江田駅近くに開校しました。6年後、横浜初等部の生徒は全員が湘南藤沢中等部に進学しました。

その年から湘南藤沢中等部の募集定員が120名から70名へと減らされています。

 

中等部および普通部からは、高等学校(塾高と称します)、志木高等学校(志木高)

、女子高等学校(慶女)、ニューヨーク学院の4校から選びます。ニューヨーク学院を除けば、女子は慶女へ、男子は塾高か志木高となります。

いわゆる「慶應ボーイ」(死語?)の王道は、幼稚舎→普通部→塾高慶應大学 ということのようですね。

ただし中等部からは湘南藤沢高等部には進学できません。

普通部から湘南藤沢高等部に進学することは可能ですが、非常に少ない。若干名とされており、数名程度です。2024年には8名でした。

つまり、慶應湘南藤沢は、6年間一貫校であり、横浜初等部からスタートすれば12年間一貫教育校とみなせる学校です。

 

慶應湘南藤沢に至る道

SFC進学者数

2024年の進学者数をまとめました。

上の図で気になるのは「全国枠」ですね。

これは生徒の多様性を担保する目的で、東京・神奈川・埼玉・千葉以外のエリアから募集する枠です。

 

まとめてしまうと、慶應湘南藤沢に進学したいと考えるなら、小学校受験で横浜初等部の100名の枠を目指すのか、中学校一般受験で湘南藤沢中等部の70名の枠を目指すのか、その2択と考えてよいでしょう。

 

人数だけみれば横浜初等部の100名の枠のほうが広く見えますが、もちろんそんなことはありません。「憧れの、小学校から慶應」を目指す層が、慶應幼稚舎と横浜初等部に殺到しますので、その倍率は13倍!以上(2024)となっています。

 

湘南藤沢中等部を一般受験する場合の倍率は、およそ5倍です。

その内訳を示すとこのようになっています。

1次受験者 419名

1次合格者 199名(合格率 47.5%)

2次受験者 182名

2次合格者 87名 (合格率 47.8%)

入学者数 72名

1次合格者から2次試験辞退者が17名、2次合格者から入学辞退者が15名、それを1次受験者から引くと、387名になります。この人数が、おそらくは本気で慶應湘南藤沢を目指した人数とみなせますので、入学者で割り算すると、18.6%が晴れて湘南藤沢中等部に進学出来た人数となりますね。倍率でいえば5.34倍ということです。

 

 

帰国枠について

 

上の図のとおり、中学から41名、高校から27名もの帰国生が進学しています。

無視できない人数ですね。

 

湘南藤沢中等部の帰国生の入試結果はこうなっています。

1次受験者 109名

1次合格者 69名(合格率 63.3%)

2次受験者 68名

2次合格者 45名(合格率 66.2%)

入学者数 41名

上と同様に、2次試験辞退者と入学辞退者をそれぞれ受験者数から引くと、104名が本気の受験者となり、39.4%が進学できたことになります。倍率でいえば2.54倍です。

 

これだけ見ると、やっぱり帰国生は有利、ということになるのですが、そもそも帰国生受験の条件を満たさないと話になりません。

募集要項によると、受験資格はこのようになっています。

次の①か②の条件のいずれかを満たしている者。

①2022年4/1から2025年3/31までの3年間に通算1年6か月以上、国外に在住した者。 ②2018年9/1から2025年3/31までの6年7か月の間に通算3年間以上、国外に在住した者。

 

つまり、直近3年間の間に1年半以上の海外在住か、小学6年間のうちの3年以上の在住経験か、どちらかを必要とするということですね。

 

ちなみに、東京都の私学は、帰国生の条件として、「海外滞在1年以上、帰国後3年以内」となっています。

比べてみると、東京都の基準よりも厳しいことがわかります。

 

※注意

この学校の一般入試は、帰国生入試の条件を満たす者には閉ざされています。

そもそも試験日も一般入試と帰国生入試は同一です。

よくある帰国生入試のように、「1月までに帰国枠で合格を押さえておいて2月に他校を一般枠で受験」「帰国枠で不合格でも一般枠で合格」といったことはあり得ませんのでご注意ください。

また、最初から一般枠の受験を考えていても、海外在住経験が帰国枠入試の条件を満たしてしまうと、自動的に帰国枠での受験となってしまうので気を付けてください。

出願書類には、1年~6年生までの在校履歴を細かく書かなくてはなりませんので、「誤魔化す」ことはできません。

 

※注意その2

慶應に限らず、帰国生入試を行っている学校は、入試制度や応募条件を変更することがあります。実際に目指す場合には、学校にこまめに確認してください。

 

英語入試について

この学校は、帰国生入試ばかりか、般入試でも

1)算国理社4科目

(2)算国3科目

のどちらかを選べます。

しかしながら、英語入試のレベルは相当高く設定されています。

学校によると「英検準1級レベル」となっています。

問題を見てみましたが、1級レベルに思える単語も使われていました。

 

一般には、英検の取得目安は、3級が中学卒業レベル、2級が高校卒業レベルとされています。

実際には、高校卒業時に2級まで到達する生徒は多くありません。

準1級となると、大学中級レベルです。

 

海外経験がとくにない小学生で、早くから英語教室に通わせて英語教育に力を入れていた家庭だと、小6で3級取得といった話をよく耳にします。そこまで到達していると、中学生になってからかなりのアドバンテージが感じられると思います。

たまに準2級取得! といった子もいますが、中学受験を考えた場合、そこまで先走らなくても、と思います。

 

ということは、せっかく頑張って英検準2級まで到達しても、この学校の英語入試には歯が立たないということになるのです。

 

帰国生枠には入らない帰国生、インターナショナルスクール、そうした生徒のための入試だと思います。

 

ところで、2025年から始まる豊島岡の英語資格入試の基準も、英検準1級取得で100点とみなす配点となっています。

 

いままで帰国生入試以外で英語入試を行っている学校はいくつもありましたが、だいたい英検3級レベルとなっていました。

 

慶應湘南藤沢や豊島岡のように、「小6で英検準1級」を求める動きが広がらないことを切に願います。

 

これ以上受験生の負担を増やしてほしくはないからです。

 

もちろん、英語入試を行うかわりに4科目入試の科目数を減らすことなど本末転倒だと思っています。ここで学ぶ4科目の素養は、その後に大切な基礎教養だからです。

 

 

※面接試験については以下の記事に詳しく書いています。

peter-lws.hateblo.jp