中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】SAPIXの虚構と真実

 

中学受験のための塾選びを考える時、SAPIXという塾ほど気になる塾はありません。

「合格実績はすごいけど本当なのかしら?」

「うちの子についていけるのかしら?」

 

今回は、SAPIXサピックス)という塾について、虚構と真実を見極めていきたいと思います。

※記事に書くのは、あくまでも私個人の主観にすぎません。この塾を持ち上げる意図も貶める意図もありません。

合格実績は本当なの?

 

残念ながら、いろいろな塾が公表している合格実績は、必ずしも信頼できる数値ではありません。むしろほとんど信頼できないと思ったほうがいい。

それでは、サピックスの実績の数値は真実なのか?

 

true (だと思っています)

 

私がそう判断する根拠は3つあります。

 

◆HPで1名合格の学校まで公表されている

◆各校舎単位の実績を公表している

◆教え子からの情報

 

まず、HPの合格実績のページを見てみます。

「第35期 在籍者数 6436名 (2024年2月28日現在 )」と冒頭に掲げています。

実は、小6の在籍者数=受験した生徒数 を公表している塾はほとんどありません。

私の知る限り、大手四大塾ではサピックスだけだと思います。

あとは、関西の希学園や神奈川の啓進塾、グノーブルくらいしか思いつきません。

ここを明らかにしてしまうと、塾の実力=在籍者数のどれくらいがどういった学校に合格しているのか? があからさまになってしまうからです。

サピックスのこの姿勢は、自信の表れといってもいいでしょう。

 

そして、あいうえお順に並べられている合格者数を見てみると、1名合格の学校まで載せています。つまり、全ての合格校を漏れなく載せていると思われます。

もしお子さんが合格した学校を塾に報告したのに、実績として載せられていなかったらどう思うでしょうか?

「うちの子が合格したような学校は塾にとって広告価値が無いのね。だから無視された」と傷つき、さらに「他の合格実績も粉飾しているんじゃないの?」と疑惑が芽生えます。

やがてその声が噂として、「あの塾の合格実績は信頼できない」となるのです。

 

次に、各校舎では、校舎単位で合格者数のちらしを作成しており、校舎を訪れるともらえます。限られた地域・限られた生徒数の実績ですから、ここをごまかすとすぐにばれてしまいます。

「僕のいた開成クラスからは僕と〇〇君と2名しか合格していないのに、何でちらしには3名ってなってるの? それって誰だよ?」

こんな声があがってしまうのですね。

 

私の教え子で、難関中学に進学した生徒に聞く話です。

「クラスのほとんどがサピックス出身だったよ」

「ほとんどってどれくらい?」

「よくわかんないけど、たぶん半分以上」

実に曖昧な情報ではありますが、難関校への進学者数が多いことは確かなようです。

 

さらに付け加えていえば、塾業界というのは狭い世界です。教師の転職もよくあります。「合格実績の粉飾」など、すぐに広まっていくのです。

今のところサピックスに関して、そうした噂を聞いたことはありませんね。

 

ついていくのが大変なんでしょ?

 

とにかく勉強をハードにやらせるイメージがこの塾にはつきまとっています。

はたして本当のところはどうなんでしょうか?

 

true (のはずです)

 

そもそも、開成や桜蔭や筑駒は、ゆるい勉強で合格できるような学校ではありません。

全国トップの(灘を除く)学校なのです。

 

先日、地方の高校からの東大合格実績を調べていました。

都道府県別の東大合格者数を週刊誌の記事から拾うと、このようになっています。

(あくまでも週刊誌からの孫引きデータなので確度の高い数値ではない)

東大合格者数

の表をご覧ください。都道府県ベスト20です。

東京の一極集中は甚だしいなあと感じますね。

もちろん、東大ばかりを全国の受験生が目指すはずもありません。

関西からは、おそらく京大に流れているのでしょうし、その他地方にも魅力的な大学は多数ありますので。

 

ふと気になったので、東大合格者数高校別ランキングも右横に並べてみました。

西大和・ラサール・東大寺・久留米大附の健闘が目立ちます。日比谷も復権しましたね。

しかしそこが見たかったのではありません。

たとえば桜蔭

女子校の桜蔭たった一校で、静岡・広島・福岡県の合格者数を抜き、大阪全体と互角の合格者数となっています。

凄い。凄すぎます。

 

こうした難関校への合格者を輩出しているサピックスです。

それは「ついていくのが大変」なのも当たり前だと思います。

 

※もちろん、サピックスからも幅広い学校へ合格が見られます。

そんなに過酷な勉強をせず、それなりの学校へ進学していく層も当然いるはずです。

 

難関校を目指さないのなら、サピックスは意味ないんでしょ?

 

この声も聞くことがありますね。

なにせ難関校の合格実績が目立つサピックスです。

そんな学校を目指さないのなら、意味ないのでは? 

そう思う人もいるでしょう。

 

true or false(人によります)

 

公表されている合格実績を見ると、「へえ、サピックスでもこんな」と思わされる中学校(あくまでも偏差値上だけの話です)へかなりの人数が合格しています。

いくらサピックスといえども、さまざまな生徒が在籍している、そんなのは当たり前ですね。

そしてここで学んでそうした中学校へ合格(おそらくは進学も)していく生徒が多数いるのもまた、当たり前のことです。

学校の魅力は偏差値だけで語れるはずはありません。偏差値によらず、良い学校・進学したい学校はたくさんありますので。

 

つまり、「意味がある」のか「意味がない」のかは、まさに通っている生徒次第ということなのです。

 

個人的には、居心地の良いぬるま湯塾よりも、できる生徒がたっぷりといる塾で上を目指してもがき続けることでこそ、学力は高まると思っています。

 

サピックスって、できる生徒を集めているだけなんでしょ?

 

ううむ。この声も聞こえてきますね。

若干やっかみにも聞こえます。

 

true or false(見方によります)

 

今や、首都圏で難関校を目指す受験生の第一選択肢にあがる塾であることは間違いありません。当然、優秀な生徒が集まります。

 

しかし、積極的にそうした生徒の獲得に動いているのかというと、そんなこともなさそうです。

無料体験授業も無料テストも特待生制度もありません。テストを受けた生徒への勧誘もあっさりとしたものです。

つまり、優秀な生徒を集めるために他塾が必死でおこなっている「営業」が皆無なのです。

まあ、そんなことをする必要がないということでしょうけれど。

 

6年生後半に日曜日に実施される「日曜特訓講座」(サンデーサピックス特訓)も、入室テスト合格者なら外部の生徒(つまり平日はどこかの塾に通っている生徒)にも開かれていますが、ここだけに所属している生徒の難関校合格数は少ないと聞いたことがあります。他塾の優秀層を集めるシステムとして機能していないのですね。

したがって、「自然に優秀層が集まる」ことは確かだけれど、「塾がよそから優秀層をかき集めている」わけではない、ということになると思います。

 

サピックスを辞めて他塾に行く生徒が多いんでしょ?

 

とかくハードな噂がつきまとう塾です。

ついていけなくて辞める生徒が多そうですよね。

 

true (ただしどこも同じです)

 

そこの塾が合わなくて辞めていく生徒なんて、どの塾でも一定数いるのが当たり前です。

それがどれくらいの人数なのか、割合なのかなんて外部の我々に知る術はありません。おそらくトップシークレットの情報だと思います。サピックスがとくに退塾者が多い塾だとは思えませんが、確認もできません。

まあ、その塾のテストを受けてみると、母数が減少していることがうかがえる程度です。

 

サピックスに入ってはみたものの、途中でやめていく生徒がいることはいるでしょう。

その理由は様々だと思います。

◆勉強がハードすぎた

◆いくらがんばっても(がんばったつもりでも)順位が上がらない

◆受験校を見直した

◆他塾から誘われた

◆疲れた

まあ、様々な理由があることだと思いますが、これはどこの塾でも同様です。

しかし、「隣の芝生」ではありませんが、どの塾に移ったところで、気に入る点と同じくらい、不満な点などあるものです。

転塾を繰り返す方は必ずいますが、おすすめできません。

 

もちろん、塾・教師との相性というものはありますので、もしミスマッチだと感じたのなら、早めの転塾は正解です。

 

サピックスの保護者(母親)って〇〇なんでしょ?

 

ううむ。

この〇〇には、「上昇志向が強い」「なりふりかまわず受験に邁進」「教育虐待レベル」「怖い?」などなど、何等かのワードが入るのでしょう。

 

false(何を言っているのやら)

 

まあそんなことを言う方は放っておきましょう。

 

親がわが子の幸せに心を砕くのは当たり前です。

教育こそ子どもの未来につながる、そう考えることのどこが悪いのでしょう。

 

別にサピックスに限らず、中学受験をするしないにかかわらず、子どもへの接し方や周囲への態度にいささかの問題がある方はいらっしゃいます。

ただそれだけの話です。

 

このように、特定の事例を一般化し、所属する組織に拡大解釈して喧伝するのは、いわゆるレイシストと呼ばれる方々の常套手段です。

「〇〇人は△△だ」というやつです。

それと同じ発想です。

 

こちらにより詳しく記事にしています

peter-lws.hateblo.jp