国語の漢字テストではありません。
国語の記述問題、理科・社会の解答
どこまで漢字?
ひらがなは×?
今回はこの疑問について考えます。
駒場東邦の例
例として駒場東邦をとりあげます。
学校説明会で配布された、「受験生のためのQ&A」という小冊子にはこうありました。
Q:漢字で書くことが求められていない場合、ひらがなで答えてもよいでしょうか。
A:小学校教育の学習範囲内で書くことが原則ですが、日常生活でよく見聞きする物事については社会常識として身につけておくことが望まれます。
昔の駒場東邦中の入試問題(社会)の表紙にはこんな文言が書かれていました。
「漢字で書くべきものは全て漢字で書きなさい」
うろ覚えで恐縮ですが、たしかこんな文言だったと思います。
つまり、「ALL漢字指定」ということです。
社会科の場合、人物名や地名、公民用語など、小学校の学習範囲の漢字「1026字」には含まれないものがたくさんあります。
・安積疏水
・厩戸皇子
・葛飾北斎
・松尾芭蕉
・井伊直弼
・遣隋使
・弾劾裁判
・夏目漱石
・森鴎外
まだまだたくさんありますね。
これらを、「小学校では習っていないから」という理由でひらがなで書いたらどうでしょう?
「あさかそ水」
「うまや戸皇子」
「かつしか北さい」
「松尾ばしょう」
「井伊直すけ」
「けんずい使」
「弾がい裁判」
「夏目そう石」
「森おう外」
なんだこれは?
もう気持ち悪いったらないですね。
そこで「漢字で書くべきものは漢字で」という指定になるのも当然です。
むしろ親切すぎるほどです。
ほとんどの学校では、とくに漢字指定になっていなくても、減点(あるいは×)にしている可能性すらあるからです。
ところが、その後、駒東の入試問題の表紙から、この文言が消えたのです。
さて、解答方法も変わったのでしょうか?
◆相変わらずのALL漢字指定のままである
◆ひらがなでもOKとなった
いったいどちらなのか、とても気になりますよね。
ちょうどそのタイミングで、駒場東邦の当時の校長先生にお会いする機会があったのです。
さっそく聞いてみました。
「書いてある通りです」としかおっしゃいませんでした。
しかし、そのご返事を鵜呑みにするには、私はこの業界に長く居過ぎるのです。
私は、相変わらずの「ALL漢字指定」だと信じています。
Q&Aの、「社会常識として身につけておくことが望まれます」という文言が全てを言い表していると思います。
つまり、入試で問われるような語句を漢字で書くのは「社会常識」であると考えるべきでしょう。
国語の場合
国語は、漢字問題が独立して設定されています。
ということは、記述問題等は漢字でなくてもかまわないのでしょうか?
例としていくつかの学校の国語の記述問題を見てみます。
◆開成
「・・・鵺を見る前と見た後で、「翔也」の気持ちはどのように変化しましたか。説明しなさい。」
「周囲から執拗な苛めを受け続け学校にも家にも居場所がなく命を捨てるつもりだったが、絶望のなかで見た鵺のような完全なる異端として、忌み嫌われても堂々と生きればいいと考えるようになった。」
「しゅういからしつようないじめをうけつづけ学校にも家にもいばしょがなくいのちをすてるつもりだったが、ぜつぼうのなかで見たぬえのような完全なるいたんとして、いみきらわれてもどうどうと生きればいいとかんがえるようになった。」
どうでしょう?
全く同じ文章のはずなのに、まるで違う解答のようにすら見えてきます。
私が採点者なら、最後まで読まずに×にします。
◆鴎友
「僕は一人称単数の主語を取り戻していたのだ。だから述語も変わる」とありますが、その結果どのようになると筆者は考えていますか。本文全体を読んで説明しなさい。
「全てを自分で決め責任を持って行動することになって、視野が開け、世界の多面性や多層性に気づくようになると考えている。」
「すべてを自分できめせきにんをもってこうどうすることになって、しやがひらけ、せかいのためんせいやたそうせいにきづくようになるとかんがえている。」
これもひどいですね。
頭の悪さ丸出しの答案になっていまいました。
問題文章中で漢字表記されている語句は漢字で書くのは当然として、自分の言葉で書く答案であっても、適切に漢字を用いるのが常識なのです。
そもそも日本語における漢字の役割を考えれば明らかですね。
とくに漢字熟語は、キーワードとなる語句である場合がとても多いのですから、それをひらがなで書いたのでは話になりません。
つまり、国語においても漢字で書くべきところは漢字で書かねばならないのです。
結論
漢字で書きましょう。
ひらがなでは×になると考えておきましょう。
日ごろの学習では、常に漢字を使う習慣が大切です。
ところで、漢字で書くことについて生徒に指導していると、必ずこう聞いてくる生徒がいます。
「先生。それでも漢字で書けない字はどうすればいいのですか?」
おろかな質問です。
書けないものは書けないのですから、どうしようもありません。
そこでこう答えます。
「時間ギリギリまで漢字を思い出す努力をしなさい。それでもどうしても書けないのなら、もうそれは仕方がない。心を込めて、祈りながら丁寧にひらがなで書くしかないだろう」
「ええ~。だって漢字で書いて間違えてたら×になるんでしょ? それだったらひらがなで書いたほうが〇になるのじゃないの?」
これが本音ですね。
学校のテストや、塾のテストにおいては今まではそうだったのかもしれません。
しかし、入試問題はそんなに親切でしょうか?
中学生になってまで、漢字の指導などしたくはない。これが中学校の先生方の本音だと思います。
「常識的な漢字は書く」
そう考えるべきでしょう。
国語の漢字問題への対応は、以下の記事が参考になります。