中学入試の国語では、物語文の比重が高くなっていいます。
しかし、どうにも苦手とする生徒というものがいます。
今回は、そうした物語文の読解が苦手な生徒へのアドバイスとなります。
本を読むのが好きじゃないから
良く聞くのです。
「うちの子は本が嫌いだから。物語文が解けないのは仕方ないですよね?」
読書と国語の得点力には相関関係はもちろんありますが、「本さえ読んでいれば国語は解けるようになる」ような単純なことではありません。
「本好きな子」は物語文を苦にしません。しかし苦にしないだけで、得点できるとは限りません。
いったん読書と読解を切り離す必要があります。
A 国語が苦手で読解ができていない
まず最初の問題把握ができました。
国語の答案を見ると、合っているのは漢字と語句だけ(それもパーフェクトではない)
記号選択問題も、「この物語の内容と合っているものを選べ」という問題を間違えている。
記述問題も的外れ。
つまり、読解ができていないのですね。
B 原因分析として、「本を読まないからだ」と考えました。
実はここが間違っているのです。
間違った原因分析をしてしまえば、当然解決策も間違えます。
C 本を読ませよう
さて、本を読まない子に、無理やり本を与えても読むようにはなりません。いくら言っても注意しても叱っても怒っても読むようにはなりません。
そもそも怒られながらする読書っていったい・・・・・。
D うちの子でも読める本を探そう
書店に行くと、様々な本が売られています。
ネットで検索すると、様々な本が紹介されています。
そこで、本が嫌いな子でも読めるような本は無いかな? と探すのです。
そして見つけたのが以下のようなものです。
・ライトノベル・・・イラストがたくさん入っていておもしろそう。「異世界転生」物なら、ゲーム好きのうちの子でも読んでくれそう。
・文字よりも絵の比重が高い本。つまり漫画。「サバイバルシリーズ」なら、理科や社会の勉強にもなりそう。
・ノベライゼーション、つまりゲームやアニメを小説に仕立てたもの。
はっきり断言します。
何冊読もうが、何の役にも立ちません。
時間の無駄です。
頭に負荷のかかる読書でなければ意味がないのです。
そこで、最終段階に到達しました。
→「あいかわらず国語は苦手だがしかたがない。算数に力を入れよう」
この負のループから脱出しましょう。
最初の原因分析に問題があったのです。
物語文の読解には単純なやり方があるのです。
入試問題(レベルの国語の読解問題)を用意する
お子さんが5年生以上なら、入試問題の国語の文章が扱えます。
何も国語が苦手だから、まだ5年生だから、といって、易しい文章(小学校教科書レベル)をいくら読ませても、読解力など身に尽きません。
やはりここは入試問題の文章を利用するのが王道です。
学校HPで公開もされていますが、いちばん手っ取り早いのは、書店で入試問題集を買ってくることでしょう。
「中学入学試験問題集」(みくに出版)がいいと思います。
この出版社は日能研の系列です。
お勧め理由はたった1つ、教科別になっているからです。
今欲しいのは国語の問題なので、みくに出版のもの1択です。
※注意
けっこう高いので、BOOKOFFで古本を買えばいいといいたいところなのですが、私が見かけたものは、全て別冊模範解答が抜けていました。
おそらく売り手が模範解答を抜いて古本屋に持ち込み、古本屋も気が付かないで買い取って店頭に並べているのだと思います。
ひどい話です。ご注意ください。
登場人物を整理する
まずやるべきことは、登場人物の整理です。
その際、文章からわかるあらゆる情報を探しましょう。
◆タロウ・・・中学3年生、サッカー部所属、母子家庭。地方の強豪高校から推薦の話がきたが、母親には言い出せない。3歳年上の引きこもりの兄がいる。
◆ケンタ・・・タロウの同級生でサッカー部キャプテン。
◆ハナコ・・・タロウと幼稚園からの幼馴染。絵を描く才能がある。不登校が続き、高校進学に疑問を持っている。
◆キョウコさんさん・・・タロウの近所に住む、兄の元ガールフレンド。きつい性格だが、なぜかタロウにだけは優しい。
例えばこんな具合でしょうか。
これだけ登場人物を整理できれば、もう物語の背景が見えてきます。物語が動き出す音が聞こえてきますね。
(すいません、思いつきで書きましたが、何ともありきたりな設定で恐縮です。でも、入試に出てくる物語文にいかにも出てきそうな設定です)
舞台と時間を整理する
物語はお芝居の舞台だと考えます。
舞台の幕が開きました。
舞台は学校の教室です。そこでケンタとハナコが会話しています。
どんな学校でしょうか。都会の学校? 田舎の学校?
そして、季節はいつでしょう?
次に、舞台が変化しました。サッカー部の部室です。タロウとケンタが言い争っています。
次の舞台は、タロウの家。夜7時過ぎですが、母親はまだ帰ってきません。手土産の弁当を下げて、ふらりとキョウコさんがやってきました。
このように、物語の舞台はどこなのか、そしてその時間はどうなのかを考えるのです。
舞台が変化すれば、必ず時間の経過を伴います。
もしかして一気に1年の時が流れているかもしれません。
あるいは、回想シーンがはさまっているかもしれません。
とくに回想シーンが苦手な生徒は多いですね。途中で頭がこんがらがってしまうようです。
そうした事態も、きちんと舞台と時間を確認して整理することで防げます。
また、時代設定もおさえましょう。
最近の入試で扱われる文章は、現代の作家のものが多くなりました。必然的に時代設定も現代のものばかりです。
しかし、たまに戦時中や昭和の後半などの物語が出てくることもあります。
少しのヒントから、こうした時代背景を探ることで、より読解がしやすくなるのです。
さて、舞台・時間が変化するということは、そこで物語が動きだすということです。
主人公の心情の変化を考える
物語文の多くは、主人公の心情変化をテーマとしています。
何か出来事があり、それをきっかけに主人公の心情が変化するのです。
最初からそこに注目することで、読解がずいぶんしやすくなると思います。
そして、ほぼ全ての主人公の心情変化は、マイナスからプラスへの変化です。
何か事件・出来事・過去があり、現在主人公は心にマイナス要因を抱えているのです。そして、学校や家やその他の場所で、何かのきっかけがあり、主人公の心情がプラスへと変化するのですね。
小中学生を主人公としたいわゆる「青春小説」の大半が、このパターンです。そして、入試問題として切り取られるのもまたそうした部分、つまり主人公の心情がプラス方向へと変化するところなのです。
私の今まで見てきた国語の入試問題で、主人公の心情が「闇落ち」するところを取り上げたものはありませんでした。
中学校の国語の先生だって、そんな文章は問題として使いたくないのでしょう。
感情を表現する語句に熟達する
ゆるす
あわれむ
いらだつ
あきれる
青ざめる
震える
鳥肌が立つ
あこがれる
ためらう
てれる
とまどう
苦笑する
心が痛む
ため息をつく
がっかりする
悔やむ
負い目を感じる
キリがないのでこのへんまでにしますが、こうした「登場人物の感情を示す」表現は重要です。
文中にはっきりと書かれている場合はいいのですが、多くの場合は曖昧にぼかされています。
「花子は、太郎の言葉を聞いて黙ってしまった。下を向いた花子の口から小さな声がもれた」
こんな風に書かれていて、そして「花子の気持ちを説明しなさい」といった出題となるのですね。
そして解答には、花子の心情を示す表現を的確に入れる必要があるのです。
「太郎の提案を聞いて花子はがっかりした。」
「太郎の提案を聞いて花子はあきれてしまった。」
こんな風に、的確な感情表現を示す語句を使わなくてはならないのです。