今日は、鴎友学園について取り上げてみます。
最初にお断りしておきますが、私はこの学校が気に入っています。
その理由などにも触れてまいりましょう。
※この記事では、
の文字を鴎と表記します。記事をごらんになる環境で文字化けすることを避ける目的ですのでご容赦ください。最近の機種環境では問題ないはずですが、念のため。
※この記事の最後に、鴎・鷗にまつわる混乱について説明しています。
学校の成り立ちとあゆみ
詳しくは学校HPを見てください。
1935年に東京府立第一高等女学校同窓会(鴎友会)により設立されました。
90年近くの歴史があります。
私は、伝統校の一つの条件として100年の歴史を持つことと考えていますので、あと少しです。
鴎友学園は、ミッション系の学校ではないですが、キリスト教の精神に基づく教育が特徴で、週1時間の聖書の時間もあります。
そういえば、洗足学園も同じように、ミッション系ではないがキリスト教精神に基づく教育です。この両校は直線距離で6㎞しか離れていません。
併願・検討されることの多い学校だと思います。
正確に覚えていないので恐縮ですが、この学校が改革に踏み切ったのは1990年代か、その少し前あたりからだったと思います。
それまでは、良くも悪くも「世田谷のお嬢様学校」といったイメージを持っていました。
おちついた住宅街に立地していますし、周辺に遊ぶ街もなく(せいぜ三軒茶屋?)、乱れた生徒もいない印象です。ただし、大学実績はそう目覚ましいものではなかったと記憶しています。4大以外にも、短大や専門学校への進学も多かった時代です。
そのころだったでしょうか、この学校が「塾関係者向け説明会」を開いたのですね。たぶんこうしたイベントも初めてだったのではないでしょうか。
さっそく参加してはみましたが、運営が不慣れでほほえましかったことを覚えています。
講堂での説明会の後、校舎内及び授業見学をさせていただけたのですが、案内してくださった先生はどの教室でどの授業を実施していてどの授業見学を我々にさせるのかを把握はされていませんでした。
廊下を歩きながら、「ああ、この教師は体育中か。あ、こっちは家庭科教室に行ってしまいましたね」などとつぶやいています。やっと授業をしている教室を見つけたのですが、保健体育の授業でした。性に関連する授業だったのです。「御覧になりますか?」と誘われましたが、丁重にお断りしたことを覚えています。
やがてこの学校を大きく変えることになる改革が実行されます。
入試科目を2科目から4科目に切り替えたのです。
当時は、算国2科目だけを入試で課す学校が、とくに女子校に多かったのですね。
しかし時代の要請というか、次々に4科目に切り替える学校がでてきた時代です。
2科目から4科目に切り替えた初年度の理社の入試問題は、どの学校平易な出題なのが通例でした。
その学校目指して算国だけ勉強してきた受験生に解けそうな理社の問題というしつらえです。
鴎友では、まず理社の「試行問題」を作成し、自校の中学1年生に解かせて、平均点などの調整を行ったのですね。
私もその「試行問題」を入手してみると、予想通り、平易な、つまり非常に簡単な基本問題で構成されていました。
さて、入試本番を迎え、すぐに実際の入試問題を入手してみた私は驚愕したのです。
試行問題とは似ても似つかぬ問題が出題されていました。
オールカラーということも目をひきましたが(たぶん全国初)、思考力系の記述問題が何題も出題されていたのです。
私の率直な感想は、「やっちまったな!」というものでした。
明かに受験生のレベルと合っていない出題だったからです。
理社の先生が張り切り過ぎて暴走したのでは、と憶測しました。
たぶん、受験生の得点は悲惨だったはずです。まさかそんな思考力系記述問題が出るとは予想していないでしょうから、おそらくは大部分が白紙だったのではないでしょうか。
こうした場合、学内で問題となって、次年度から修正されるのが普通です。
しかし、鷗友は異なりました。
それからも毎年、同様の力のこもった思考力記述力問題を出題し続けたのです。
そのためだと私は確信しているのですが、少しずつ、受験生のレベルも上がってきました。当然進学する生徒のレベルも上がってきます。
そして、大学の合格実績も上がってきたのです。
大学実績
一目瞭然です。
私が最初にうかがった当初は、早慶に1・2名程度が何とか受かるレベルの学校だったのです。それが今や東大・一橋・東工大にもコンスタントにこれだけの合格者を出す学校になりました。
人気が出るのも道理です。
立地
小田急線経堂駅より徒歩8分、東急世田谷線宮の坂駅より徒歩4分 という立地です。
世田谷区の真ん中ですね。
緑の多い環境、とまではいえませんが、住宅地に立地していますので閑静な環境です。通学路も、さほど交通量の多くない通りです。
ただ、三軒茶屋から世田谷線を使おうとすると、乗換が少し大変かもしれません。
三軒茶屋駅の通勤ラッシュはなかなかだからです。
例えば、朝の田園都市線上りで三軒茶屋駅で降りようとすると苦労するレベルです。
世田谷線自体はのんびりとした2両編成の路面電車風でよいのですが。
職業がら、様々な学校を訪問してきました。
その中でも鴎友学園は好印象です。
行きかう生徒達が、ごく自然に挨拶してくれるのです。
こうしたささいな点から「ちゃんとした学校なんだなあ」と思いますね。
そういえば、この学校から直線距離で7キロメートルしか離れていない「香蘭女学校」にも同様の感想を抱きました。
校地面積は実は4万㎢もあります。
都内では男子校でも2万㎢くらいあれば十分とされていますから、だいぶ広いですね。
ちなみに学校内に小川が流れている武蔵は3万平方キロメートルです。
女子校で校地面積を気にされる方はあまりいないと思いますが、校地の広さは心のゆとりにもつながりますので、悪くないと思います。
広い校庭で行われる学年対抗の体育祭はそうとう盛り上がると先生からうかがいました。
英語教育
今時、ほとんどの学校で英語教育には工夫を凝らしています。
この学校も、中1からAll Englishで授業を実施し、多読に力を入れています。
ある意味最近の主流というか王道のやり方だと思います。
進学した生徒に聞いたところ、「塾でやるような文法などあまり扱わないので、最初のうちはとても不安だったが、信じてついていけば英語が使えるようになっていた」そうです。
入試問題
前述したように、この学校は良質の思考力・記述力問題を出題し続けています。
社会科については、全国の学校の中で5本の指に入る良問です。
(私の職業柄、記述問題が大好物なもので)
入試問題には学校の姿勢が反映します。
どんな生徒に入ってもらいたいのかが表れるのです。
この学校の入試問題を見れば、学校の姿勢がはっきりとわかります。
ぜひ一度、入試問題をごらんください。
きちんと入試問題をHPで公開している学校です。
そこにも私は好感を持っています。
(単純に助かるのです)
※入試問題の分析(社会科)をしています。
※おまけ・・・「鷗」「鴎」?
or ?
一言で言ってしまえば、犯人はJIS規格です。
JIS(日本産業規格、旧日本工業規格)は工業製品の様々な規格を定めたものですが、なぜ漢字の世界に「工業規格」が出しゃばってきたかというと、当時のワープロ(死語ですね)で扱う漢字を統一する目的でした。漢字をコード化して共通とすることで、どのワープロの機種でも同じコードで同じ漢字を出力できるようにする目的です。
それが1978年のことでした。いわゆる78JISです。
そのときに当用漢字にはないの文字は、そのまま使われました。
「康熙字典」の字体がそのまま採用されていたのです。
ところが、1983年にJISが改訂されたとき(83JIS)、に改訂(改悪)されてしまったのです。当時のワープロの出力環境では、複雑な字体が扱えないという理由で。
その後、国語審議会が印刷書体を詳細に検討し、の文字のほうが圧倒的に多く使われていたことが明らかになりました。
ワープロが普及する中で、印刷業界が文字を守り通したのですね。
こうして国語審議会がまとめた「印刷標準字体」を、ついにJISが採用し、2004年に改訂されました。
同様の漢字として、「遡」「遜」「餌」「餅」「箸」「葛」「僅」「剝」「喩」「捗」があげられます。
したがって、2004年以降の機種なら、という文字できちんと出力できているはずです。
今PCで普通に変換すると、どちらの漢字も出てきますね。
さらに詳しく知りたい方は、文化庁広報誌が参考になります。
私の記事もこれを参考にしています。