中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】塾と家庭学習のバランスのとりかたを考えよう

今通っている塾を辞めたい

こうしたご相談を受けることがよくあります

理由をうかがってみると、家庭学習と塾の勉強のバランスが崩れていることがほとんどです

今回は、塾の学習と家庭学習のバランスについて考えてみましょう

塾に通っているだけでは成績は伸びない

まず、この基本的なところを確認します。

塾に通っているだけでは、成績は伸びないのです。

よくあるケースとしては、こんなものがあります。

 

①子どもが中学受験をしたいと言い出した

(or 親が中学受験をさせようと思いはじめた)

②そこで通える範囲の塾を検討し、通わせることにした

③子どもは楽しそうに通塾しているので安心していた

④1年以上通っていても、一向に成績は上がらない(or下がっている)

⑤転塾or中学受験からの撤退を考え始める

 

私のところに相談に訪れているのが、⑤の段階なのですね。

⑤の変形バージョンとして、こういうものもあります。

⑤個別指導or家庭教師を追加しようと検討を始める

いずれにしても、塾に通っていても成績が上がらないことに問題を抱えているということはわかります。

 

こうしたご相談をうけた場合の私が最初に尋ねるのはこれです。

「家庭学習はどうなっていますか?」

 

適切かどうかはわかりませんが、例として外国語を学ぶことを考えてみます。

英語ですと学校で学ぶ時間もそれなりにありますので、学校で全く習わない、例えばギリシア語を想定してみましょう。

あなたは、2年後にギリシャに移住しようと考えています。

そこで、駅前のギリシャ語教室に通うことにしました。

教室には仕事帰りに週2回、1時間ずつ通うことにしました。

ただし、仕事が忙しいので、教室以外で学ぶ時間は全くありません。

自宅でもテキストを開くことは一切ありません。

ギリシャ語を学ぶのは、教室にいる時間だけです。

さて、2年後にギリシャ移住に必要な語学力はついているでしょうか?

 

もちろんそんなことは不可能なことはすぐにわかりますね。

上記設定を、週3回、2時間ずつに増やしたところで、2年間で移住に必要な語学力に達しているとはとても思えません。

 

英語ですら、中高6年間(最近は小学校でも少しだけ)学んでいるのに、もし家庭で全く復習の努力をしなければ、例えばアメリカの大学に進学する英語力など身につきません。もしかして旅行すら危ぶまれます。

 

一般に、日本人がビジネスレベルの英語をマスターするのには3000時間必要だと言われています。

 

話を中学受験の勉強に戻しましょう。

 

小学校でも家庭でも全く(ほとんど)学ばない内容を中学受験の塾では学びます。

塾に滞在している僅かな時間だけで、それらをマスターすることは不可能です。

まず、この前提を確認しましょう。

 

※ごく稀に、家庭学習を全くせずに塾で全てをマスターして最難関校に合格していく生徒がいますが、そうした生徒は例外中の例外、いわばギフテッドレベルだとお考えください。

私の30年におよぶ経験でも、ほんの片手程度の人数しか思い当たりません。

 

家庭学習時間の見直し

 

学年にもよりますが、塾での学習時間と同じ時間を家庭学習に費やすのが標準です。

おそらくどの塾のカリキュラム・テキストボリュームを見ても、そうした基準になっていると思います。

 

例えば、月・水・金の週3日、1日3時間ずつの通塾だったとしましょう。

その場合は、火・木・土の3日間、1日3時間ずつの家庭学習が必須です。

 

ずいぶん緩い基準だと感じることと思います。

しかし、いたずらに家庭学習時間を増やせばよいというものではないのです。

 

たまにテストがあれば、その復習も必要になってきます。

また、テストの得点・失点状況から弱点が見つかれば、それを補う学習も必要となってきます。

もしかして習い事の時間も必要かもしれません。

小学校で課題が出たり、またイベントに時間をとられるかもしれません。

体調を崩すかもしれません。

そうした要素も考慮すれば、通塾時間と同等の時間を家庭学習にコンスタントにかけ続けることはけっこう大変なのです。

 

塾の学習時間=家庭学習時間

 

まずはこれをキープし続けることを優先しましょう。

 

※家庭学習時間の目安についてはこちらの記事も参考になります。

今読み返してみると、もっと厳しめのことを書いていますね。

peter-lws.hateblo.jp

 

息抜き・気分転換の時間は必要か?

 

これはどちらともいえませんね。

子どもによっては、集中して学習にとりくみ、早く終わらせて後ろに余裕の時間を作るのが好きな子もいれば、集中が30分しかもたず、ちょこちょこと休憩を必要とする子もいるからです。

 

個人的には、息抜きも気分転換も不要だと思っています。

私の指導では、3時間ノンストップが当たり前です。

それくらいの時間、生徒を飽きさせずに集中させなければプロではないと思っています。

ただ、家庭での学習はなかなかそうはいかないでしょう。

1時間に3~5分程度、お茶タイムというのは悪くない作戦です。ついでにチョコレートなど1粒口に入れるとよいですね。真剣に脳を使ったならエネルギー補給が必要かもしれません。また、ずっと同じ姿勢で机に向かっていると首と肩が凝りますので、少しのストレッチも有効です。

 

ただし、他の何かに手を出してはいけません。本・漫画・動画・ゲーム・音楽、そういった別の集中を必要とするものは、息抜きにならないばかりか、次の学習の集中の妨げになります。

学習環境の構築

 

さて、塾の学習時間と同じ家庭学習時間を確保しました。

でも、これだけでは不十分です。

塾での集中度と家庭での集中度はまるで違うからです。

 

さすがに塾の時間中の集中度と同じだけの集中力を家庭で求めるのは無理ですが、少しでもそれに近づける努力は必要だと思います。

 

ポイントをいくつかあげてみます。

学習用の机

 

子どもが学習する机は、専用のものが必要です。

机の上に、何も置かれていない、学習専用の机を用意すべきなのです。

よく、リビング学習が効率的だといいますね?

実は、リビング学習は非効率です。

それはそうですね。だってリビングですから。学習の妨げになる要素で満ちています。

もし効率が上がるとしたら、キッチンは別、テレビは無い、リビングテーブル上にも何も置かれていない、子どもが学習している間は人の出入りがない、親も同じ部屋で学習している、それくらいの環境でなければならないでしょう。

もはやその部屋は「リビングルーム」ではなくなっています。

受験を前にした子ども中心で家庭が回るというのは仕方がないですが、程度問題だと思います。受験生以外の家族がくつろぐ居間をつぶしてまで「総力戦」となるのには賛成できかねます。

 

専用の学習机といっても、そんなに大きなものでなくてもよいのです。

JIS規格の学校机のサイズは、450㎜×600㎜です。塾の机のサイズもそんなものです。それだけあれば十分ということでしょう。

 

子ども専用の部屋

これは不要です。

子ども部屋を与えている方も多いと思いますが、その部屋は学習専用ですか?

ベッド・洋服・おもちゃ・ゲーム・本・漫画、そうしたものは一切無い部屋でしょうか?

もし単純な子ども部屋、つまり子どもに関わる一切を集約しているだけの部屋なら、そこは勉強には不適な部屋ということです。

そもそも、ドアを閉じた密室で一人で1時間以上集中して学習することは、小学生には困難だと思います。

そうした学習が可能なのは中学生以上でしょう。

 

そこで学習専用机の置き場には一工夫必要です。

◆親の目が届くが、届き過ぎない

◆子どもの状況が何となくつかめる程度の距離感

◆人の出入りが多少あっても多くはない

 

家のどこかに、そうした場所はありませんか?

 

例えば、父親の書斎はどうでしょうか。

昼間なら空いていますよね。そこに、子ども用のデスクを設置し、ドアを開け放しておくとよいと思います。父親が帰宅後や休日には、そこで二人で机を並べてそれぞれの学習をするのもよいしょう。

 

あるいは、親の寝室の隅に、パーテーションで軽く仕切ったスペースは作れませんか?

子どもが起きて勉強している時間にベッドは使いませんから、恰好の勉強スペースになりそうです。

 

廊下の突き当りをカーテンで仕切ってスペースを確保できるかもしれません。

 

専用のデスクライトで照度を確保した、集中しやすい環境を作ってほしいと思います。

 

 

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