中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】本番まであと5か月、親が出来ること・しなくてはいけないこと・してはいけないこと

今回の記事は、受験生の親のために書きました。

子ども本人の過ごし方については以下の記事に書いています。

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志望校を確定する

当然ですが、志望校を確定しなくてはなりません。

第一志望~第三志望くらいまではすでに確定しているはずです。

これからは、第四志望~第六志望くらいまでの学校を確定していきます。

いわゆる「押さえ」の学校というやつです。

巷では、第一志望校に合格できる割合は3割くらいと言われているそうです。

この数字の根拠は知りません。

感触としては、男子4割、女子5割くらいのような気もします。

女子より男子のほうがチャレンジする子が多いですからね。

また、第一志望校が複数ある場合もありますので、さほど根拠のある数字ではないでしょう。

いずれにしても、第一志望校以外に進学することを想定して、きちんと準備するのが親の仕事です。

「この3つの学校に合格できなかったら、他の私立に進学する気はありません。地元の公立中に行かせます」と明言していたご家庭が、2月4日ごろに相談に駆け込んでくるなど、よくある話なのです。

 

家族の意志を統一する

さすがに、第一志望校について家族で意見がバラバラなケースはあまりありません。むしろ問題なのは、第二志望校以降の学校についての考えなのです。

例えば、こんな男子生徒がいました。

第一志望は駒東でした。本当は父親の希望は麻布だったのです。しかし、母親が「麻布に進学させたらわが子はまわりに流されてダメになっていきそう」と過剰に心配したのですね。まあ父親も納得し、子ども本人も納得し、第一志望校は駒東で確定しました。

第二志望としては、2日校の聖光を父親は考えたのですが、塾の教師から止められたのです。今や聖光の難易度は上がりましたからね。開成に次ぐ難易度といってもいいでしょう。他に合格していたら4日の聖光を受けてもよい、そうした作戦を伝授されました。もっとも、息子本人は聖光にあまり行きたくはありません。塾の友達の誰かから、「あそこは受験少年院ってよばれてるんだぜ」などとしょうもない話を吹き込まれてしまったからです。どこで聞きかじってきたのかは知りませんが、とんでもないデマですね。そこで、相談の上、第二志望は浅野ときまりました。

家族の意見が本格的に分かれたのはここからです。

母親は、広尾学園と三田国際、そして都市大付属が気に入りました。

3校とも新しい学校ですし、対外アピールにも長けています。最近の人気校でもあります。周囲にも受験する生徒が多いですからね。

しかし、父親は全く気に入りません。実は父親は都内の進学校出身です。

広尾学園? 順心女子か。三田国際? どこだそれは? 用賀っていえば戸板女子のことか。そんなわけのわからない学校はダメだ!」とまあ、昭和の親父のような頑な態度なのです。広尾学園は2007年、三田国際は2015年、都市大付属は2009年にできましたから、たしかに父親が知らないのも無理はありません。かろうじて都市大付属の前身の武蔵工大附属は覚えていましたが、あまり気はすすみません。父親としては、駒東がダメだったら、攻玉社巣鴨で鍛えてもらって大学入試でリベンジするのが良いと思っているのです。

息子本人はというと、しごくマイペースな子どもです。攻玉社巣鴨も向いているとは思えません。そこで私のほうから2日の桐朋、4日の芝中を提案しました。この2校なら、伝統校ですし、校風も子どもに合いそうです。

なんとか家族の意見もまとまり、無事に入試を迎えることができました。

 

どうしても第三志望以降の学校については、何となく縁起が悪い?ような気がするのか、もう一つ真剣に検討していない方が多いように思います。

ここはじっくりと検討して家族の意思統一をはかるべきだと思います。

 

健康管理に心を砕く

これは当たり前ですね。

睡眠時間と食事

この2つは最重要です。

お母様(あるいはお父様)の腕の見せ所だと思います。

ただし、やり過ぎもどうかと思います。

この夏にも、猛暑の中、決してマスクを外そうとしない生徒がいましたね。炎天下を歩いていて汗でマスクが透けているのです。しかも、ひっきりなしに手をエタノールで消毒しています。よほど親から厳しく言われているのでしょう。

熱中症リスクもありますし、これではかえって免疫力が下がるのではないか? 思わず心配になってしまいました。

 

卒業生のあるお母さまは、とにかく子どもの好きそうなものを、栄養バランスを考えてたっぷりと用意したとおっしゃっていました。そして、家族全員で決められた時間に食卓を囲んだそうです。

ただそれだけでいいのだと思います。

 

過剰な期待は抱かない

親なら誰もが子どもに期待します。

当たり前です。

子どもだって、親の期待に応えようと頑張っているのです。

しかし、奇跡は起きません。

子どもの能力や学力、伸びしろを冷静に見極めてあげてください。

こんなご家庭がありました。

子ども本人はなかなかの努力家で、成果も上がっていました。

父親も母親も、都内の難関私立中高出身です。

しかし、ご両親に言わせると、自分たちは中学に入学した時点が最大瞬間風速だったそうで、それから失速したそうです。実は、進学した学校は、自分たちの身の丈に合っていなかったことを実感したとか。

そこで、わが子には過剰に期待することなく、塾で薦められた、ぎりぎり合格できるかもしれない難関校から少し下げた学校を志望しました。

両親のDNAを考慮したと笑っていましたが。

幸いにして、進学した学校は家族全員ファンになった学校だそうで、充実した中高生活を送れた(そして納得の大学に進学できた)そうです。

 

子どもの微妙な変化を見逃さない

入試に向けて、家庭でも塾でもギアが一段も二段も上がってきました。

子どもが一番プレッシャーを受けています。

無意識のうちに、子どもたちもそうしたプレッシャーを回避しようとしていきます。

例えば、塾からの帰りが遅くなったりします。

別に授業が長引いたわけではないのです。他のクラスの友達を待っていたり、何となく教師に質問に行ったり。

不安なんですね。

塾にいれば、戦友というか、同じ状況の仲間が大勢います。何となく帰りたくなくて、いつまでもダラダラと塾に残っているのです。

例えば、妙に饒舌になる子がいます。

テンションが高くなるというか、ちょっと不自然なほどなのです。

あるいは、細かい点数を妙に気にし始める生徒もいます。今までは周囲が口を酸っぱくして言ってものんびりとしていたのですが。

その他、子どもたちの変化は様々です。

そうした変化が良い影響をもたらす場合もありますが、そうでない場合もあります。

お子さんの微妙な変化を見逃さないようにしていきましょう。

 

マーフィーファクターを考慮する

マーフィーの法則」というものをご存じですね。


If anything can go wrong, it will.(失敗する余地のあるものは、失敗する。)

というやつです。

いかにもアメリカ人が好みそうなジョークのようなものですね。

そうして、例えば、

The chance of the bread falling with the buttered side down is directly proportional to the cost of the carpet.

などという法則?が無数に展開しています。

 

さてここでマーフィーファクターというのは、私が読んでいたアメリカの小説で主人公が使った表現です。

簡単にいってしまえば、不測の事態に備えよ、ということですね。

例えば、毛糸のセーターを編むときに、5玉の毛糸で足りるはずだけど、6玉準備するのです。途中で猫がじゃれついてもつれて使えなくなるかもしれませんから。

 

中学受験では様々なアクシデントがありました。

◆雪による電車遅延

◆雪による受験日・時間の変更

◆交通事故や電車の故障

◆本人の急な発熱・感染症

◆受験票を忘れた(信じられませんが実話です)

◆筆記用具を忘れた(これも実話です)

その他にも、想定よりも試験教室が暑すぎた(寒すぎた)とか、乗る電車を間違えたとか、もうあらゆるトラブルが実際に起きているのです。

そこで、あらかじめそうしたトラブルに備える必要があります。

中学校までのルートは複数想定して、時間も考えておきます。文房具セットは予備のセットを準備します。当日の発熱も考慮して、たとえ40度の熱があっても合格しそうな学校を準備しておくとか、あるいは日程をずらして押さえの学校を用意するのもよいでしょう。

交通機関のアクシデントへの対処として最も有効なのは、学校近くのホテルを予約することです。試験日の朝、余裕をもって学校へ向かえますので。しかし、ホテル泊に慣れていない子どもだと緊張して睡眠不足になってしまうかもしれません。このあたりは子ども次第です。

 

常に最悪の事態に備えるのが、親の仕事だと思っています。

 

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親がしてはいけないこと

 

これは簡単です。

不安な顔をすることです。

子どもは、想像以上に親の顔色をうかがいます。

親が少しでも不安そうな様子を見せれば、確実に子どもに伝染します。

中学入試なんて、長い人生のほんの一瞬のできごとにすぎません。

成功しようが失敗しようが、大きな影響などないのです(本当は大ありです)

それくらいに構えて、子どもを見守っていきたいものですね。

とくに注意したいのは、両親がそろって前のめりになることです。

父親か母親のどちらかが、子どものプレッシャーの安全弁とならなくてはいけません。

例えば、決められた学習ルーティンを守らせようとしても、子どもだって人間ですから、集中できないときもあれば疲れているときもあるでしょう。母親が神経質になりかかっている場面で、「まあまあ、今日は疲れているようだから、もう寝ようか」とのんびりと父親が声掛けをしてあげる。そうしたバランスがとても大切です。

 

最後に

受験が終わってから絶対にしてはいけないことがあります。

過去を振り返ることです。

受験にIFはありません。

子どもが進学する学校が最高の学校なのです。

受験が終わった瞬間から、前を向いて子どもを褒めてあげましょう。