今回は、語彙力と記述力の向上にとても役立つ学習法を案内します。
私は「決定版」だと思っている学習法です。
名付けて「短文作成法!」
あれ? そんなに珍しい方法か?
すいません、かなり基本的かつ一般的な学習法です。
でも、効果のほどは保障します。
短文作成法
文字通り、語句を指定して短文を作成させます。
例をあげてみましょう。
「心もとない」
例解新国語辞典(シロクマ版)によるとこうなっています。
「(心許ない)たよりなくて、不安だ。」
(用例)「きみのやりかたでは心もとなくて、まかせられない。」
(類語)「心ぼそい。おぼつかない。」
ちなみに、「心」をつかった表現が数十種類まとまって書かれているところに載っていました。
紙の辞書の利点はこれですね。「心もとない」を調べたついでに、「心を砕く」や「心やすい」などの表現にも目がとまるのです。電子辞書ではこうはいきません。
さらに新明解国語辞典ではこうなっています。
「あてにしている人が頼りなさそうで(自分に自信が無くて)不安を感じる様子だ。」
さすが新明解、一歩つっこんだ説明でとてもわかりやすいですね。
さて、ここで意味を確認しただけで終わったのでは、おそらく「心もとない」は定着しません。そこで、「心もとない」を使った短文作成をさせてみるのです。
「遊園地に行くのに、子どもたちだけでは心もとない。」
こんな文章がすぐに作れれば、安心できます。もう定着したということでよいでしょう。
もう1問やてみます。
「とっつきにくい」
シロクマ版をみてみましょう。
「取っつき」 ものごとの最初・一番手前
(例)二階のとっつきの部屋にいるはずだ。
おっと、これは別の意味ですね。
「つきあいやすいかどうかという、最初にうける感じ」
(例)とっつきの悪い人。
取っつくという動詞は「取っつきにくい(つきあいにくい)の形で使うことが多い。
さて、新明解はどうなっているかというと。
「取っ付き」物事の着手の初め・手がかり、最も手前
この説明が最初にでています。
「つきあいやすいかどうかを中心としての第一印象。」
これはわかりやすいですね。
短文作成を生徒にやらせてみたところ、こんな短文を作りました。
「この問題はとっつきにくい」
ああ。微妙に違いますね。「取っつく」が「取り組む」と混ざってしまったようです。
このように、子どもの勘違いも浮き彫りになるのが、短文作成の良い点なのです。
そこでヒントを出しました。
「この表現は、人間関係に使うんだよ」
そうしたらすぐに修正してくれます。
「田中先輩はとっつきにくい。」
正解です。そこで、さらにアドバイスをしました。
「この表現は、プラスイメージとマイナスイメージと、どちらかな?」
「マイナスイメージ!」
「そうだね。だから人に対してあまり使わないほうがよい表現なんだね」
短文作成法 漢字編
漢字もまた、生徒泣かせのジャンルです。とにかく圧倒的に読書量が少なすぎるのです。だから、漢字の知識が入っていないのですね。
本当なら読書から身に着けるのが一番なのですが、そうもいっていられませんので、参考書類を利用しましょう。
おすすめなのが、「1026字」とタイトルにある本です。
試しに、「1026字」で検索してみてください。
◆小学漢字1026字の正しい書き方 新装四訂版(旺文社)
◆小学漢字 1026字の正しく美しい書き方:自由自在 ポケット(増進堂・受験研究社)
◆小学漢字1026字の正しい書き方・使い方(小学館)
◆何歳からでもチャレンジできる! 語彙力アップ 小学漢字1026字(すばる社)
◆正しく書ける 正しく使える 小学全漢字1026(学研)
まだまだあります。
正直言って、中身は大差ありません。文庫本くらいのサイズの本で、値段も1000円もしません。700円前後です。たまに大きいサイズで高いものもみかけますが、気軽に持ち歩ける文庫本サイズのものを推奨します。大きな字が必要な場合は読書工房やすばる社のものが良いでしょう。1400円~3500円くらいします。
さて、漢字学習のバイブルともいうべき「1026字」ですが、ここで紹介する活用法は、用例として載っている熟語や語彙を利用した短文作成法です。
例えば6年生で習う「討」という感じがあります。
用例として、「討議・討伐・討論・検討・征討・追討・討ち入り・敵討ち」などが載っています。
この中の適当な語句を使って短文作成させるのですね。
「受験校を検討する。」「赤穂浪士の討ち入り」
こんなかんじでしょうか。
あるいは、「納」はどうでしょうか。
「納税・納品・収納・納豆・納得・納屋・出納・聞き納め・税を納める」
これも「出納」は読みで出されそうな匂いがプンプンしますね。
こうして、小さな本ですが、熟語を拾い出して短文作成をさせるだけで、熟語の知識や漢字の書き方が学べるのです。
短文作成法 文章力向上編
最後に、少し高度な短文作成法を紹介します。
それは、複数の単語を利用して短文を作らせるやり方です。
たとえば、「厳密・困惑」この2熟語ではどうでしょうか。
「先生の厳密な採点に生徒達は困惑した。」
これくらいが瞬時に出るようになれば大したものです。
慣れてきたら、相互に関連性が無さそうな熟語を選んでみるとよいでしょう。
「奮発・自尊心」
これはどうかな?
「祖父は自尊心が邪魔をして、本当はお金が無いのに思わず孫へのお年玉を奮発してしまった。」
こんなところでしょうか。
やはり関連性の無い単語で作ろうとすると、どうしても文章は長めになってしまいます。それが文章力のトレーニングになるのです。
語彙力の身に着け方については、こちらの記事もどうぞ。