中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

その中学に、おやじの会はありますか?

 

たまたまネットの掲示板を見ていて、この質問に目が点になりました。

「〇〇女子中学には『おやじの会』はありますか?」

今回は、中学生の娘と父親の関わり方についての考察です。

おやじの会とは?

寡聞にも、「おやじの会」なるものの存在をあまりよくは知らなかったので、いろいろリサーチしてみたのです。

 

どうやら、公立小学校・中学校において、PTAとは別に誕生したもののようですね。

PTAが母親中心の組織運営になっているのに対して、防犯パトロールやいじめに対する地域活動として生まれたもののようです。

確かに、小学生高学年や中学生ともなれば、身体も大きく、母親たちではコントロールできないことも多々あることでしょう。おやじの会の存在意義というのはわかります。

公立小学校・中学校にしてみれば、地元の父親たちのネットワークのようなものが作れれば、色々と助かることも多いでしょう。

 

しかし、冒頭のネット掲示板の質問は、それとは異なるようです。

私立女子中高に「おやじの会」はあるのか?という質問なのです。

もちろん、質問者は、そうした「おやじの会」を欲しているから質問しているのはわかります。

 

そこで、少し調べてみました。

 

例えば、中村中学・高校のHPにはこうあります。

中村中学校中村高等学校には、「なかむらおやじの会」がある!
全国でも珍しい、高等学校での「おやじの会」が存在する中村中学校・高等学校です。
色々な企画を通して娘達や学校と関わりながら、一緒に学校を盛り上げています。
また、同じ年頃の娘を持つ親同士、仕事に関係なく語り合えるのも魅力です。

原則毎月第三土曜日14時から活動しております。
学園の周囲を中心に校外清掃を実施します。その後「おやじの会会合」を行い、前回の活動状況の反省と今後の活動や新企画提案検討を行い次回の活動を決めていきます。生徒たちの笑顔とおやじの笑顔が見られる活動を実施しています。
有志で行う夜の懇親会では、娘の部活の事や学校生活など仕事を忘れて同じ立場のおやじ達が、時に先生も交えて楽しく盛り上がっています。特に清澄祭「おやじーランド」の企画運営はおやじの会一番の花形行事で、生徒もおやじも楽しく行っています。

中村中高は女子校です。

どうやら自然発生的に誕生した組織のようですが、今では学校の公式HPにも載っていますので、学校としても積極的に宣伝しているとみてよいのでしょう。

 

城西大学付属城西中学・高校

共学のここにもありました。

 

・  6月 体育祭の会場内外の警備
・  8月 納涼会
・  9月 長崎神社のお祭りの手伝い
・  9月 しいの木祭りの準備、模擬店運営
・12月 おやじの会 大忘年会(PTA共催)
・  1月 城西大学箱根駅伝(復路)の応援(有志)
・  4月 入学式の警備、誘導
・  5月 おやじの会総会、新会員歓迎懇親会(PTA合同)

 

こんな活動をしています。

入会すると背中にこう染め抜かれた揃いのポロシャツが買えます。

   おやじの会

頑固おやじが ここにいる
今も昔も 変わらない
家族を愛する 心の輝き
燃えよ おやじ魂
おやじの汗に乾杯!!

 

個人的にはこれは絶対に着たくはありません。

 

その他にも、こんな学校にあるようです。

 

城北埼玉 「おやじの会」

◆女子聖学院 「パパプロ」

◆捜真女学校 「父親の会」

聖心女子学院 「ヨゼフ会」

麻布学園 「おやじの会」

栄光学園 「父親のための聖書研究会」

品川女子学院 「お父さんの会」

◆藤嶺学園藤沢 「おやじの会」

まだまだありそうです。

 

麻布学園にまであることにびっくりしました。

この学校はとにかく自由放任が校風のはず。

生徒の自主性にまかせることを標榜する学校はたくさんありますが、本気でそれを実践している学校はここくらいだと思っています。

せっかくそうした伝統ある校風の麻布に進学させたはずなのに、なぜ「おやじ」が集うのか、理解できません。

 

また、女子校にもけっこうあるのですね。

ためしに、教え子の何人かに聞いてみました。

「進学した女子校に『おやじの会』があって、お父さんがそれに参加してたらどう?」

もちろん答えは予想つきますね。

悲鳴とともに全力拒否です。

それはそうですよね。

中高生は、親からの自立の過程でもあります。その自立する時期をより良い環境で過ごさせるための中学受験ではないのでしょうか?

 

父親と娘との距離感とは

 

こればかりはご家庭によるとしかいえないでしょう。

私としては何人かの例を紹介できるだけです。

 

A子と父

A子は、一人っ子として幼少期より両親の寵愛を受けて育ちました。やがて中学受験を迎えるのですが、勉強面でも父親が強力にサポートしたそうです。

中学入試の試験会場にも、母親ではなく、父親が同行しました。娘にとって、勉強面で信頼できるのは、母親ではなく父親だったのですね。

中学入学後の父娘関係も良好です。女子校に進学した後も、時折勉強についての相談を父親にすることもあり、その話を通じて、父親は娘の学校での様子を把握できているそうです。もちろん、交友関係等についても家族でよく会話に上ります。

べつに父親が学校にでしゃばっていかなくても、そうして様子はつかめるものだというのがA子父の考えです。

 

B美と父

B美は2人娘の妹です。

家庭内では、母・姉・妹の女性3人と父親がはっきり分かれてしまいました。

敵対とはいいませんが、常に女性3人が結託して父親を仲間外れにするのですね。

仲間外れだけならまだしも、3人で見下す言動が目に余ります。

「娘なんて、そんなものですよね」

寂しそうに父親が語ってくれました。

娘二人は私立女子校に進学しましたが、もちろん学校に父親が行く機会などありません。何かあれば母親から言ってくるだろう。そう考えて学費を負担するだけです。

 

C奈と父

3人兄弟の長女のC奈と父親は友達です。

父親としての権威はゼロですが、仲の良い遊び友達のポジションに父親がいるのです。

これは父親に原因があります。悪ガキタイプの父親は、いわゆる「大人気ない」行動をとることが多く、いつも子供たちと同レベルで遊び、喧嘩してきました。

今ではすっかり友達関係をなり、学校の様子や男子に告白されたことなど、なんでも父親に話すC奈です。

D絵と父

とにかく幼少期から甘やかして育てました。

今ではすっかり父親はD絵の下僕扱いです。

今のところは大丈夫だが、今後D絵が何かやらかしてしまったときに、自分ではコントロールできないだろう。これが父親の悩みです。そろそろ反抗期になりかかっているため、もはや父親のいうことなど何一つD絵は聞く耳を持っていないのです。

 

私が聞く範囲には、世間でいう娘の反抗期としては可愛いレベルのものしかありません。父親と同じ空間にいることすら耐えられない、そんなレベルには至らないようです。これがたまたまなのか、あるいは中学入試を経ることの影響なのかはわかりません。

 

どの親子関係が正解だなんていうことは無いと思います。

しかし、せっかく信頼できる学校に進学させたのなら、親は学校にお任せして、見守るくらいがちょうどよいというのが私の意見です。

 

学校サイドがどうお考えなのかはわかりませんが、本当に父親の干渉を歓迎しているのかはわかりません。

例えば、私は受験指導のプロですので、親がそこに口出しをしてくることは嫌いです。そこは任せていただかないと、指導にならないからです。

同様に、学校は思春期の子どもの学校生活のプロだと思っています。そこに親が首を突っ込んでくることなど嫌じゃないのかなあ、と疑問に思っています。

 

学校の様子は、娘から直接聞けば良い。そう思うのです。