中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】志望校についてのアドバイスがしづらいケース そこはプロの意見を聞いてほしい その2

昨日の続きです。

過去のご相談で対応に苦慮したケースをご紹介します。

※個人情報保護の観点から、当事者が読んでも自分のこととわからぬレベルまで設定を変えてあります。ただし、実話です。

いじめの無い学校に進学希望の女子

 

気持ちは痛いほどわかります。

誰だって、安心して学校に通いたい。

どうやら、公立中学に進学した姉が、学校に行けなくなってしまったそうなのですね。同級生男子達からの、心無い言葉が原因でした。

姉は、個性的な性格であり、また群れるタイプでもないため、女子達からの援護射撃は望めず、一人で攻撃を受け続けてしまったということでした。

容姿や人格に対する攻撃は、人として最低の振る舞いです。しかし残念ながら、そうした気遣いのできない男子生徒達が何人もいたのでした。

学校の先生も頼りにならない、と、すっかり学校に行く気持ちを失ってしまったのです。

 

そこで、妹には中学受験をさせることにしました。

しかし、学校選びで悩みます。その学校にイジメ問題があるかどうかなど、外部からはうかがい知ることができないからです。

 

そのご家庭でも、学校説明会に参加した折には、学校の先生方にいろいろ尋ねてまわったそうですが、どの学校もはっきりしたことはおっしゃらなかったそうです。

それはそうですね。

「わが校にはイジメがあります」などと認める学校はあろうはずもありません。また同様に、「わが校にはイジメがありません」と断言することもできないはずです。もしそのように断言される学校があるとすれば、かえって信用できないと思います。

「イジメ問題が起きないように留意してはいますが、もし起きてしまった場合は、学校が全力で誠意ある対応をいたします」

せいぜいこれくらいしか言えないのではないでしょうか。

そして、この言葉通りに誠意ある対応をしてくれればいいのですが。

 

そこで私からしたアドバイスは以下のようなものでした。

 

◆高偏差値の学校ほどイジメが少ない傾向がある(かもしれない)

これに対しては反論したくなる方もたくさんいらっしゃるでしょう。

「そんなことはない! 私の知人の子どもは〇〇中でイジメにあった!」

「〇〇中でイジメによる不登校があると聞く!」

それはわかります。どの学校であれ、中高生が集まっている以上、イジメ問題と無縁ではいられません。高偏差値校といえども例外ではないのです。

私の知っている生徒でも、強烈なイジメ体質で名をはせていた子が、最難関校に進学したケースもあります。

 

ただし、ここで私が言いたいのは、「少ない傾向がある」ということです。

高偏差値の学校に進学するためには、小学生のときに相当な努力をしなくてはなりません。「イジメ」のようなくだらないことに関わっている時間すらないのが普通です。

また、ご家庭の目がお子さんにきちんと行き届いていることも期待できるでしょう。

 

◆共学より女子校のほうが良いかもしれない

どうしてもこの年代では男子のほうが精神年齢が幼い傾向にあります。周囲の煽りに付和雷同してイジメに加担するようなケースがあるかもしれません。

もちろん女子には女子特有の問題があるでしょう。しかし、少なくとも、問題の芽の半分を最初からカットできるのはありがたいですね。

 

◆情操教育を重視した学校を選ぶ

「勉強さえできればそれでよい」

「東大合格実績を最重視」

残念ながら、そうした学校は多数存在します。

もちろん学校側から表立って口には出しませんが、説明会でのお話やHP、あるいは入試制度の設えなどで、学校がどういう生徒を求めているのか、どのように教育しようとしているのかはうかがえます。

学校教育では、何かを重視すれば、何かが軽視される、どこかに時間を費やせば、どこかにしわ寄せがいくのはやむをえません。

そのしわ寄せが情操教育にいく学校は避けたいですよね。

 

私なら、以下のような学校は注意深く情報を集めます。

〇最近急速に大学合格実績を伸ばしてきた学校

〇入試回数を増やし、優秀層の受け入れに注力している学校

〇教育方針に、意味が曖昧な英語を多用している学校

〇クラスを成績や志望校によって細分化している学校

〇帰国生の受け入れに注力している学校

 

もちろん、これらの学校が情操教育に力を入れていないとか、イジメが多いとかいうことを言いたいのではありません。

大学の進学指導と心の指導を両立してくだされば素晴らしいですし、帰国生の存在が生徒の多様性や良い人間関係の構築につながっているかもしれません。成績を競わせることでイジメなどに関わる暇がなくなることもあるでしょう。

 

しかし、大学進学実績を最優先したために、予備校化していったり(中には予備校の先生を採用したり学校内予備校を設置するところも)、学力優先で若い教師を採用しすぎて、生徒の心のケアができていなかったり、そうしたことが心配なのです。

また、学校が積極的に生徒を成績や志望校で分断することで(東大コース・医学部コース・特進コース等)、生徒間の格差を助長することも心配です。

 

その学校が何を最重要と考えているのか、そこはきちんと見極める必要があります。

 

スクールカウンセラーは頼りになるのか?

学校にお願いして、スクールカウンセラーの先生と事前にお話できるとよいですね。

スクールカウンセラー制度は、まだまだ日本に根付いているとは言い難く、頼りになるのか、頼りにならないのか、その判断は家庭でするしかないのが現状だと思います。

また、カウンセリングのテクニックの多くがアメリカ直輸入のためなのか、日本の教育や家庭の実情に合わない場合もあるようです。

学校内にどれだけ味方がいるのか、そこが重要だと思います。

 

◆観衆の存在

イジメについては、被害者・加害者に加えて、周囲の観衆(見て見ぬふりをする、煽る)の存在が問題だとされています。

どのような生徒達が同級生となるのか、そこが見えてくるとよいのですが。

私ならこうします。

☆学校説明会で、集まってきている保護者を観察する

やがて同級生となる可能性のある子どもの親たちです。そこで違和感を感じるようなら、おそらくお子さんには合わない学校だと思います。

☆通学路で生徒の様子を観察する

学校が終わって解放される瞬間、生徒の地の姿が見えてきます。

生徒同士の言葉かけや態度。そこに乱暴な言葉遣いや傍若無人な振る舞いが見られるということは、家庭環境の躾ができていないことや、周囲への気遣いができないことが推測されると思います。

あまり学校の近くで観察していると「不審者」ですので、そこは注意が必要ですね。

 

◆ネット情報は、学校公式のHP以外は一切見ない・信じない

これはとても大切です。

教育関係のネット掲示板や個人のブログなどには、様々な体験談があふれています。また、また聞きの噂話もあふれていますね。

 

「〇〇中学ではイジメ自殺があったらしい」

「〇〇中学では、イジメ問題があっても学校は蓋をすることしか考えない」

「〇〇中学は、イジメが多発し、途中退学者が多い」

「〇〇中学では・・・・・・」

 

断言します。

全てデマです。

もしかしてその中には真実も含まれているのかもしれませんが、我々にそれを判別することは不可能なのです。

だから全てデマだと思うのが正解なのです。

 

例えば、目の前にシュークリームが10個並んでいるとします。

9個には毒が入っていて、1個だけは美味しいシュークリームです。

見分けは全くつきません。

どんなに空腹でも、手を出す方はいないですよね。

 

ネット情報に関しては、9個のデマに1個の真実(実際にはもっと確率は低い)があるのだとしても、見分けがつかない以上、全てデマと考えるのが正しい姿勢です。

※もちろんこの記事だって「ネット情報」の一つです。なるべく事実だけを、中立な立場から書くように努めてはいますが、私個人の意見に過ぎませんし、「私という人間」を知らない以上、参考になるかどうかはわかりません。

いっそのこと、この記事も疑うくらいでちょうどよいのでしょう。

 

さて、このご家庭には、私の知る限りの情報をお伝えし、進学可能なレベルの学校の中から、いくつかの学校を具体的にご案内しました。

その上で、直接学校を訪問して判断するようにお願いしました。

 

残念なことに、私のアドバイスは届かなかったようです。

「でも先生、先生にお勧めされた学校はネットの評判は悪いのです」

「イジメに対して学校が何もしてくれないと書き込みがあったので」

 

こうして、私のアドバイスよりもネットの情報を重視した学校選びとなったのでした。

 

ネットリテラシーは、子どもよりも親こそ必要なのだと思い知らされた次第でした。

 

こんな記事が参考になるかもしれません。

peter-lws.hateblo.jp