志望校選びについて、プロの目から見て、「?」と思うケースはたくさんあります。
そこで、様々なアドバイスを試みるのですが。
聞く耳を持たないというか、意見を変えようとはしない方がいらっしゃるのですね。
今回はそんなお話です。
高望みがすぎる場合
提出された志望校を見て、うなってしまいました。
1月・・・渋谷幕張(N69、S65)
2/1・・・開成(N72、S68)
2/2・・・聖光(N69、S66)
2/3・・・筑駒(N72、S71)
2/4・・・聖光(N69、S67)
コメントにはこうあります。
◆1月の結果で、2/1は駒東に変更してもよい
◆2/1の駒東の結果で、2/3の筑駒は変えてもいいが、浅野・海城は考えていない
◆大学受験に向けて指導してくれる学校を希望している
とくに男子の場合は、強気の受験は嫌いではありません。
最悪、高校入試で筑駒・開成・都立日比谷高校を目指すということも可能ですので。
だからといって、最初から全滅覚悟の受験には反対です。
この生徒の偏差値は、N60なのです。一度受けたサピックスのテストの偏差値は教えてもらえませんでした。おそらくは50代前半だったと思われます。
変えてもいいという駒東はN65、S61です。行かせるつもりはないという浅野だってN69、S57です。海城はN68,S59なのです。
行かせるつもりどころか、受からせてもらえません。
この生徒の現状では、サレジオ・世田谷学園・巣鴨・都市大付属等が志望校としてあがってこなくてはいけません。どの学校も良い学校だと思います。しかし、浅野・海城ですら行かせる気はないとおっしゃる親に、これらの学校を薦めても無駄でしょう。
いったいどうしてこんなに強気の志望校なのか、少しお話をするうちにわかってきました。
◆父親は地方のトップ県立高校から東大に進学した。首都圏の私立中学の名前も詳しくはなく、受験事情もよくわかってはいない。とりあえず東大の合格実績を見て志望校を選んでいる。
◆東大に行かねば意味はないと思っている。社会に出れば、やはり東大でないと通用しないという考え方。当たっている気もしなくはないですが、間違っているとも思います。しかし、ご家庭(=父親)の考えですから。
◆兄がいて、筑駒に進学している。兄よりも弟のほうが頭がいいそうです。だから大丈夫だろうと。
◆実は、筑駒よりも聖光のほうが志望順位が高い。それは、とにかく東大合格へ向けての指導を期待しているから。
これは困りました。
とくに、「東大合格へ向けての指導の充実」を持ち出されると、お薦めできる学校が無いのです。難関校、とくに最難関校の学校ほど、大学の合格実績、東大へ何人合格させたかなど気にしていません。生徒たちが互いに切磋琢磨したり、塾の力を借りて自力で合格していくのですから。
結局、私のアドバイスは以下のようなものとなったのです。
◆この志望校では、どこにも合格できない可能性が非常に高い
ここは、はっきりと言わなくてはなりません。偏差値だけで合否は占えないことなど百も承知ですが、今までの努力値がここに現れていますので。
◆高校入試の覚悟はあるのか?
現状、東大に最も近いコースは、日比谷高校を目指すことでしょう。中学受験の勉強をやめて、今から数学・英語に注力して中学校で最初からトップを目指す。それも、普通のトップではなく、ダントツのトップです。
そのまま3年間駆け抜けることで、日比谷高校の合格が見えてきます。もちろん日比谷高校に進学した後でも努力は続きます。浪人率が高いですから。
話をうかがうと、公立中学への進学は全く考えていないとのことでした。すると、いよいよこのアドバイスとなります。
◆巣鴨・攻玉社・サレジオ・世田谷学園・本郷等の学校を真剣に検討すべき
この生徒の実力適正校の中から、東大へ向けての指導が期待できる学校を選んでもらうしかありません。これらの学校は、東大を目指すレベルの生徒への指導が手厚いことが期待できます。開成や駒東に進学しただけで満足してしまうより、学校にみっちりと6年間しごかれたほうが、東大への道が開けるかもしれません。
◆浅野・海城を再検討する
この生徒の実力なら、浅野・海城がチャレンジ校です。しかも東大への実績も素晴らしい。ここを回避するのはもったいないですね。
こうしたお話をしたのでした。
この家庭(親)の志望校は「東大」なのです。開成・筑駒・聖光ですらありませんでした。これらの学校は、あくまでも「東大」への近道だろうと思ってあげられていただけなのですね。
本当なら、そこから改めてほしいとは思っています。
私立中高は、東大の予備校ではありませんので。
しかし、ご家庭の方針にこれ以上私が口出すことはできません。
情報は提示し、アドバイスもしましたので、あとはご家庭で話し合ってもらうほかないのです。
結局のところ、当初の予定通りの受験となりました。
そして結果も、予想通りとなりました。
私ごときの意見では、「プロのアドバイス」とは思ってもらえなかったのでしょう。
まだまだ精進が必要です。