今回は、誰もが何となく気になっていたけれど、誰もが話題にしないテーマをあえてとりあげてみました。
「中学受験でうまくいく子は、親も中高一貫校出身ばかりなのではないか?」
とても気になりますね。
※例によって何のエビデンスもない私の所感です。ただし、あたらずといえども遠からずでは、と思っています。
- 中学受験が一般化した時期とは?
- 親の代の中学受験事情
- 親が中学受験事情を肌でわかっている
- 親が中学入試問題を解ける
- 学習の引き算ができる
- 子どもに親と同じ学校へ行かせたい
- 客観的になりすぎる
- 学校情報がupdateされていない
- 親が中高一貫校出身でない場合
中学受験が一般化した時期とは?
この曖昧な質問に対しては明確な答えなどありませんが、日能研(の前身)が生まれたのが1953年、四谷大塚が1954年ですので、勝手に1954年を受験元年とします。
ちなみに、俗に「日比谷殺し」と言われた都立の学校群制度は1967年にはじまり、1981年まで続きました。もはや知らない方のほうが多いと思いますので簡単に説明すると、生徒の希望を無視して高校に割り振る制度です。住んでいるところにより決められた学校群のどこかの高校へ合格者が割り振られるのですね。学校間格差をなくす目的とされましたが、成績で合否が決まらない、希望の高校に進めないという、最悪の制度設計でした。
もちろん誰もがわかるように、日比谷・西といった名門都立が見るも無残に凋落します。
上のグラフは都立日比谷高校の東大合格者数推移(現役+既卒)です。1964年には193名も合格していますが、あっという間に1桁へと凋落します。やっと最近復活しましたが、それでも全盛期の1/3くらいの合格者数です。
そうなると、公立中から頑張って勉強して日比谷高校、そして東大へ、という努力目標が消失します。それは皆私立中高に流れるわけです。
1973年には日能研が今の形になり、桐杏学園(もう無いが、開成に3桁の合格者を出していた塾)、1975年には学習指導会(武蔵に強味を発揮した塾)、早稲田アカデミー、1989年にはSAPIXが誕生しています。
親の代の中学受験事情
ここで、平均出産年齢を考慮し、子どもをつくる年代が30歳と仮定します。
現在12歳の子を持つ親が42歳と考えます。
その親が受験をしたのが30年前、1994年です。
すでにSAPIXも誕生していて、中学受験は過熱しています。東大を目指そうかというレベルの子を持つ親としては、都立高校が選択肢に全く入っていない時代です。当然のように、子どもを私立(国立)中高一貫校へと進学させます。その子たちが、現在42歳で12歳の子を持つ親となっているのです。
人は誰しも、自らの経験からしか学べません。自分が中高一貫校しか知らないわけですので、当然子にも同様の道を歩ませようと考えます。それが自然だからです。
ついでにいうと、中高一貫校出身者同士の結婚も多いのではないかと私は考えています。
もちろん結婚する際に相手の中高の履歴など気にする方はあまりいないでしょうが、実は企業人事はそこを見ています。
例として慶應を考えてみてください。大学から慶應に進学する人はたくさんいます。全国から慶應大学に進学してきます。しかし、中学受験を経て慶應大学まで進学する人は少数です。そうした人が入社のエントリーをしてきたとすると、「小学生のときに親がきちんと勉強をさせた家庭である」「私立中高に進学させることのできる経済力の家庭で育っている」ことがわかるのです。
知人のお母様(中学受験経験者であり、夫も同様)がおっしゃっていました。「価値観が合う」のだそうです。
昨年、某女子校の文化祭でばったりと遭遇した元教え子のお母様は、ご主人も都内最難関校の学校出身であるとお話されていました。
さて、こうして両親そろって私立中高出身であると、わが子を同じ道に、と考えるのは自然な流れとなっていくのです。
さらにもう1代さかのぼってみましょう。
現在12歳の受験学年の子どもの祖父・祖母世代ですね。
現在72歳と仮定すると、12歳だったのは1964年です。
まだまだ中学受験が一般化したとはいえない時代ですが、首都圏私立中高のうち、100校以上が100年以上の歴史を誇ります。
つまり、祖父母世代であっても、そうした私立中学に進学した方も大勢いるのです。
もうそうなると、親も祖父母も皆が子ども(孫)が私立中学受験をすることが当たり前すぎて、他の選択肢など考えもしないことになりそうです。
親が中学受験事情を肌でわかっている
自らが中受経験者であると、受験勉強や学校選びについての判断が的確です。つまらない噂やデマに惑わされることもありません。
開成目指していた生徒のお父様がこうお話していました。
「息子は、頑張れば開成に合格できるかもしれない。しかし、開成は息子程度の頭でやっていける学校ではない。だから駒東を受けさせます。」
お父様自身が開成出身だからこその冷静な判断です。
親が中学入試問題を解ける
さすがに30年前の知識もスキルも無くなっていますが、少し頑張ると、中学入試問題を解くコツを思い出すようです。そもそも、勉強の第一歩は入試問題を解くことから、ということをよくご存じなのです。だから、保護者会の席上で私などが「まずは入試問題を親が解いてみましょう」とお話すると、一斉にみなさん嫌な顔をする中で、大きくうなずいている方もいますが、この方々が受験経験者なのです。
学習の引き算ができる
数年後の入試に向けて、何をどれくらい、いつまでに仕上げていくのか。こうした未来の像が明確に思い描けますので、子どもに無謀な詰め込みをさせることがありません。結果として成績にプラスの影響があります。
このように書いてくると、「うちは私も夫も中受経験者ではないから不利だ!」と嘆きたくなりますね。しかし、実は中受経験者の場合の落とし穴というのもあります。
子どもに親と同じ学校へ行かせたい
自然な発想です。子どもが親と同じかそれ以上の頭脳をお持ちの場合なら。そうでないと悲劇です。
客観的になりすぎる
この後の展開がわかっているが故に冷静にお子さんに接します。それは良いことですが、反面、悪いこともあります。
ある時期には、親子で「夢中になって勉強に取り組む」ことも必要なのですが、それがないのです。
兄弟での受験の場合、上の子の場合は親も五里霧中の中、必死で無我夢中となって勉強させていたものが、下の子の受験ともなると、そうした勢いがなくなるためか、上のお子さんほど成績が伸びない、と言うケースを多数見てきました。
学校情報がupdateされていない
親が中学受験経験者だと、当時の価値観に縛られます。
30年前というと、渋谷幕張中(1986年)も存在しません。渋谷渋谷も、もちろん広尾学園も三田国際も存在しませんし、明大明治も男子校でした。
もちろん学校の偏差値も大きく変動しています。こうした情報をアップデートしていかないと学校選びに影響します。
親が中高一貫校出身でない場合
もちろん中学受験する子の親がすべて私立出身であるはずもありません。ただ、多いのも事実です。
「両親ともに公立中高出身なため、中学受験がよくわからなくて」
かつて多かったこのご相談が、最近めっきり減ってきているような感触がありますね。
もしかして情報過多の時代となってきたので、私ごときに相談するケースが減っているだけなのかもしれませんが。
親が中受経験者か否かで、子どもの成績は変わりません。
そんなことは気にするだけ時間の無駄です。
1点だけご注意があります。
学校の情報についてフラットな視点で判断できるというメリットがある一方で、学校名から想起されるイメージがゼロであるというデメリットもあるのです。
とくに、学校の魅せ方に長けている学校がたくさんありますので。
おそらくは専門のコンサルを入れているのでしょうね。
そうした「厚化粧」の下にある素顔をきちんと見抜くことが必要となってきます。